時効の完成猶予は、宅建の権利関係で時効の更新とセットで問われやすい重要論点です。単に「時効が止まる」と暗記するだけでは、裁判上の請求や権利の承認が出たときに法律効果を取り違えます。この記事では、完成猶予と更新の違い、時効の援用、裁判上の請求、権利の承認などを指定過去問から整理します。
時効問題では、何が起きたかを確認したうえで、「完成が一時的に猶予されるのか」「新たに時効が進行するのか」を区別する必要があります。さらに、裁判上の請求では裁判の終了方法によって更新の有無が変わるため、請求したという事実だけで判断できません。個別制度の詳細は専門記事で補い、ここでは宅建本試験で問題文のどこを見て選択肢を切るかに重点を置きます。
時効問題で最初に確認するポイント
時効の問題では、最初に「誰が何をしたか」と、その行為によって完成猶予・更新のどちらが生じるかを確認します。裁判上の請求、権利の承認、夫婦間の権利では法律効果が異なるため、すべてを「時効が止まる」とまとめてはいけません。この章では、問題文を読んだ直後に確認する順番と、正誤判断につながる語句を整理します。
問題文を読んだら、①誰の権利か、②何が起きたか、③完成猶予か更新か、④期間は何か、という順番で確認します。特に「裁判上の請求」と「権利の承認」は同じ時効の論点でも、最終的に生じる効果が異なります。制度名を見つけた時点で結論を出さず、その後に書かれた事情まで確認することが必要です。
問題文で注目する語句を、次の表で整理します。この表を見る目的は、長い事例の中から時効の結論を左右する部分だけを拾うことです。数字が出てきた場合も、単独で暗記せず「何についての期間か」とセットで確認してください。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| 時効期間が経過 | 援用まで確認する |
| 時効を援用 | 援用できる者を確認する |
| 裁判上の請求 | 完成猶予を確認する |
| 確定判決等で権利確定 | 時効の更新を確認する |
| 訴えの取下げ | 更新されない場合を確認する |
| 却下・棄却 | 権利が確定したか確認する |
| 権利の承認 | 時効の更新を確認する |
| 制限行為能力者 | 承認に必要な能力を確認する |
| 夫婦間の権利 | 婚姻解消後の期間を確認する |
| 6か月 | 何についての完成猶予か確認する |
| 10年 | 確定判決等で確定した権利の時効期間を確認する |
時効問題では、「時効期間が経過した」という文章だけで権利が当然に消滅すると判断しないことも必要です。時効による利益を受けるためには援用が問題となり、援用できる者の範囲も出題対象になります。問題文に保証人や物上保証人、第三取得者などが登場した場合は、権利の消滅について正当な利益を有する者かを確認します。
完成猶予と更新は、言葉が似ていても意味が異なります。完成猶予は一定の事情がある間などに時効の完成を阻止する仕組みであり、更新はそれまで進行した時効との関係で新たな時効進行が始まる仕組みです。この違いを曖昧にすると、「裁判上の請求をしたから直ちに更新する」といった誤肢を切れません。
👉 得点ポイントは、「時効が止まる」という一つのイメージですべてを処理しないことです。問題文に裁判上の請求、承認、婚姻の解消などが出たら、それぞれ完成猶予なのか更新なのかを個別に確認します。さらに裁判上の請求では、裁判をした事実だけでなく、その後に権利が確定したかまで読むことが必要です。
宅建試験ではここが狙われやすい
時効では、出題者が「完成猶予」と「更新」を入れ替えるだけで、もっともらしい誤肢を作ることができます。特に裁判上の請求について、「訴えを提起すれば直ちに時効が更新される」と書かれると、裁判をしたことだけに注目した受験生は誤りを見抜けません。まず何が起きたのかを確認し、その後に権利が確定したかという二段階で判断することが必要です。
数字の入れ替えも注意したいポイントであり、「6か月」と「10年」が何を意味する期間なのかを区別する必要があります。数字だけを単独暗記すると、完成猶予の期間と確定判決等で確定した権利の時効期間を混同する原因になります。本試験では、「何年・何か月か」より先に「何についての期間か」を言える状態にしてから数字を確認してください。
時効の完成猶予と更新を比較する
時効の完成猶予と更新は、時効問題を解くうえで最初に区別すべき二つの法律効果です。どちらも時効の完成に影響するため似て見えますが、時効の進行に対する働き方は同じではありません。この章では、完成猶予と更新の違いを比較し、裁判上の請求をどの順番で処理するかを確認します。
完成猶予は時効の完成を一時的に阻止する
完成猶予は、一定の事由が発生した場合に、所定の期間が経過するまで時効を完成させない仕組みです。したがって、「完成猶予が生じた=それまでの時効期間がすべて消えて最初から数え直す」と考えるのは適切ではありません。問題文では、まず完成を阻止する事由と、その効果が続く期間を確認します。
裁判上の請求がされた場合は、裁判が終了するまでの間、消滅時効の完成が猶予されます。ここで重要なのは、裁判上の請求をした瞬間に当然に時効が更新されるわけではないという点です。裁判がどのような形で終了し、権利が確定したのかまで確認して初めて更新の判断へ進みます。
完成猶予の問題では、期間の終了時点も正誤判断の材料になります。特に権利が確定することなく裁判手続が終了した場合は、その終了時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。「裁判が終わった瞬間に時効が完成する」とする選択肢は、この猶予期間を落としていないか確認してください。
更新は新たな時効進行へ切り替わる
更新は、一定の事由が発生した場合に、それまでの時効進行との関係で新たに時効が進行する仕組みです。完成猶予と異なり、単に一定期間だけ完成を先送りする制度として処理するものではありません。宅建では、権利の承認や確定判決等による権利の確定との関係が重要になります。
債務者が債務の存在を認めるなど、権利を承認した場合には時効が更新されます。この場合は承認の時から新たな時効の進行が始まるため、完成猶予と区別して処理する必要があります。「承認によって一定期間だけ完成が猶予される」と書かれていれば、法律効果の取り違えを疑います。
裁判上の請求についても、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定すると更新が問題になります。つまり、「裁判上の請求」という入口だけを見るのではなく、「その後に権利が確定した」という出口まで確認することが必要です。請求から裁判終了までの完成猶予と、権利確定による更新を段階的に整理してください。
完成猶予と更新の違いを、次の表で比較します。この表では制度の細部より、本試験でどちらを選ぶかという判断基準を中心に整理します。問題文の事由と法律効果が正しく組み合わされているかを確認してください。
| 区分 | 判断ポイント | 主な効果 |
