相殺は、宅建の権利関係で自働債権と受働債権を正確に区別できるかが得点を左右する重要論点です。単に「お互いに債権があれば差し引ける」と覚えるだけでは、弁済期、消滅時効、不法行為、差押えの問題で誤答します。この記事では、問題文を見る順番、比較ポイント、平成7年問8の過去問攻略を中心に整理します。
平成7年問8では、時効消滅した債権による相殺、二つの債権の弁済期、悪意による不法行為債権、差押え後に取得した債権という四つの論点が問われています。どの肢も相殺を扱っていますが、判断する条件はそれぞれ異なります。正解番号だけではなく、どの債権を自働債権として相殺するのかを最初に確定してください。
相殺とは|問題文を読んだら最初に何を見るか
相殺問題では、最初に誰が相殺を主張するのかを確認し、その人が持つ債権を自働債権として整理することが基本です。自働債権と受働債権を逆にすると、弁済期や不法行為の相殺禁止について正しい知識を持っていても結論を誤ります。この章では、登場人物、債権の方向、弁済期、禁止事由という順番で判断する方法を整理します。
たとえばAとBがお互いに金銭債権を持っている場合、Aが相殺を主張するならAのBに対する債権が自働債権です。反対に、相殺によって消されるBのAに対する債権が受働債権になります。人物が同じでも、相殺を主張する側が変われば自働債権と受働債権も逆転します。
問題文で注目する語句を整理すると、次のようになります。用語だけを見るのではなく、その語句が自働債権と受働債権のどちらについて書かれているかまで確認してください。平成7年問8では、この方向の違いが肢2・3で重要になります。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| Aが相殺する | Aの債権が自働債権 |
| Bが相殺する | Bの債権が自働債権 |
| 弁済期が到来 | どちらの債権か確認 |
| 時効消滅 | 消滅前に相殺適状だったか確認 |
| 不法行為 | 自働債権か受働債権か確認 |
| 悪意による不法行為 | 加害者側からの相殺に注意 |
| 被害者側から相殺 | 不法行為債権を自働債権にできるか確認 |
| 差押え | 差押えの時期を確認 |
| その後に取得 | 差押債権者への対抗可否を確認 |
| 相殺適状 | いつ成立していたか確認 |
この表で最初に固定したいのは、「自働債権=相殺をする側が使う債権」という関係です。問題文にA・B・Cが登場しても、まず相殺を主張する人物へ丸を付ければ方向を整理できます。次に弁済期や時効など、その債権に付された条件を確認してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
相殺の問題では、条文の細かい文言よりも自働債権と受働債権の入れ替えによって誤肢を作りやすくなります。たとえば「弁済期が来ている必要がある」という知識だけを覚えていても、それが自働債権なのか受働債権なのかを判定できなければ平成7年問8の肢2を切れません。問題用紙では相殺する側から相手側へ矢印を書き、どちらの債権を使っているのかを確定してください。
さらに、不法行為の相殺禁止でも「不法行為債権なら一切相殺できない」と短く暗記すると誤ります。指定過去問では、悪意による不法行為債権を受働債権にして加害者側から相殺する場合と、被害者がその債権を自働債権にして相殺する場合を区別しています。制度名を見た瞬間に結論を出さず、まず債権の方向を確認することが相殺問題の基本です。
自働債権と受働債権|弁済期はどちらを見るか
相殺では、原則として自働債権について弁済期が到来していることを確認します。平成7年問8では、自働債権の弁済期が来ていれば、受働債権の弁済期が未到来であっても相殺できると整理されています。この章では、肢2を基準に二つの債権の弁済期を比較します。
自働債権とは、相殺を主張する者が相手方に対して持っている債権です。相殺を主張する者は、自分からその債権を使って相手方の債権を消滅させようとします。そのため、問題文では誰が相殺を主張しているかを最初に確認します。
受働債権は、相殺によって消される相手方の債権です。平成7年問8の資料では、自働債権について弁済期が到来していれば、受働債権について弁済期が来ていなくても相殺できるとされています。二つとも弁済期到来が必要と考えないことがポイントです。
比較すると次のように整理できます。問題文に二つの弁済期が書かれていても、同じ重みで判断するわけではありません。まずどちらが自働債権かを決めてから時期を確認します。
