共同不法行為とは?
共同不法行為は、複数の加害者が関係する場面で、誰が誰に損害全額を賠償するのかを判断する権利関係の重要論点です。単に「複数人で不法行為をした」と暗記するだけでは足りず、被害者との関係と共同不法行為者間の求償関係を分けて考える必要があります。この記事では、問題文の判断手順、使用者責任との組合せ、過失割合、求償、平成25年問9の攻略方法まで整理します。
共同不法行為とは|問題文を読んだら最初に何を見るか
共同不法行為では、最初に誰が加害者で誰が被害者なのかを整理することが正解への出発点です。複数人が一つの損害に関係すると、被害者との外部関係と加害者同士の内部関係で法律効果が異なるからです。この章では、登場人物、損害、共同加害者、全額請求、求償という順番で問題文を処理する方法を整理します。
基本的な判断手順は、①登場人物を確認し、②各人物の行為と過失を確認し、③被害者に生じた損害との関係を確認し、④共同不法行為者間の求償を検討する流れです。特に重要なのは、被害者に対する責任と加害者間の最終的な負担を同じものとして扱わないことです。被害者は共同不法行為者の一人に損害全額の賠償を求めることができ、支払った者はその後に他の共同不法行為者へ求償することが問題になります。
問題文では、次の語句を見つけたら共同不法行為を疑います。単に「共同」という言葉が書かれているかではなく、複数の行為者によって一つの損害が発生しているかを見ることが重要です。使用者や被用者が登場する場合には、共同不法行為と使用者責任が重なっていないかも確認します。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| 共同して | 共同不法行為を検討 |
| 複数の加害者 | 各加害者と損害の関係を確認 |
| 同一の損害 | 共同不法行為の対象か確認 |
| 損害全額 | 各共同不法行為者の対外的責任を確認 |
| 過失割合 | 加害者間の負担・求償を確認 |
| 求償 | 内部関係の問題へ切り替える |
| 使用者 | 民法715条の使用者責任を検討 |
| 被用者 | 本人の不法行為責任も確認 |
| 第三者 | 共同加害者となっていないか確認 |
| 連帯 | 被害者に対する全額責任を確認 |
本試験では、「過失割合が30%だから被害者には30%だけ賠償すればよい」と考えないことが重要です。過失割合は共同不法行為者間の最終的な負担を決める場面で問題になりますが、被害者に対する責任をその割合だけに限定するものではありません。まず外部関係で全額責任を確認し、その後に内部関係として求償を検討してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
共同不法行為では、**「被害者への賠償」と「加害者間の負担」**を入れ替えることで典型的な誤肢が作られます。たとえば「過失割合が4割だから被害者に4割だけ賠償すればよい」という文章は、内部的な負担割合を外部的な責任へ持ち込んだ誤りです。問題文に割合が示されていても、最初にその割合を使うのではなく、まず被害者が誰にどこまで請求できるのかを判断し、その後に求償関係で過失割合を使うという順番を固定してください。
さらに、使用者責任が組み合わされると登場人物が増え、誰が加害者で誰が責任を負うのかが見えにくくなります。しかし、被用者本人の不法行為責任が消えるわけではなく、使用者にも一定の要件で責任が生じます。そこで、人物ごとに「直接の加害者」「その使用者」「もう一人の加害者」「被害者」と役割を書き分けることが、複合問題を切るための有効な方法です。
共同不法行為者の責任|被害者は一人に全額請求できる
共同不法行為が成立すると、共同不法行為者は被害者に対してそれぞれ損害全額について責任を負う点が重要です。各加害者の過失割合だけに責任が分割されると、被害者が十分な賠償を受けられない可能性があるためです。この章では、被害者と共同不法行為者との外部関係を中心に整理します。
たとえばBとDの共同不法行為によってCに100万円の損害が発生したとします。BとDの内部的な過失割合が6対4であっても、CがBには60万円、Dには40万円しか請求できないという意味ではありません。Cは共同不法行為者の一人に対して、損害全額の賠償を求めることができます。