| 完成猶予 | 一定期間、完成を阻止する事情がある | 時効の完成を猶予 |
| 更新 | 承認や権利確定などがある | 新たな時効が進行 |
| 裁判上の請求中 | 裁判が続いている | 完成猶予 |
| 確定判決等で権利確定 | 権利が確定した | 更新 |
| 権利が確定せず裁判終了 | 取下げ等を確認 | 終了後6か月の完成猶予 |
裁判上の請求は、一つの行為について完成猶予と更新の両方が関係するため混乱しやすい論点です。最初に裁判中の完成猶予を確認し、その後に権利が確定したかどうかで更新の有無を判断します。「裁判上の請求=更新」と一行で暗記しないことが重要です。
例題
AがBに対する債権について裁判上の請求をした場合、訴えを提起した時点で当然に時効が更新される。
解答・判断ポイント
正解:×
裁判上の請求をした場合、まず裁判が終了するまで時効の完成が猶予されます。確定判決等によって権利が確定した場合に更新が問題となるため、提訴したという事実だけで直ちに更新すると判断してはいけません。誤っている語句は「訴えを提起した時点で当然に更新される」であり、完成猶予と更新を混同させています。
誤肢分析
誤っている語句
「訴えを提起した時点で当然に時効が更新される」
正しい修正
「裁判上の請求により完成が猶予され、確定判決等によって権利が確定した場合には更新される」
この問題は、裁判上の請求という一つの事由について、完成猶予と更新が生じる時点を混同させるものです。問題文の前半だけを見ず、裁判の終了結果まで確認する必要があります。特に「請求した時点」という時点指定が正しいかを確認してください。
例題
裁判上の請求をしたものの、権利が確定することなく訴えが終了した場合、終了した瞬間に完成猶予の効果もなくなる。
解答・判断ポイント
正解:×
権利が確定することなく裁判が終了した場合でも、その終了時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。したがって、裁判が終了した瞬間に直ちに時効完成の問題へ移るわけではありません。誤っている語句は「終了した瞬間に完成猶予の効果もなくなる」です。
誤肢分析
誤っている語句
「終了した瞬間に完成猶予の効果もなくなる」
正しい修正
「権利が確定することなく終了した場合、終了時から6か月を経過するまで完成が猶予される」
この問題では、「裁判が終わった」という事実と「完成猶予が終わる時点」を同一に見せています。6か月という数字だけではなく、権利が確定せずに裁判が終了した後の完成猶予期間であることを理解してください。数字とその対象をセットで判断することが必要です。
宅建試験ではここが狙われやすい
完成猶予と更新では、出題者が「裁判上の請求をした」という一つの事実だけを強調し、その時点で更新すると誤認させる肢を作ることができます。正しくは、裁判中は完成猶予を確認し、確定判決等によって権利が確定した場合に更新を確認するため、手続の入口と出口を分ける必要があります。裁判上の請求を見たら、「裁判中なのか」「裁判が終わったのか」「権利は確定したのか」の順に確認してください。
もう一つのひっかけは、権利が確定せず裁判が終了した場合の「6か月」を削除したり、別の期間へ変更したりする方法です。単に「取下げなら更新しない」と覚えるだけでは、その後の完成猶予を問われた場合に対応できません。本試験では、更新されるかどうかを判断した後も、完成猶予がいつまで続くかまで確認することが得点につながります。
時効の援用と援用できる者
時効期間が経過しても、それだけで自動的に時効の利益を受けるわけではなく、時効の援用を確認する必要があります。宅建では、時効期間そのものだけでなく、「誰が時効を援用できるのか」を人物関係から判断させる問題があります。この章では、時効の援用と、正当な利益を有する者という判断基準を整理します。
時効期間の経過だけで判断しない
時効期間が経過した場合でも、時効の効力を受けるためには時効を援用することが問題となります。時効の援用とは、時効によって生じる利益を受ける意思を示すことであり、期間経過と援用を区別する必要があります。「期間が経過したから自動的にすべて確定する」とする選択肢には注意してください。
この論点では、時効期間の計算だけに意識を向けると援用を見落とします。問題文に「時効期間が経過した」「時効が完成した」と書かれていても、その後に誰が時効を援用しているのかを確認します。期間、援用、援用権者という三段階で処理すると判断しやすくなります。
時効を援用できる「当事者」には、権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれます。したがって、契約の直接の当事者だけに限定して考えると、保証人や物上保証人、第三取得者が登場する問題で誤答する可能性があります。「当事者」という言葉を日常的な契約当事者だけの意味で処理しないことが必要です。
援用できる者は正当な利益から判断する
時効の援用権者を判断するときは、その人物が時効による権利の消滅について正当な利益を有するかを確認します。指定された模範解答では、保証人、物上保証人、第三取得者などがこの「当事者」に含まれる者として示されています。人物の肩書だけを暗記するのではなく、なぜ時効による権利消滅がその者の法律上の利益に関係するのかを考えます。
保証人は、主たる債務について時効の利益が認められるかどうかによって、自らの保証債務にも影響を受ける立場にあります。そのため、時効による権利の消滅について正当な利益を持つ者として判断することができます。問題文に保証人が登場した場合は、「債務者本人ではないから援用できない」と即断しないようにします。
物上保証人や第三取得者についても、担保権の対象となる財産との関係から時効の利益が問題となります。宅建では、契約当事者以外の人物を置き、「本人ではない」という理由だけで援用を否定させるひっかけを作ることができます。誰が直接契約したかではなく、権利の消滅について正当な利益を持つかという基準で判断してください。
援用の問題で確認する人物を、次の表で整理します。この表では、人物名の丸暗記ではなく、時効による権利消滅との関係を見ることが目的です。問題文に別の立場の人物が登場しても、正当な利益という基準へ戻って判断します。
| 人物 | 判断ポイント |
| 債務者 | 時効の利益を直接受ける立場 |
| 保証人 | 権利消滅について正当な利益を確認 |
| 物上保証人 | 担保との関係で正当な利益を確認 |
| 第三取得者 | 対象権利との関係で正当な利益を確認 |
時効の援用では、「当事者」という言葉の意味を狭く考えないことがポイントです。契約書に名前がある本人だけではなく、権利の消滅について正当な利益を有する者まで視野に入れます。人物名を見たら、時効が認められることでその人物の法律上の立場がどう変わるかを確認してください。
例題
時効期間が経過すれば、時効の援用がなくても当然に時効の効力が生じる。
解答・判断ポイント
正解:×