| 債権 | 意味 | 平成7年問8での弁済期判断 |
| 自働債権 | 相殺する側が使う債権 | 弁済期到来を確認 |
| 受働債権 | 相殺によって消される債権 | 未到来でも相殺可能 |
この表を使うときは、「先に期限が来た債権が自働債権」という意味ではない点に注意してください。自働・受働は期限の先後ではなく、誰がどの債権を使って相殺するかによって決まります。人物関係を先に整理し、その後で期限へ進んでください。
例題1
AがBに対する債権を自働債権として相殺する場合、Aの債権とBの債権の双方について弁済期が到来していなければ相殺できない。
解答・判断ポイント
正解:×。注目する語句は「双方について弁済期が到来」です。指定過去問では、自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の弁済期が未到来でも相殺できるとされています。
誤肢分析
誤っている語句
「双方について弁済期が到来」
正しい修正
「自働債権について弁済期が到来しているかを確認する」
この誤肢は、相殺適状について二つの債権を完全に同じ条件で扱わせています。相殺を主張する側が自ら期限の利益を放棄するような関係を踏まえ、自働債権と受働債権を分けて判断する必要があります。二つの期限が書かれていても自動的に両方を要求しないでください。
例題2
BがAに対する債権を自働債権として相殺する場合、Bの債権の弁済期が到来していれば、AのBに対する受働債権の弁済期が未到来でも相殺できる。
解答・判断ポイント
正解:○。平成7年問8肢2の資料で示されている判断です。誰が相殺するかを確認したうえで、自働債権の弁済期を見ます。
宅建試験ではここが狙われやすい
弁済期の問題では、「相殺適状になるには双方の債権が同じ状態でなければならない」という思い込みを利用した誤肢が作られます。平成7年問8の肢2は、まさに自働債権と受働債権の弁済期を同一条件として扱わせる方向のひっかけです。試験中は「誰が相殺する→その人の債権が自働債権→自働債権の弁済期」という三段階で処理してください。
また、自働債権と受働債権という名称を暗記していても、人物関係へ変換できなければ得点につながりません。「自働=自分から働かせる債権」「受働=相殺を受ける債権」と機能で理解すると、A・Bが入れ替わっても対応できます。肢を読むたびに自働・受働を固定し直すことが重要です。
時効消滅した債権による相殺|相殺適状だった時期を見る
時効によって消滅した債権でも、時効消滅前に相殺適状となっていれば自働債権として相殺できると指定資料では整理されています。平成7年問8の肢1では、現在その債権が時効消滅しているという事実だけで相殺を否定しないことがポイントです。この章では、消滅時点ではなく相殺適状が成立した時点を確認します。
指定過去問では、Aの債権が時効消滅する前にBの債権と相殺適状になっています。そのため、後にAの債権が時効消滅していても、Aはその債権を自働債権として相殺できます。現在の債権状態だけを見て判断しないことが必要です。
ここでは時間軸を作ると整理しやすくなります。まず相殺適状になった時期を確認し、その後に時効消滅したのかを並べてください。順番が「相殺適状→時効消滅」であることが判断ポイントです。
| 時系列 | 状態 | 相殺 |
| 相殺適状成立 | 互いに相殺できる状態 | 基準時 |
| その後に時効消滅 | 自働債権が時効消滅 | 相殺可能 |
| 相殺適状前に消滅 | 本資料では別場面 | 時点確認が必要 |
「時効消滅=債権を一切利用できない」と一行で処理すると、この論点を誤ります。平成7年問8では、消滅以前に相殺適状となっていたという過去の状態が重要です。問題文に「その後」「以前」「すでに」という時間表現があれば線を引いてください。
例題3
AのBに対する債権が時効消滅した場合、その消滅前にBの債権との間で相殺適状になっていたとしても、Aはその債権を自働債権として相殺できない。
解答・判断ポイント
正解:×。指定資料では、時効消滅前に相殺適状となっていれば、時効消滅後でも自働債権として相殺できます。現在時点で時効消滅しているという一事だけで判断しません。
誤肢分析
誤っている語句
「時効消滅後は相殺できない」
正しい修正
「時効消滅前に相殺適状であれば、時効消滅後でも相殺できる」