| 判断場面 | 過失割合 | 損害全額 |
| 被害者→B | 原則として責任を割合で限定しない | 請求できる |
| 被害者→D | 原則として責任を割合で限定しない | 請求できる |
| B→Dの求償 | 負担割合を考える | 支払額との調整 |
| D→Bの求償 | 負担割合を考える | 支払額との調整 |
この比較では、「誰から誰への請求なのか」を最初に確認します。被害者から共同不法行為者への請求なら全額責任を考え、共同不法行為者同士の請求なら求償と負担割合を考えます。同じ100万円の損害でも、請求する人物が変われば判断基準も変わります。
例題1
BとDの共同不法行為によってCに100万円の損害が発生し、BとDの過失割合が6対4であった場合、CはBに60万円までしか請求できない。
解答・判断ポイント
正解:×。共同不法行為者は被害者に対して損害全額について責任を負うため、Bの内部的な負担割合が6割であることを理由に、CからBへの請求額が60万円に限定されるわけではありません。
誤肢分析
この問題は、共同不法行為者間の内部的な過失割合と、被害者に対する外部的な責任を混同させています。過失割合は求償関係で重要になりますが、被害者への責任をその割合に限定する数字ではありません。
誤っている語句
「Bに60万円までしか請求できない」
正しい修正
「CはBに損害全額の賠償を請求することができる」
例題2
BとDが共同不法行為者である場合、被害者CはDではなくBだけを相手として損害全額の賠償を請求することができる。
解答・判断ポイント
正解:○。共同不法行為者はそれぞれ被害者に対して損害全額の賠償義務を負うため、CはBだけに全額を請求することもできます。
誤肢分析
「共同不法行為者全員を同時に相手にしなければ請求できない」と変更すると誤りです。共同不法行為だからといって、被害者が全員へ分割して請求する義務があるわけではありません。
例題3
BとDの共同不法行為によってCが損害を受けた場合、CはBとDの過失割合を確定してからでなければ損害賠償を請求できない。
解答・判断ポイント
正解:×。被害者から共同不法行為者への請求について、共同不法行為者間の最終的な負担割合を先に確定しなければならないわけではありません。
誤肢分析
この誤肢は、求償段階で問題になる過失割合を被害者の請求要件へ移しています。外部関係と内部関係の判断順序を逆転させた典型的なひっかけです。
誤っている語句
「過失割合を確定してからでなければ」
正しい修正
「共同不法行為者の一人に損害全額を請求することができる」
宅建試験ではここが狙われやすい
出題者が作りやすい誤肢は、共同不法行為者の過失割合をそのまま被害者への賠償額へ置き換えるパターンです。「Bの過失が3割ならBの責任も3割」「Dの過失が大きいからBには全額請求できない」という文章が典型例であり、数字が具体的になるほど正しそうに見えます。しかし、被害者との外部関係では共同不法行為者がそれぞれ全額について責任を負うため、過失割合が登場したら、それが被害者への責任なのか求償関係なのかを必ず確認してください。
判断するときは、まず矢印を書く方法が有効です。「被害者C→加害者B」なら損害全額の請求を考え、「加害者B→加害者D」なら求償と負担割合を考えます。金額や過失割合を計算する前に、誰から誰への請求なのかを確定するだけで、多くの誤肢を切ることができます。
共同不法行為者間の求償|過失割合はどこで使うか
共同不法行為者の一人が被害者へ損害全額を賠償した場合には、他の共同不法行為者に対する求償が問題になります。被害者には全額責任を負っていても、共同不法行為者間では各自が最終的に負担すべき部分を調整する必要があるからです。この章では、全額賠償後の求償と過失割合の使い方を整理します。
たとえばBとDの過失割合が6対4で、被害者Cの損害100万円をBが全額賠償したとします。Bが外部関係で100万円を支払ったからといって、内部的にも100万円すべてをBが最終負担するとは限りません。Dに負担部分がある場合には、その部分についてDへの求償が問題になります。