時効期間の経過だけでなく、時効による利益を受ける意思表示である援用を確認する必要があります。したがって、「期間経過=自動的に時効の利益を受ける」と単純化してはいけません。誤っている語句は「援用がなくても当然に」であり、期間経過と援用を混同させています。
誤肢分析
誤っている語句
「援用がなくても当然に」
正しい修正
「時効の効力を受けるためには時効の援用を確認する」
この問題では、時効期間という数字に意識を向けさせ、援用という別の要件を見落とさせています。時効問題では期間計算だけで終わらず、誰が時効の利益を主張しているのかまで確認する必要があります。「完成」と「援用」を一つの出来事として処理しないようにしてください。
宅建試験ではここが狙われやすい
時効の援用では、「時効期間が経過した」という事実を強調し、その時点で当然に時効の効力が発生するように書く誤肢が作られます。受験生が期間の数字だけを学習していると、援用という判断段階を飛ばしてしまうため、期間経過の後に「誰が援用したか」を確認する習慣が必要です。問題文で「当然に」「自動的に」と断定されている場合は、援用の問題が隠れていないかを確認してください。
援用権者については、「当事者」という言葉を契約当事者だけに限定させるひっかけにも注意が必要です。保証人、物上保証人、第三取得者などが登場した場合は、本人かどうかではなく、権利の消滅について正当な利益を有する者かという基準で判断します。人物名の暗記だけに頼らず、「時効によってこの人物の法律上の負担や権利がどう変わるか」と考えると類似問題にも対応できます。
裁判上の請求による完成猶予と更新
裁判上の請求では、請求した時点から裁判終了までの完成猶予と、その後の更新を分けて考える必要があります。裁判を起こしたという一つの事実だけで時効の効果を決められず、裁判がどのような結果で終了したかが重要になるためです。この章では、指定過去問の正解を左右する裁判上の請求を詳しく整理します。
裁判上の請求をした段階では完成猶予を確認する
裁判上の請求をした場合、裁判が終了するまでの間は消滅時効の完成が猶予されます。この段階では、まず時効を完成させない効果を確認するのであり、提訴した瞬間に当然に更新されたと判断するものではありません。問題文に「裁判上の請求」とあれば、その次に裁判の終了結果を探してください。
裁判が継続している間に時効期間の終期が到来しても、完成猶予によって時効の完成が阻止されます。したがって、裁判中に本来の時効期間が経過したという事実だけで、直ちに時効完成と判断することはできません。「裁判中」「確定」「取下げ」など、手続がどの段階にあるかを確認する必要があります。
この段階で大切なのは、完成猶予と更新を時間の流れで理解することです。裁判上の請求によってまず完成が猶予され、その後に権利が確定すれば更新へ進むという順番になります。「請求」という一語だけで最終的な法律効果を決めないことが、指定過去問の正解につながります。
権利が確定しなければ更新されない
裁判上の請求をしても、確定判決等によって権利が確定しなければ、そのことによる更新は生じません。指定された模範解答では、訴えの却下・棄却や取下げなど、権利が確定することなく訴えが終了する場合が示されています。この場合は、更新ではなく終了後の完成猶予を確認することになります。
権利が確定することなく裁判手続が終了した場合、その終了時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。したがって、「更新されない」という部分だけを覚えて、その直後に時効が完成すると考えるのは誤りです。更新の有無と、終了後の完成猶予の有無を別々に確認してください。
この「6か月」は、裁判上の請求をした場合に常に新しい時効期間として進行する数字ではありません。権利が確定しないまま裁判手続が終了した場面で、完成を猶予する期間として確認する数字です。数字だけを暗記せず、「何が起きた後の6か月か」まで言えるように整理します。
確定判決等で権利が確定すれば更新する
原告の請求が認められ、確定判決等によって権利が確定した場合には、時効が更新されます。ここでは裁判上の請求による完成猶予から、権利確定による更新へ法律効果が進むことになります。裁判上の請求を時間の流れで理解すると、完成猶予と更新を別制度として切り離しすぎるミスも防げます。
指定された模範解答では、確定判決等によって確定した権利について新たな時効期間が問題となることも示されています。この場合は、判決によって確定した権利について10年という期間を確認する必要があります。6か月と10年は同じ裁判関係で登場しますが、意味するものがまったく異なります。
数字を整理するときは、6か月を「権利が確定せず終了した後の完成猶予」、10年を「確定判決等で確定した権利についての時効期間」と結び付けます。このように数字へ意味を付ければ、単純な数字の入れ替え問題にも対応できます。本試験では数字を見た瞬間に、その数字がどの場面に対応するのかを確認してください。
裁判上の請求を、手続の流れで比較します。この表では、請求した段階、権利が確定した場合、確定しなかった場合の三つに分けます。時点ごとの法律効果を区別することが目的です。
| 裁判の状況 | 時効への効果 | 確認ポイント |
| 裁判上の請求中 | 完成猶予 | 裁判終了まで確認 |
| 確定判決等で権利確定 | 更新 | 新たな時効へ |
| 権利が確定せず終了 | 更新しない | 終了後6か月の完成猶予 |
裁判上の請求では、「請求したか」だけでは正誤を判断できません。必ず裁判の終了結果まで確認し、権利が確定した場合と確定しなかった場合を分けます。この一手間を加えることで、指定過去問のような完成猶予と更新の入れ替えを見抜けます。
宅建試験ではここが狙われやすい
裁判上の請求では、時点を入れ替える方法が最も使いやすいひっかけになります。「請求した時点で更新」「取下げた時点で直ちに時効完成」「権利が確定しても更新しない」など、手続の途中と終了後の効果を交換する形です。本試験では、裁判上の請求という言葉を見たら、請求時、裁判中、裁判終了、権利確定の順番で時間軸を作ってください。
数字については、6か月と10年を単独で記憶すると入れ替え問題に弱くなります。6か月は権利が確定せず手続が終了した場合の完成猶予、10年は確定判決等によって確定した権利について問題となる期間として区別します。「何年か」を答える前に「何についての期間か」を確認することが、数字のひっかけを防ぐ判断手順です。
権利の承認による時効の更新
債務者による権利の承認は、時効の更新事由として処理することが重要です。裁判上の請求と異なり、承認については「裁判が終了するまで完成猶予」という流れを考える必要はありません。この章では、承認による更新と、承認をする者の行為能力に関するひっかけを整理します。
権利を承認すると時効が更新する
債務者が相手方の権利の存在を認めた場合は、時効の更新が問題になります。更新が生じると、承認の時から新たな時効の進行が始まるため、単なる完成猶予として処理してはいけません。問題文に「債務を認めた」「権利を承認した」という事情があれば、更新を検討します。