この誤肢は、時効消滅という最終状態だけを強調し、過去に相殺適状が成立していた事実を無視させています。相殺と時効が組み合わされたら、時間軸を作ることが正解への近道です。どちらが先に成立したのかを確認してください。
例題4
自働債権が時効消滅していても、その消滅以前に受働債権との間で相殺適状になっていた場合には、指定過去問のルールでは相殺できる。
解答・判断ポイント
正解:○。平成7年問8肢1に沿った内容です。相殺適状成立の時期を確認することが決定的です。
宅建試験ではここが狙われやすい
時効と相殺を組み合わせる問題では、「時効により消滅」という強い言葉を最後に置き、受験者にそこで判断を止めさせる方法が使えます。しかし平成7年問8では、時効消滅したかどうかだけでなく、その前に相殺適状となっていたかまで確認する必要があります。問題文の最後の状態ではなく、出来事の順序を読み取ってください。
誤肢としては、「時効消滅した債権は例外なく相殺に利用できない」「時効完成後に初めて相殺適状になっても同じ扱い」といった時間条件の削除が考えられます。指定資料が示しているのは、消滅以前に相殺適状だったケースです。「以前に」という条件を落とさず、時効と相殺適状の前後関係を固定してください。
不法行為による損害賠償債権|加害者側と被害者側を区別
悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権として、加害者側から相殺することはできないと指定資料では整理されています。一方、被害者側がその不法行為債権を自働債権として相殺することは許されるとされています。この章では、平成7年問8肢3を基準に相殺の方向を整理します。
たとえばBが悪意による不法行為の加害者であり、Aが被害者として損害賠償債権を持っているとします。Bが自分の別債権を自働債権として、Aの損害賠償債権を受働債権にして消そうとすることはできません。加害者側から一方的に損害賠償債権を消滅させることを認めない処理です。
一方で、Aが自らの損害賠償債権を自働債権として、Bの債権と相殺することは指定資料上認められています。同じ不法行為債権でも、受働債権になるのか自働債権になるのかで結論が変わります。「不法行為債権=相殺不可」と丸暗記しないでください。
| 相殺を主張する者 | 不法行為債権の位置 | 指定資料での判断 |
| 加害者 | 受働債権 | 相殺不可 |
| 被害者 | 自働債権 | 相殺可能 |
この表は、平成7年問8の中でも特に重要な比較です。最初に加害者と被害者を確認し、その次に損害賠償債権が自働・受働のどちらかを確認してください。相殺禁止の制度名だけではなく、保護される側を意識すると判断しやすくなります。
例題5
悪意による不法行為に基づく損害賠償債権が存在する場合、その債権は自働債権としても受働債権としても一切相殺に使うことができない。
解答・判断ポイント
正解:×。指定資料では、加害者が不法行為債権を受働債権として相殺することは禁止されていますが、被害者が不法行為債権を自働債権として相殺することは許されています。方向を区別してください。
誤肢分析
誤っている語句
「自働債権としても受働債権としても一切」
正しい修正
「加害者側から不法行為債権を受働債権として相殺することはできない」
この誤肢は、限定された相殺禁止を全面禁止へ広げています。宅建では原則・例外の範囲を広げたり狭めたりするだけで誤肢を作れます。「誰を保護する規定か」という制度目的から方向を確認してください。
例題6
悪意による不法行為の被害者が、自らの損害賠償債権を自働債権として加害者の債権と相殺することは、指定資料では認められる。
解答・判断ポイント
正解:○。平成7年問8肢3の補足説明に沿った内容です。不法行為債権の相殺禁止は、被害者側からの相殺まで禁止するものとして扱われていません。
宅建試験ではここが狙われやすい
不法行為債権では、「相殺できない」という結論部分だけを暗記した受験者が狙われます。平成7年問8では加害者側と被害者側で結論が異なるため、主語を落とした暗記では正しい肢も誤りに見えてしまいます。「加害者が相殺するのか」「被害者が相殺するのか」を最初に確認してください。
さらに、自働債権・受働債権という用語と不法行為の当事者関係を同時に処理する必要があります。加害者Bが相殺を主張するならBの別債権が自働債権、被害者Aの損害賠償債権が受働債権になります。人物→債権方向→不法行為という順序で整理すると、文章が変わっても判断しやすくなります。
差押えと相殺|差押え後に取得した債権は使えるか