| 場面 | 判断する内容 |
| CがBへ請求 | 損害全額を請求できるか |
| BがCへ全額支払う | 被害者との関係を処理 |
| BがDへ請求 | 求償できるか |
| B・D間 | 過失割合などから負担部分を判断 |
ここで過失割合が本格的に意味を持ちます。被害者CがBへ請求する段階ではなく、BがCへ全額賠償した後にDとの内部負担を調整する段階です。「全額責任」と「最終負担」を別々に考えてください。
例題4
BとDの共同不法行為についてBが被害者Cの損害全額を賠償した場合、Bはどのような場合でもDに求償することができない。
解答・判断ポイント
正解:×。Dにも共同不法行為者として負担部分がある場合、全額を賠償したBからDへの求償が問題になります。
誤肢分析
「Bが全額賠償した=Bだけが責任者だった」と誤解させる問題です。被害者への全額賠償と共同不法行為者間の最終負担は別問題なので、支払後に内部関係を検討します。
誤っている語句
「どのような場合でもDに求償することができない」
正しい修正
「Dの負担部分について求償することができる」
例題5
共同不法行為者間の求償では、各共同不法行為者の過失割合が負担部分を判断する要素となる。
解答・判断ポイント
正解:○。過失割合は共同不法行為者間で最終的な負担を調整する場面で重要になります。
誤肢分析
過失割合を「被害者が請求できる限度」と言い換えれば誤りになります。数字が同じでも、それを使用する法律関係が違えば結論が変わります。
例題6
BとDの共同不法行為でBの過失がDより軽い場合、Bは被害者に対して損害全額の責任を負うことはない。
解答・判断ポイント
正解:×。Bの過失がDより軽いことは、共同不法行為者間の負担部分では意味を持ちますが、被害者に対するBの責任を当然に一部へ限定するものではありません。
誤肢分析
この誤肢は「過失が軽い=責任額も少ない」という日常感覚を利用しています。共同不法行為では、被害者との外部関係と加害者間の内部関係を分ける必要があります。
誤っている語句
「損害全額の責任を負うことはない」
正しい修正
「被害者に対して損害全額について責任を負う」
宅建試験ではここが狙われやすい
求償問題では、「誰が最終的にいくら負担するか」という話を「被害者がいくら請求できるか」という話へ移すことで誤肢が作られます。特に過失割合が具体的に示されると、その割合で被害者への賠償額も分割したくなりますが、そこで判断を急ぐと失点します。過失割合を見たら、まず請求の矢印を確認し、共同不法行為者同士の矢印なら内部負担、被害者から加害者への矢印なら全額責任というように処理してください。
また、「全額を支払った者が損をする」と考える必要もありません。被害者保護のため外部的には一人が全額を負担することがありますが、その後に共同不法行為者間で求償による調整が予定されています。宅建ではこの二段階構造を理解しているかが問われるため、被害者への賠償→共同加害者間の求償という順番を固定することが重要です。
共同不法行為と使用者責任|責任が重なる場合
共同不法行為では、加害者の一人が会社などの被用者である場合に使用者責任が組み合わされることがあります。使用者責任が成立しても被用者本人の不法行為責任が消えるわけではなく、さらに第三者との共同不法行為も成立し得るからです。この章では、平成25年問9で中心となる使用者・被用者・第三者の関係を整理します。
Aを使用者、BをAの被用者、Dを第三者とします。BとDの行為によってCに一つの損害が発生した場合、Cとの関係ではBとDが共同不法行為者となる可能性があります。さらにBの行為について使用者責任の要件を満たせば、AもCに対して使用者責任を負うことになります。
| 人物 | 法的な立場 | 確認する責任 |
| A | Bの使用者 | 使用者責任 |
| B | Aの被用者・加害者 | 不法行為責任 |
| C | 被害者 | 損害賠償請求 |
| D | もう一人の加害者 | 共同不法行為責任 |
登場人物が4人になると複雑に見えますが、一度に全員の関係を判断する必要はありません。まず「Bを加害者とする関係」、次に「Dを加害者とする関係」と分解すると整理できます。その後、被害者Cから見てBとDの行為が共同不法行為となるかを確認してください。