承認は、裁判上の請求のように裁判所を利用する行為ではありません。そのため、「裁判をしていないから時効には何の影響もない」とする判断は誤りになります。時効へ影響する事由は裁判だけではなく、債務者側の承認も含まれることを確認してください。
承認の問題では、「完成猶予」という言葉へ引っ張られないことも必要です。指定過去問では、裁判上の請求による完成猶予と同じ問題の中で承認による更新が並べられているため、法律効果を混同しやすくなっています。一肢ごとに事由を特定し、完成猶予か更新かをリセットして判断してください。
承認では行為能力のひっかけに注意する
指定された模範解答では、権利の承認をするために、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことは要求されないと整理されています。したがって、制限行為能力者であることだけを理由に、権利の承認ができないと判断するのは誤りです。この部分は、制限行為能力者について学習した別の知識を混ぜて誤肢を作りやすい論点です。
宅建では、「未成年者」「成年被後見人」などの語句を見ると、すべての法律行為に同じ能力要件が必要だと考えやすくなります。しかし、時効の承認については、その行為についてどの能力が必要なのかを個別に判断しなければなりません。別分野で学習した原則をそのまま時効の承認へ持ち込まないことが重要です。
承認の問題を処理するときは、まず承認という事実から更新を確認します。その後に行為能力について条件が付けられていれば、その条件が本当に必要なのかを確認します。「制限行為能力者だから承認できない」という短絡的な判断を避けることがポイントです。
承認と裁判上の請求を比較すると、法律効果の違いが分かりやすくなります。この表では、指定過去問で同時に問われた二つの事由を並べて整理します。何が起きたときに完成猶予・更新のどちらを確認するかを見てください。
| 事由 | 最初に確認する効果 | 次に見るポイント |
| 裁判上の請求 | 完成猶予 | 権利が確定したか |
| 権利の承認 | 更新 | 承認の時点を確認 |
| 権利確定 | 更新 | 新たな時効期間を確認 |
裁判上の請求では、裁判の結果まで確認しなければ更新を判断できません。一方、権利の承認では承認そのものが更新事由となるため、同じ時効問題でも判断手順が異なります。「時効に影響する行為」という共通点だけでまとめず、法律効果の違いを確認してください。
例題
債務者が債権者の権利を承認した場合、時効は一定期間だけ完成が猶予され、その後は従前の時効期間がそのまま続く。
解答・判断ポイント
正解:×
権利の承認は時効の更新事由であり、承認の時から新たな時効の進行が始まります。したがって、一定期間だけ完成が猶予される事由として処理するのは誤りです。誤っている語句は「一定期間だけ完成が猶予され」であり、完成猶予と更新を交換しています。
誤肢分析
誤っている語句
「一定期間だけ完成が猶予される」
正しい修正
「権利の承認によって時効が更新され、承認の時から新たな時効が進行する」
この問題では、時効へ影響するという共通点を利用して、完成猶予と更新を混同させています。承認という語句を見つけたら、まず更新へ結び付けることが判断の基本です。裁判上の請求と同じ処理をしないようにしてください。
宅建試験ではここが狙われやすい
権利の承認では、完成猶予と更新を交換する方法に加え、制限行為能力者の知識を混ぜる方法で誤肢を作ることができます。受験生が「制限行為能力者=単独では法律行為ができない」と一括して覚えていると、承認に関する能力要件を正確に判断できません。時効の問題では、別分野で学習した一般的なイメージではなく、承認について何が要求されているかを個別に確認してください。
判断手順は、①権利の承認があるか、②承認なら更新を確認する、③能力について条件が付いていればその条件の正誤を確認する、という順番です。「誰が承認したか」という人物情報だけに注目して、承認そのものの法律効果を見落とさないことも必要になります。裁判上の請求との比較では、「裁判中は完成猶予、承認は更新」と整理すると選択肢を切りやすくなります。
夫婦間の権利と時効の完成猶予
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻関係と時効の完成猶予を結び付けて判断する必要があります。指定過去問では、婚姻の解消から6か月という期間が正誤判断のポイントになっています。この章では、誰と誰の権利なのか、いつからいつまで完成が猶予されるのかを整理します。
婚姻解消後6か月まで完成が猶予される
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しません。この場面では時効が更新されて新しく進行するのではなく、一定期間の完成猶予として処理します。「婚姻の解消」という時点と「6か月」という期間を一組で確認してください。
この制度では、単に夫婦であるという人物関係だけを覚えるのでは不十分です。問題文で婚姻が解消した時点を確認し、そこからどの期間まで時効完成が阻止されるのかを判断する必要があります。期間問題では起算点と期間を分けず、「婚姻解消の時から6か月」とまとめて記憶してください。
また、この6か月を裁判上の請求に関する6か月と混同しないことも重要です。同じ数字でも、裁判手続が権利確定なく終了した後の完成猶予と、夫婦間の権利について婚姻解消後に認められる完成猶予では原因が異なります。宅建では同じ数字を別制度に置き換えるだけでも、判断しにくい選択肢を作ることができます。
二つの「6か月」を比較すると、数字暗記の危険性が分かります。この表では、6か月という数字そのものではなく、その前に何が起きているかを整理します。数字を見たら必ず原因となる事実へ戻ってください。
| 6か月が問題になる場面 | 起点 | 効果 |
| 権利が確定せず裁判終了 | 手続終了時 | 完成猶予 |
| 夫婦間の権利 | 婚姻解消時 | 完成猶予 |
同じ6か月でも、裁判上の請求と夫婦間の権利では問題となる事実が異なります。数字だけを暗記していると、「婚姻解消から1年」など数字を変更した選択肢には対応できても、制度を交換した問題で迷います。「何の6か月か」を必ず説明できる形で整理してください。
例題
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻が解消した時点で直ちに時効が完成する場合がある。
解答・判断ポイント
正解:×
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻解消の時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。したがって、婚姻解消と同時に直ちに時効が完成するとする処理は適切ではありません。誤っている部分は「婚姻が解消した時点で直ちに」であり、6か月の完成猶予を消しています。
誤肢分析
誤っている語句
「婚姻が解消した時点で直ちに」
正しい修正
「婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効は完成しない」
この問題では、婚姻解消を完成猶予の終了時点であるように見せています。正しくは婚姻解消を起点として、さらに6か月の完成猶予が問題になります。期間問題では、数字だけでなく起算点が正しいかまで確認してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
夫婦間の権利では、「6か月」という数字だけでなく、いつから6か月なのかという起算点がひっかけになります。婚姻中のある時点から数えたり、婚姻解消と同時に完成猶予がなくなるように書いたりすれば、制度の概要だけを覚えている受験生は迷います。本試験では「婚姻の解消の時から6か月」という一つのまとまりで確認してください。
また、裁判上の請求でも6か月という数字が登場するため、同じ数字を利用した制度間の混同にも注意が必要です。数字が同じだから同じ制度と考えるのではなく、裁判手続の終了なのか婚姻の解消なのかという原因事実を先に確認します。数字問題では「数字→制度」ではなく、「制度→起算点→数字」という順番で判断すると入れ替えに強くなります。
指定過去問を4肢から分析する
指定された過去問は、時効の援用、裁判上の請求、権利の承認、夫婦間の権利という四つの論点が一問にまとめられています。正解するには時効という大きなテーマだけで判断せず、各肢が完成猶予・更新・援用のどれを問うのか分類する必要があります。この章では、指定された1問だけを詳しく分析し、4肢を切る判断手順まで整理します。
令和2年(2020年)12月 問5
時効に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。
- 裁判上の請求をした場合、裁判が終了するまでの間は時効が完成しないが、当該請求を途中で取り下げて権利が確定することなく当該請求が終了した場合には、その終了した時から新たに時効の進行が始まる。
- 権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。
- 夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6箇月を経過するまでの間は、時効が完成しない。
この問題では、時効の援用、裁判上の請求、権利の承認、夫婦間の権利を一問で比較しています。特に正解を左右するのは、裁判上の請求による完成猶予と、確定判決等による更新を区別できるかどうかです。ここでは、各肢について最初に見る語句、正誤理由、ひっかけ、判断手順の順に確認します。
最初に確認する語句
この問題では、「援用」「裁判上の請求」「権利の承認」「夫婦」という四つの語句を最初に拾います。それぞれ適用するルールが異なるため、時効の一般論だけですべての肢を判断することはできません。さらに「確定判決」「6か月」「行為能力」などの条件を確認すると、各肢の正誤を判断できます。
問題文を読んだら、次の語句を確認します。これらの語句を見つけた時点で、どの時効ルールを検討するかを切り替えます。数字が出た場合は、その数字がどの制度に対応しているかまで確認してください。
・時効の援用
・正当な利益を有する者
・裁判上の請求
・確定判決等による権利確定
・訴えの取下げ
・6か月の完成猶予
・権利の承認
・行為能力
・婚姻の解消
4肢を一度に比較するのではなく、各肢を「援用」「裁判」「承認」「夫婦」の四分類へ振り分けます。その後、それぞれについて誰が、何をしたか、どの法律効果が生じるかを確認します。この方法なら、一つ前の肢で使ったルールを次の肢へ誤って流用するミスを防げます。
正解
この問題の正解は、裁判上の請求について時効の更新時点を誤って説明している肢です。裁判上の請求をした場合はまず完成猶予が問題となり、権利が確定することなく裁判が終了した場合には更新されません。したがって、裁判上の請求をしたことだけを理由に更新するとする内容を見抜くことが中心になります。
正解:2
この肢では、裁判上の請求という正しい時効事由を示しながら、その法律効果を更新へ置き換えている点がひっかけです。裁判上の請求を見た瞬間に「時効へ影響するから正しい」と判断せず、完成猶予と更新のどちらなのかを確認する必要があります。さらに裁判終了後に権利が確定したかまで読めば、正誤を安定して判断できます。
肢1|時効の援用
肢1では、時効期間の経過と時効の援用が問題になります。時効期間が経過しただけで自動的に時効の利益を受けるのではなく、時効の援用を確認する必要があります。また、援用できる「当事者」には、権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれます。
指定された模範解答では、保証人、物上保証人、第三取得者などが正当な利益を有する者として示されています。したがって、「契約の直接当事者ではない」という理由だけで援用を否定することはできません。誰が時効の援用によって法律上の利益を受ける立場なのかを確認することが必要です。
この肢で受験生が迷いやすいのは、「当事者」という言葉を狭く読む場合です。時効では単純に債権者と債務者だけを見るのではなく、権利の消滅について正当な利益を有する者まで確認します。人物名を丸暗記するより、その者が時効によってどのような影響を受けるかを考えてください。
肢2|裁判上の請求
肢2は、裁判上の請求によって時効がどのような影響を受けるかを問う肢です。裁判上の請求をした場合は、裁判が終了するまで消滅時効の完成が猶予されます。したがって、裁判上の請求をしたことだけで直ちに時効が更新されるという処理は誤りです。
訴えが却下・棄却された場合や、訴えが取り下げられた場合など、確定判決等によって権利が確定することなく手続が終了すれば更新されません。ただし、更新されないからといって、裁判終了と同時に完成猶予の効果がすべて消えるわけではありません。この場合は、終了時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予されます。
一方、原告の請求が認められ、確定判決等によって権利が確定した場合には時効が更新されます。指定された模範解答では、この場合に新たな時効が進行し、確定した権利について10年という期間が問題になることも示されています。この肢では、完成猶予、更新、6か月、10年をそれぞれ別の場面として整理することが必要です。
肢3|権利の承認
肢3では、債務者による権利の承認が時効の更新事由になることが問われています。権利を承認した場合は、承認の時から新たに時効の進行が始まります。裁判上の請求とは異なり、承認を単なる完成猶予として処理しないようにしてください。
さらに指定された模範解答では、承認をするために、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことは必要とされないと整理されています。したがって、制限行為能力者であることだけを理由に、時効更新のための承認ができないと判断するのは誤りです。制限行為能力者について学習した別のルールを、そのまま承認へ当てはめないことが必要です。
この肢では、「承認=更新」という基本知識と、承認に必要な能力という二つの論点が組み合わされています。前半が正しくても後半の能力要件が誤っていれば肢全体は誤りになるため、選択肢の最後まで確認する必要があります。一つの肢に複数の知識が含まれている場合は、接続詞の前後を分けて判断してください。
肢4|夫婦間の権利
肢4では、夫婦の一方が他の一方に対して有する権利について、時効の完成猶予が問題になります。この権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しません。したがって、婚姻解消後6か月という期間を正しく示しているかが判断ポイントになります。
ここでの6か月は、裁判上の請求について権利が確定せず手続が終了した場合の6か月とは別の制度です。同じ数字が一問の中で別の意味として登場する可能性があるため、数字だけを見て判断してはいけません。「婚姻解消から6か月」という原因事実と期間をセットで確認してください。
この肢を処理するときは、夫婦という人物関係、婚姻解消という起算点、6か月という期間の三点を順番に確認します。数字を変更した誤肢だけでなく、起算点を変更した誤肢にも対応できる判断方法です。期間問題では「いつから」「どれだけ」「どんな効果か」を三点セットにしてください。
問題作成者のひっかけポイント
この問題では、時効という一つのテーマの中へ、援用・完成猶予・更新という異なる法律効果が配置されています。特に裁判上の請求では、完成猶予と更新の両方が関係するため、「裁判をした=更新」と単純化している受験生を狙うことができます。正解肢を見抜くには、裁判上の請求があった時点と、権利が確定した時点を分けて判断する必要があります。
さらに、6か月という同じ数字が異なる完成猶予の場面で使われる点も混同しやすい部分です。数字を覚えていても、その数字が裁判手続終了後なのか婚姻解消後なのかを説明できなければ、条件を入れ替えた肢に対応できません。時効では「数字+原因+法律効果」を一つのセットとして整理することが必要です。
受験生が迷う理由
時効の問題が難しく感じられる理由は、完成猶予と更新が同じ問題の中に登場し、それぞれの発生時点が異なることです。特に裁判上の請求では、請求中は完成猶予、権利が確定すれば更新という時間の流れを理解していないと、用語だけでは正誤を判断できません。制度を静止した暗記事項としてではなく、時系列で整理することが必要です。
もう一つの原因は、数字や人物だけを個別に暗記してしまうことです。6か月、10年、保証人、制限行為能力者などを単独で覚えると、問題文で別の制度と組み合わせられたときに判断できなくなります。「誰が・何をした・いつ・どんな効果」という形に知識を組み直すことが有効です。
正しい判断手順
この問題では、まず各肢が援用、裁判上の請求、承認、夫婦間の権利のどれを問うか分類します。次に、その事由が完成猶予・更新・援用のどの法律効果につながるかを確認します。最後に数字や能力などの追加条件が正しいかを照合すると、情報量の多い肢でも処理できます。
・①各肢の時効事由を特定する
・②完成猶予・更新・援用のどれかを確認する
・③誰が行為をしたのか確認する
・④裁判なら権利が確定したか確認する
・⑤期間があれば起算点と数字を確認する
・⑥能力など追加条件の正誤を確認する
この順番で処理すると、「裁判上の請求だから更新」と反射的に判断するミスを防げます。数字が出た場合も、最初から6か月や10年だけを見るのではなく、制度と法律効果を確定してから確認します。本試験では一肢ごとにこの順番へ戻り、前の肢のルールを次の肢へ流用しないことが重要です。
類似問題で使える知識
類似問題では、裁判上の請求以外の完成猶予・更新事由を混ぜて、どの法律効果が生じるかを比較させる形が考えられます。その場合も、事由の名称を見た後に「完成を一時的に阻止するのか」「新たな時効が進行するのか」という基本比較へ戻ります。細かな事由を増やして暗記する前に、完成猶予と更新の意味を区別してください。
また、援用権者について人物を変更したり、期間について起算点を変更したりする形にも対応する必要があります。「保証人だから」「6か月だから」と単語だけで正解を選ぶのではなく、なぜその人物が援用できるのか、何が起きた後の6か月なのかを確認します。この判断方法を固定すると、指定過去問とは表現の異なる問題にも知識を応用できます。
宅建試験ではここが狙われやすい
この指定問題では、一つの難しい知識を問うというより、時効に関する複数の基本ルールを正しく分類できるかが試されています。出題者は、裁判上の請求を更新へ置き換える、承認を完成猶予へ置き換える、6か月の起算点を変える、援用できる者を狭くするなどの方法で誤肢を作ることができます。各肢のテーマを最初に特定し、そのテーマ専用の判断基準へ切り替えることが正解への近道です。
特に正解肢では、「裁判上の請求」という正しい用語が含まれていても、その後の法律効果が正しいとは限らない点に注意してください。宅建では選択肢の前半を正しくし、後半の「更新される」「完成する」「6か月」など一部分だけを変更することでひっかけを作れます。選択肢はキーワードの有無で判断せず、「事由→時点→法律効果→期間」の順番ですべて一致しているか確認してください。
時効の完成猶予・更新を比較して整理する
時効問題では、完成猶予、更新、援用を一つの「時効が止まる制度」としてまとめないことが重要です。それぞれ役割が異なり、さらに裁判上の請求では完成猶予から更新へ移る場合があるため、時間の流れまで確認する必要があります。この章では、指定過去問で使った知識を比較表と判断手順へまとめます。
次の表では、指定過去問に登場した主要な事由と法律効果を横並びにします。目的は条文番号を暗記することではなく、問題文に事由が出た瞬間に最初の判断方向を決めることです。その後に追加条件を確認し、最終的な正誤を判断してください。
| 事由 | 最初に確認すること | 主な効果 |
| 時効期間経過 | 援用の有無 | 援用を確認 |
| 裁判上の請求 | 裁判の進行・終了 | 完成猶予 |
| 確定判決等で権利確定 | 権利確定の有無 | 更新 |
| 権利の承認 | 承認時点 | 更新 |
| 夫婦間の権利 | 婚姻解消時 | 6か月の完成猶予 |
この表を使うときは、事由と法律効果を一対一で暗記しすぎないことも必要です。特に裁判上の請求では、その後に確定判決等で権利が確定すると更新が問題になるため、裁判の結果まで確認しなければなりません。「裁判上の請求」という入口から「権利が確定したか」という出口まで追うことが重要です。
数字についても、別の表で意味を整理します。同じ6か月でも原因となる事実が異なり、10年についても確定した権利との関係を確認する必要があります。数字を単独で覚えず、起算点と制度をセットにしてください。
| 数字 | 何についての数字か | 起点・条件 |
| 6か月 | 裁判終了後の完成猶予 | 権利が確定せず手続終了 |
| 6か月 | 夫婦間の権利の完成猶予 | 婚姻解消時から |