例題7
被用者Bと第三者Dの共同不法行為によってCに損害が発生し、Bについて使用者Aの使用者責任が成立する場合、CはB本人には損害賠償を請求できない。
解答・判断ポイント
正解:×。使用者責任が成立しても、被用者本人が負う不法行為責任が消滅するわけではありません。
誤肢分析
「使用者が責任を負う=被用者が免責される」と入れ替えています。使用者責任は被用者本人の責任を代わりに消滅させる制度ではありません。
誤っている語句
「B本人には損害賠償を請求できない」
正しい修正
「B本人にも損害賠償を請求することができる」
例題8
被用者Bと第三者Dの共同不法行為によってCが損害を受けた場合、Bについて使用者責任を負うAがCへ損害全額を賠償したときは、一定の場合にDへの求償が問題となる。
解答・判断ポイント
正解:○。使用者Aが被害者Cへ全額を賠償した場合でも、共同加害者Dとの内部的な負担調整が問題となります。
誤肢分析
「Aは直接行為をしていないからDに求償できない」と変更すると注意が必要です。平成25年問9では、使用者Aから共同不法行為者Dへの求償が中心的に問われています。
例題9
使用者責任が成立する場合、被害者は使用者にしか損害賠償を請求できず、実際に不法行為をした被用者には請求できない。
解答・判断ポイント
正解:×。被用者自身も独立して不法行為責任を負うため、被害者は被用者本人に対しても責任を追及できます。
誤肢分析
使用者責任を「責任の移転」と考えさせるひっかけです。使用者責任が成立したからといって、被用者本人の不法行為責任が使用者へ移って消滅するわけではありません。
誤っている語句
「使用者にしか」「被用者には請求できない」
正しい修正
「使用者だけでなく被用者本人にも責任を追及できる」
宅建試験ではここが狙われやすい
共同不法行為と使用者責任が組み合わされる問題では、「責任を負う人物が一人増えると、別の人物の責任が消える」という誤解を利用した誤肢が作られます。しかし、使用者Aが責任を負うからといって被用者Bの責任がなくなるわけではなく、BとDが共同不法行為者であることも別に判断します。登場人物が増えたときほど、一つの大きな関係として考えず、A-B、B-C、D-Cというように二者関係へ分解してください。
平成25年問9では、まさにこの分解が得点ポイントになります。Bを加害者とする面では使用者Aの責任を考え、Dを加害者とする面ではD自身の不法行為責任を考え、その後にCから見た共同不法行為と求償を判断します。複雑な問題ほど、加害者ごとに一度分解してから再び被害者を中心にまとめるという方法が有効です。
過去問分析
この過去問では、共同不法行為と使用者責任を組み合わせ、被害者に対する責任と責任者間の求償を区別できるかが問われています。単に民法719条の共同不法行為だけを知っていても足りず、使用者責任との関係まで整理する必要があります。この章では、各肢の正誤理由、ひっかけ、受験生が迷う原因、本試験での判断手順まで分析します。
最初に確認する語句は、使用者、被用者、共同不法行為、損害全額、求償、過失割合です。まずBとDをそれぞれ加害者とする法律関係へ分解し、誰が被害者になるのかを確認します。その後、使用者責任、共同不法行為、求償という順番で各肢を処理します。
平成25年(2013年)問9
Aに雇用されているBが、勤務中にA所有の乗用車を運転し、営業活動のため顧客Cを同乗させている途中で、Dが運転していたD所有の乗用車と正面衝突した(なお、事故についてはBとDに過失がある。)場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
- Aは、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することはできない。
- 事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。
- 事故によって損害を受けたDは、Aに対して損害賠償を請求することはできるが、Bに対して損害賠償を請求することはできない。