| 10年 | 確定した権利の時効期間 | 確定判決等による権利確定 |
数字問題では、「6か月を知っている」だけでは不十分です。二つの6か月を区別するには、その前に裁判手続の終了があるのか、婚姻の解消があるのかを確認します。10年についても、確定判決等で権利が確定した場面と結び付けて判断してください。
時効問題の最終的な判断順序は、事由、法律効果、時点、期間の順にすると整理できます。先に数字を探すのではなく、何が起きた問題なのかを確定してから数字へ進むことがポイントです。この順序を固定すると、数字や用語を入れ替えたひっかけへの対応力が上がります。
宅建試験ではここが狙われやすい
時効の総合問題では、出題者は「完成猶予」「更新」「援用」という異なる概念を同じ選択肢群へ配置し、受験生が一つのルールですべてを処理することを狙えます。特に裁判上の請求と権利の承認は、どちらも時効へ影響する行為ですが、最初に確認する法律効果は同じではありません。事由を見たら、まず完成猶予なのか更新なのかを分類し、その後に追加条件を確認してください。
数字のひっかけでは、数字そのものを変更する方法だけでなく、正しい数字を別制度へ移す方法にも注意が必要です。「6か月」という数字が正しくても、その起算点や対象制度が違えば選択肢全体は誤りになります。本試験では「数字が合っているか」ではなく、「制度・起算点・数字の三つがすべて合っているか」という基準で判断してください。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
ここでは、指定過去問で確認した時効の完成猶予・更新・援用を、本試験の肢に近い形で確認します。単純な用語の意味ではなく、時点、人物、数字、法律効果を入れ替えた問題を中心にしています。各問題では、どの語句が誤っているかまで確認し、正しい文章へ修正できる状態を目指してください。
問題1
時効期間が経過すれば、当事者による時効の援用がなくても当然に時効の利益を受ける。
正解:×
時効期間の経過だけでなく、時効の援用を確認する必要があります。誤っている語句は「援用がなくても当然に」であり、正しくは「時効の効力を受けるためには援用を確認する」と整理します。
問題2
時効を援用できる当事者は債務者本人だけであり、保証人は含まれない。
正解:×
時効の援用における当事者には、権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれます。誤っている語句は「債務者本人だけ」であり、保証人なども正当な利益を有する者として問題になります。
問題3
裁判上の請求をした場合、裁判が終了するまでの間は消滅時効の完成が猶予される。
正解:○
裁判上の請求があった場合は、まず裁判終了までの完成猶予を確認します。請求をした時点で直ちに更新すると考えず、その後に権利が確定したかまで確認します。
問題4
裁判上の請求をした時点で、裁判の結果にかかわらず消滅時効は必ず更新される。
正解:×
裁判上の請求をしただけで、結果にかかわらず必ず更新されるわけではありません。誤っている語句は「結果にかかわらず必ず更新」であり、権利が確定したかを確認する必要があります。
問題5
裁判上の請求をしたものの権利が確定せず手続が終了した場合、その終了時から6か月を経過するまで時効の完成が猶予される。
正解:○
権利が確定することなく裁判手続が終了した場合は、更新されない点だけで判断を終えてはいけません。終了後6か月の完成猶予まで確認することが必要です。
問題6
債務者が権利を承認した場合、時効は更新され、承認の時から新たな時効の進行が始まる。
正解:○
権利の承認は時効の更新事由です。裁判上の請求による完成猶予と混同せず、「承認=更新」という法律効果を確認します。
問題7
権利の承認は完成猶予事由にすぎないため、承認前に進行していた時効期間はそのまま引き継がれる。
正解:×
権利の承認は完成猶予ではなく、時効の更新事由として処理します。誤っている語句は「完成猶予事由にすぎない」であり、正しくは「承認によって時効が更新される」です。
問題8
権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことが必要である。
正解:×
指定過去問の模範解答では、そのような行為能力の制限を受けていないことは必要とされないと整理されています。誤っている語句は「必要である」であり、制限行為能力者の一般的な知識との混同に注意します。
問題9
夫婦の一方が他方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から6か月を経過するまで時効は完成しない。
正解:○
この場合は婚姻解消を起点として6か月の完成猶予を確認します。裁判上の請求に関する6か月とは原因が異なるため、同じ数字でも制度を分けて判断します。
問題10
夫婦間の権利について認められる6か月の完成猶予は、婚姻が成立した時から起算する。
正解:×
起算点は婚姻成立時ではなく、婚姻の解消時です。誤っている語句は「婚姻が成立した時」であり、数字を変えずに起算点だけを変更したひっかけです。
問題11
確定判決等によって権利が確定した場合でも、裁判上の請求は完成猶予事由にすぎないため時効が更新されることはない。
正解:×
確定判決等によって権利が確定した場合には、時効の更新が問題になります。誤っている語句は「更新されることはない」であり、裁判中の完成猶予だけを最後まで適用している点が誤りです。
問題12
裁判上の請求と権利の承認は、いずれも時効に影響するため、常に同じ法律効果が生じる。
正解:×
裁判上の請求ではまず完成猶予を確認し、権利の承認では更新を確認するため、常に同じ法律効果ではありません。誤っている語句は「常に同じ法律効果」であり、異なる時効事由を一括処理させるひっかけです。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答で確認したように、時効では「必ず」「当然に」「結果にかかわらず」といった断定表現によって条件を消す方法が使われます。特に裁判上の請求は、裁判の終了結果によって更新の有無が変わるため、「請求したら必ず更新」と断定する文章には注意が必要です。断定表現だけで誤りと決めず、その制度に本当に例外や追加条件がないかを確認してください。
また、数字を変えずに起算点だけを変更する誤肢も見落としやすい形です。「6か月」という数字が正しいため文章全体も正しいように見えても、婚姻成立時から数えるのか婚姻解消時から数えるのかで結論が変わります。誤肢を切るときは、数字、起算点、法律効果の三つを一組として確認することが必要です。
FAQ
時効の完成猶予では、用語の意味を知っていても、裁判上の請求や更新との関係で判断に迷う場合があります。ここでは指定過去問の解説をそのまま繰り返さず、本試験で迷った場合の処理方法を中心に整理します。完成猶予・更新・援用をどの順番で確認するかという視点で利用してください。
Q1.「裁判上の請求」とあれば、すぐ更新と判断してよいですか?