正解:1
解説
本問では、BとDの行為によって共同不法行為が成立する場面と、Bの使用者であるAの使用者責任が組み合わされています。特に肢1では、使用者Aが被害者Cに損害全額を賠償した後、共同不法行為者Dに対して求償できるかが中心です。被害者への外部的な責任と、責任者間の内部的な負担調整を分けて判断する必要があります。
各肢の正誤理由
各肢では、最初に誰を加害者として見ているのかを確定します。Bを加害者として見る場合にはAの使用者責任が問題となり、Dを加害者として見る場合にはD自身の不法行為責任が問題になります。被害者Cとの関係ではBとDが共同不法行為者となるため、この二つの関係を最後にまとめます。
肢1:正しい
Bを加害者とする関係では、AはBの使用者であるため、要件を満たせば被害者Cに対して使用者責任を負います。一方、DもCに対する加害者であるため、Cから見ればBとDによる共同不法行為が成立する関係です。AがCに対して損害全額を賠償した場合、AはDに対して求償することができ、Dの負担部分はBとDとの過失割合によって判断されます。
肢2:誤り
Bを加害者として見れば、DはBの行為によって損害を受けた被害者でもあり、Aには使用者責任が問題となります。使用者Aが被害者Dへ賠償した場合、Aから被用者Bへの求償が認められる場合があります。ただし、使用者から被用者への求償については、当然に支払額全額をそのまま請求できると考えるのではなく、その範囲が問題になります。
肢3:誤り
CはBを加害者とする面でもDを加害者とする面でも被害者であり、BとDはCに対する共同不法行為者となります。したがって、CはBとDに対して損害賠償を請求することができ、それぞれが損害全額について責任を負う関係になります。過失割合だけに応じて請求先や請求額が限定されると考えるのは誤りです。
肢4:誤り
Bの行為についてAの使用者責任が成立した場合でも、実際に不法行為をしたB本人の責任がなくなるわけではありません。Bは独立して不法行為責任を負い、被害者Dは使用者Aだけでなく加害者Bにも損害賠償を請求できます。使用者責任を「被用者の責任を使用者へ移す制度」と理解すると誤答します。
問題作成者のひっかけポイント
最大のひっかけは、一人の人物が一つの立場だけではないことです。たとえばDは、ある関係ではBの行為による被害者となり、別の関係ではCに損害を与えた加害者となります。人物名だけで「D=加害者」と固定すると、肢ごとの法律関係を正しく処理できません。
次に、被害者への全額賠償と責任者間の求償を混同させています。共同不法行為者の過失割合は内部的な負担部分を判断するときに意味を持ちますが、被害者への責任をその割合だけに限定するものではありません。誰から誰への請求なのかを確認しない受験生ほど、具体的な過失割合に引っ張られます。
さらに、使用者責任が成立した場合に被用者本人の責任が消滅するような表現も典型的なひっかけです。Aが使用者として責任を負うことと、B自身が不法行為者として責任を負うことは両立します。責任者が複数いる場面では、一人の責任成立を理由に別の人物を自動的に免責しないことが必要です。
受験生が迷う理由
本問が難しく感じられる最大の理由は、A・B・C・Dという四人の人物が登場し、加害者と被害者の関係が一方向ではないことです。BとDの事故全体を一度に理解しようとすると、誰が誰に対して責任を負うのかが混乱します。そこで、Bを加害者とする面とDを加害者とする面へ分ける必要があります。
もう一つの理由は、使用者責任と共同不法行為の両方で「複数人が責任を負う」という結果になることです。しかし、その成立根拠は同じではなく、Aは使用者として、BとDはそれぞれ不法行為者として責任を負います。責任の結果だけでなく、「なぜその人物が責任を負うのか」という根拠まで整理してください。
正しい判断手順
本試験では、人物が多い問題ほど関係を分解して処理します。最初から求償や過失割合を考えるのではなく、誰が加害者で誰が被害者なのかを先に確定します。次の順番で判断すると、共同不法行為と使用者責任を整理しやすくなります。
・① 登場人物A・B・C・Dの立場を確認する
・② Bを加害者とする関係を取り出す
・③ BについてAの使用者責任が成立するか確認する
・④ Dを加害者とする関係を取り出す
・⑤ Cから見てBとDが共同不法行為者か確認する
・⑥ 被害者への損害全額の責任を確認する
・⑦ 誰かが全額を支払った場合に求償を検討する
・⑧ 求償段階で過失割合・負担部分を確認する
・⑨ 使用者と被用者の求償は別に判断する
・⑩ 一人の責任成立だけで他の責任を消さない
この順番なら、肢1ではAからDへの求償、肢2ではAからBへの求償、肢3ではCからB・Dへの請求、肢4では被害者からA・Bへの請求というように整理できます。四肢すべてで同じ条文を使うのではなく、請求する人物と相手方を確認して適用する制度を切り替えます。特に矢印の始点と終点を確認することが、正誤判断の中心です。
類似問題で使える知識
類似問題では、BとDの過失割合を具体的な数字で示し、「被害者CはBにBの過失割合までしか請求できない」とする誤肢が考えられます。この場合も、過失割合は内部負担の問題であり、被害者への責任を当然に限定するものではないと判断できます。数字が出ても、誰から誰への請求なのかを先に確認してください。
また、「使用者Aが責任を負えば被用者Bは責任を負わない」という形も典型的な誤肢です。使用者責任が成立しても被用者本人の不法行為責任は残るため、被害者から双方への責任追及が問題となります。共同不法行為、使用者責任、求償を別々の制度として理解したうえで、一つの事例の中で組み合わせることが必要です。
宅建試験ではここが狙われやすい
平成25年問9で最も参考になるのは、複数の責任制度を一つの事例に重ねる出題方法です。共同不法行為だけなら「各加害者が全額について責任を負う」と判断できますが、使用者責任を加えることで、A・B・C・Dのどの組合せを判断しているのか分かりにくくできます。したがって、問題文全体から一気に結論を出すのではなく、一つの選択肢につき請求する者→請求される者→責任根拠→全額責任か求償かという順番で確認してください。
さらに、出題者は「過失割合」という正しい概念を誤った場面へ配置できます。共同不法行為者間の求償では過失割合が重要ですが、被害者への責任を各自の過失割合だけに限定するための数字ではありません。知識そのものの正誤ではなく、正しい知識が正しい法律関係に使われているかを見ることが、この問題から得られる最も重要な判断方法です。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
共同不法行為の一問一答では、全額責任、過失割合、求償、使用者責任を組み合わせた誤肢を処理できることが目標です。特に「誰が誰に請求しているか」を変えるだけで、同じ過失割合でも結論が変わります。ここでは平成25年問9で使った判断基準を本試験レベルの肢で確認します。
問題1
BとDの共同不法行為によってCが100万円の損害を受け、BとDの過失割合が6対4である場合、CはBに60万円までしか請求できない。
正解:×
共同不法行為者Bは被害者Cに対して損害全額について責任を負うため、Bの内部的な負担割合を理由としてCからの請求額が60万円に限定されるわけではありません。
誤っている語句
「60万円までしか請求できない」
正しい修正
「損害全額を請求することができる」
問題2
共同不法行為者の一人が被害者に損害全額を賠償した場合、他の共同不法行為者に負担部分があっても求償することはできない。
正解:×
損害全額を賠償した共同不法行為者は、他の共同不法行為者の負担部分について求償できる場合があります。
誤っている語句
「求償することはできない」
正しい修正
「負担部分について求償することができる」
問題3
共同不法行為者間の過失割合は、被害者が各共同不法行為者に請求できる損害賠償額を当然にその割合へ限定する。
正解:×
過失割合は共同不法行為者間の内部的な負担や求償で問題となりますが、被害者への責任を当然にその割合へ限定するものではありません。
誤っている語句
「当然にその割合へ限定する」
正しい修正
「共同不法行為者間の負担部分を判断する際に問題となる」
問題4