いいえ、まず裁判中の完成猶予を確認し、その後に確定判決等によって権利が確定したかを確認します。裁判上の請求という一語だけで更新まで決めないことがポイントです。
Q2.完成猶予と更新がどうしても混同します。何を基準に分けますか?
完成を一定期間阻止する場面なのか、新たな時効の進行が始まる場面なのかを確認します。問題文では制度名だけでなく、何が起きた後の法律効果を説明しているのかを見てください。
Q3.6か月という数字を見つけたら、完成猶予と判断できますか?
数字だけではなく、何が起きた後の6か月なのかを確認する必要があります。指定過去問では裁判手続が権利確定なく終了した場合と、夫婦間の権利について婚姻が解消した場合に6か月が登場します。
Q4.時効の援用では、債務者以外が出たら誤りと判断してよいですか?
債務者以外という理由だけで誤りにはできず、権利の消滅について正当な利益を有する者かを確認します。保証人、物上保証人、第三取得者などが出た場合も、この基準から判断してください。
Q5.権利の承認と裁判上の請求を短時間で区別する方法はありますか?
承認が出たら更新を確認し、裁判上の請求が出たらまず完成猶予を確認すると整理できます。ただし裁判上の請求でも、確定判決等によって権利が確定した場合には更新まで確認してください。
Q6.時効問題で数字が複数出た場合はどう処理しますか?
数字を先に比較せず、それぞれの数字がどの制度と起算点に対応しているかを書き分けます。「制度→起算点→期間」の順に確認すると、正しい数字を別制度へ移したひっかけを見抜きやすくなります。
宅建試験ではここが狙われやすい
FAQで確認したように、時効問題では知識そのものより「どの段階の話をしているのか」が正誤を分ける場合があります。裁判上の請求であれば、請求時、裁判中、裁判終了時、権利確定後という複数の時点があり、出題者はその時点を交換して誤肢を作れます。問題文に「したとき」「終了したとき」「確定したとき」などの時点表現があれば、必ず法律効果と一致しているか確認してください。
人物についても、債務者本人かどうかだけで判断するのではなく、その人物が時効によってどのような法律上の影響を受けるかを見る必要があります。数字については、正しい数字が書かれているだけでは正解とせず、制度と起算点まで一致しているかを確認してください。時効では「事由・人物・時点・効果・期間」の五つを順番に確認すると、長い選択肢でも判断材料を整理できます。
まとめ
時効の完成猶予を攻略するには、「時効が止まる」という曖昧な暗記ではなく、完成猶予と更新を明確に区別する必要があります。特に裁判上の請求では、裁判中の完成猶予と、確定判決等によって権利が確定した場合の更新を時間の流れで整理することが重要です。最後に、本試験で問題文を読む順番とひっかけへの対応方法をまとめます。
最初に見るポイントは、時効へ影響する事由が何かという点です。裁判上の請求、権利の承認、婚姻の解消、時効の援用では、それぞれ確認する法律効果が異なります。事由を特定した後に、完成猶予・更新・援用のどれが問題なのかを判断してください。
本試験では、次の順序で時効問題を処理します。この順番を固定すると、数字や人物が追加されても判断の軸を失いにくくなります。最初から6か月や10年という数字だけを探さず、何が起きた問題なのかから確認してください。
・①誰の権利についての時効か確認する
・②時効へ影響する事由を確認する
・③完成猶予・更新・援用のどれかを確認する
・④裁判なら権利が確定したか確認する
・⑤期間があれば起算点を確認する
・⑥数字と法律効果が一致しているか確認する
ひっかけで特に注意するのは、完成猶予と更新の入れ替え、6か月の起算点の入れ替え、援用できる人物の限定です。裁判上の請求では「請求したから更新」と処理せず、権利が確定したかまで確認することが指定過去問の正解に直結します。承認では更新、夫婦間の権利では婚姻解消後6か月の完成猶予というように、事由と法律効果をセットで整理してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
時効の総合問題では、出題者は難しい制度を新しく加えるより、受験生が知っている数字・用語・法律効果の組合せを変更して誤肢を作ることができます。「裁判上の請求だから更新」「6か月だから正しい」「制限行為能力者だから承認できない」のように、一つのキーワードだけで反射的に判断するとひっかかりやすくなります。選択肢を読むときは、正しい単語が含まれているかではなく、その単語同士の組合せが正しいかを確認してください。
最終的に固定する判断順序は、「事由→時点→法律効果→期間」です。人物が問題になれば正当な利益や行為能力を追加し、裁判が問題になれば権利確定の有無を追加して判断します。時効では暗記した数字を探すのではなく、問題文のどこを見るかを固定することが、完成猶予・更新のひっかけを見抜く基本です。