BとDの共同不法行為によってCが損害を受けた場合、Cは共同不法行為者の一人だけを相手として損害全額の賠償を請求することができる。
正解:○
共同不法行為者はそれぞれ被害者に対して損害全額について責任を負います。
問題5
被用者Bの不法行為について使用者Aの使用者責任が成立すると、B本人の不法行為責任は消滅する。
正解:×
使用者責任が成立しても、実際に不法行為をした被用者B自身の責任が消滅するわけではありません。
誤っている語句
「B本人の不法行為責任は消滅する」
正しい修正
「B本人も独立して不法行為責任を負う」
問題6
被用者Bと第三者Dの共同不法行為について、Bの使用者Aが被害者へ損害全額を賠償した場合、AからDへの求償が問題となることがある。
正解:○
共同不法行為者Dにも内部的な負担部分がある場合には、被害者へ全額を賠償したAからDへの求償が問題となります。
問題7
共同不法行為者の一人の過失が他の共同不法行為者より軽い場合、その者は被害者に対して損害全額について責任を負うことはない。
正解:×
過失が相対的に軽いことは内部的な負担割合では意味を持ちますが、被害者に対する責任を当然に一部へ限定するものではありません。
誤っている語句
「損害全額について責任を負うことはない」
正しい修正
「被害者に対して損害全額について責任を負う」
問題8
使用者責任が成立した場合、被害者は使用者にのみ損害賠償を請求でき、実際に不法行為をした被用者には請求できない。
正解:×
被用者自身も不法行為責任を負うため、被害者は被用者本人にも責任を追及できます。
誤っている語句
「使用者にのみ」「被用者には請求できない」
正しい修正
「使用者だけでなく被用者本人にも請求することができる」
問題9
共同不法行為の問題で過失割合が示された場合、最初にその割合を使って被害者が各加害者へ請求できる金額を計算する。
正解:×
最初に確認するのは誰が被害者で誰が共同不法行為者なのかという法律関係であり、過失割合を直ちに被害者への請求限度へ使うわけではありません。
誤っている語句
「最初にその割合を使って」
正しい修正
「まず被害者と共同不法行為者の関係を確認し、求償段階で負担割合を検討する」
問題10
共同不法行為と使用者責任が同時に問題となる場合、人物ごとに加害者・被害者・使用者・被用者という立場を整理してから責任関係を判断する。
正解:○
複数の制度が重なる問題では、人物関係を分解し、誰から誰への請求なのかを確認してから適用する制度を決める方法が有効です。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答から分かるように、共同不法行為では存在しない制度を作るよりも、正しい知識の適用場面を入れ替える誤肢が多く作れます。「過失割合」は正しい概念ですが、被害者への請求限度として使えば誤りになり、「全額責任」も正しい知識ですが、最終的な内部負担まで必ず一人が全額負担するとすれば誤りになります。選択肢に知っている用語が出ただけで○とせず、その用語が誰と誰との関係で使われているかまで確認してください。
特に本試験では、使用者責任を加えることで責任者を増やすことができます。使用者Aが責任を負う、被用者Bも責任を負う、第三者Dも共同不法行為者として責任を負うという複数の関係を同時に処理する必要があります。そこで、人物名の横に「使用者」「被用者・加害者」「被害者」「共同加害者」と書き、請求の矢印を付ける方法を使うと誤肢を切りやすくなります。
FAQ
共同不法行為では、「全額責任なら過失割合は何のためにあるのか」「使用者が責任を負えば被用者はどうなるのか」という点で迷いやすくなります。これらは被害者との外部関係と責任者同士の内部関係を分けることで整理できます。ここでは、本試験で判断に迷いやすいポイントに絞って確認します。
Q1.過失割合が2割の共同不法行為者にも損害全額を請求できますか?
共同不法行為が成立している場合、内部的な過失割合が2割であることだけを理由として、被害者からその共同不法行為者への請求が2割に限定されるわけではありません。被害者への責任と共同不法行為者間の負担割合を分けて判断します。
Q2.全額を支払った共同不法行為者だけが最終的に全額負担しますか?
必ずしもそうではありません。他の共同不法行為者に負担部分があれば、全額を賠償した者から他の共同不法行為者への求償が問題になります。
Q3.使用者責任が成立すると被用者本人は責任を負わなくなりますか?
負わなくなるわけではありません。使用者責任が成立する場合でも、実際に不法行為をした被用者本人は独立して不法行為責任を負います。
Q4.共同不法行為の問題で過失割合はいつ確認しますか?
最初に使う数字とは限りません。まず被害者と共同不法行為者との関係を確認し、全額賠償後の求償など内部関係を判断するときに負担割合を確認します。
Q5.登場人物が4人以上いる問題はどう整理しますか?
加害者ごとに法律関係を分解してください。たとえば「Bを加害者とする面」「Dを加害者とする面」のように分け、その後に被害者から見た共同不法行為や使用者責任を整理します。
宅建試験ではここが狙われやすい
FAQにある疑問は、そのまま本試験の誤肢へ変換できます。「過失2割なら責任も2割」「全額を支払った者は求償できない」「使用者が責任を負えば被用者は免責」「過失割合を最初に計算する」といった文章は、いずれも外部関係と内部関係の混同を利用しています。共同不法行為では用語を個別に暗記するのではなく、被害者への全額責任→全額賠償→責任者間の求償→負担部分の調整という時間的な順序で整理してください。
また、人物の立場を固定しないことも重要です。平成25年問9のような問題では、一人の人物がある関係では被害者となり、別の関係では加害者となることがあります。人物名だけで役割を覚えるのではなく、各選択肢について「誰の行為によって誰が損害を受けたか」を確認することで、複雑な共同不法行為でも安定して判断できます。
まとめ
共同不法行為では、最初に誰が加害者で誰が被害者なのかを確定し、複数の加害者によって同一の損害が発生しているかを確認します。共同不法行為者は被害者に対してそれぞれ損害全額について責任を負うため、各自の過失割合だけを理由として被害者への責任が分割されるわけではありません。その後、一人が損害全額を賠償した場合には、共同不法行為者間の負担部分に応じた求償を検討します。
平成25年問9では、共同不法行為だけでなく使用者責任が組み合わされているため、A・B・C・Dの関係を一度に判断しないことが重要です。Bを加害者とする面ではAの使用者責任を確認し、Dを加害者とする面ではD自身の責任を確認したうえで、Cから見たBとDの共同不法行為へつなげます。使用者責任が成立しても被用者本人の不法行為責任は消えないため、一人の責任成立を理由として別の人物を自動的に免責しないでください。
本試験での判断順序は、①登場人物→②加害者・被害者→③共同不法行為→④被害者への全額責任→⑤全額賠償後の求償→⑥過失割合・負担部分→⑦使用者責任との関係です。ひっかけでは、過失割合を被害者への請求限度へ置き換えたり、使用者責任の成立によって被用者本人が免責されるように書き換えたりするパターンに注意します。共同不法行為は「全額」という言葉だけを暗記せず、誰から誰への請求なのかを最初に見ることを固定すれば、複雑な複合問題でも判断しやすくなります。
宅建試験ではここが狙われやすい
共同不法行為で最も注意すべきなのは、外部関係と内部関係を一つのルールとして処理してしまうことです。被害者との関係では共同不法行為者が損害全額について責任を負い、責任者間では求償によって最終的な負担を調整するため、同じ損害について二段階の判断が必要になります。問題文に「全額」「過失割合」「求償」という語句が同時に出たら、全額=被害者との関係、過失割合=主に内部負担、求償=支払後の調整という対応を確認してください。
さらに使用者責任が組み合わされた場合は、責任者が増えることで判断が複雑になります。そこで、①誰が直接の加害者か、②誰がその使用者か、③もう一人の共同加害者は誰か、④被害者は誰か、という順番で人物を整理し、それぞれの請求関係を矢印で確認します。制度名を暗記して解くのではなく、問題文の人物関係と請求の方向を固定してから条文を当てはめることが、共同不法行為で安定して得点するための判断方法です。