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺を差押債権者へ対抗できないと指定資料では整理されています。平成7年問8肢4では、差押えの前後関係が正誤判断の中心になります。この章では、差押え時点と自働債権取得時点を比較します。
指定過去問では、Bが支払の差止めを受けた後にAに対する債権を取得しています。Bはその後取得した債権を自働債権としてAの債権と相殺し、それを差押えをしたCへ対抗することはできません。ここでも「その後」という時間表現が決定的です。
時系列を整理すると、差押えが先で自働債権の取得が後です。後から取得した債権を利用することで差押債権者Cの立場を害することはできないという処理になっています。相殺という二者関係だけでなく、第三者Cの存在を確認してください。
| 時点 | 出来事 | 指定資料での効果 |
| ① | CがAのBに対する債権を差押え | Bが支払差止めを受ける |
| ② | BがAに対する債権を取得 | 差押え後の取得 |
| ③ | Bが相殺を主張 | Cへ対抗できない |
この表では、相殺適状だけでなく第三者との優先関係が問題になります。AとBの二者だけを見て相殺可能と判断しても、Cに対抗できるかは別に確認しなければなりません。問題文に差押債権者が登場したら三者関係へ切り替えてください。
例題7
BがAに対する債権について支払の差止めを受けた後、新たにAに対する債権を取得した場合、Bはその新しい債権を自働債権とする相殺を差押債権者Cに対抗できる。
解答・判断ポイント
正解:×。指定資料では、支払差止めを受けた後に取得した債権による相殺を、Bは差押債権者Cへ対抗できません。差押えと債権取得の前後関係を確認してください。
誤肢分析
誤っている語句
「差押債権者Cに対抗できる」
正しい修正
「差押債権者Cに対抗することはできない」
この誤肢は、A・B間だけなら相殺できそうに見える点を利用しています。しかし差押えがある場合は第三者Cとの関係を別に判断する必要があります。問題文に第三者が登場した時点で二者間の相殺だけで結論を出さないでください。
宅建試験ではここが狙われやすい
差押えと相殺の問題は、債権者Aと債務者Bだけを追っている受験者に第三者Cを追加して混乱させる形で出題できます。平成7年問8では、「支払の差止めを受けた後に取得した」という時間条件が決定的であり、単にBがAへ債権を持っているだけでは足りません。差押え→債権取得→相殺という順序を紙に書いて処理してください。
誤肢では「差押え後でも相殺できる」「差押え前後を問わず同じ」といった時点条件の削除が考えられます。相殺では時効の肢でも時間軸が重要だったため、時点表現が出たら必ず前後関係を整理する習慣が有効です。第三者関係では「相殺できるか」と「第三者に対抗できるか」を別の問いとして確認してください。
相殺の頻出4論点を比較
平成7年問8では、時効、弁済期、不法行為、差押えという四つの論点を相殺と組み合わせています。すべてを「相殺できる・できない」という結論だけで覚えると、条件を一つ変更された問題に対応できません。この章では、各肢を切るための判断スイッチとして整理します。
肢1は「いつ相殺適状だったか」、肢2は「どちらの債権の弁済期か」、肢3は「誰から相殺するか」、肢4は「差押えと債権取得のどちらが先か」がポイントです。四肢すべてで確認項目が違うため、論点名を最初に分類してください。次の表を基準にすると処理しやすくなります。
| 論点 | 最初に見る語句 | 判断基準 |
| 時効消滅 | 消滅以前に相殺適状 | 以前に適状なら相殺可能 |
| 弁済期 | 自働・受働 | 自働債権の弁済期を見る |
| 不法行為 | 加害者・被害者 | 相殺の方向を確認 |
| 差押え | その後に取得 | 差押債権者へ対抗不可 |
この表は、過去問を解くときに四つの選択肢を別々の小問題として分類するために使います。相殺問題で迷ったら、まず「時点」「方向」「人物」「第三者」のどこが問われているかを特定してください。その後で個別ルールを当てはめます。
宅建試験ではここが狙われやすい
平成7年問8では、相殺という一つのテーマの中に全く異なる条件が配置されています。肢1と肢4は時間軸、肢2は自働・受働、肢3は加害者・被害者という主体関係が中心であり、同じ解法を全肢へ当てはめることはできません。最初に論点を分類し、それぞれ別の判断基準を呼び出すことが重要です。
共通する誤肢の作り方は、条件を一つ削除してルールを一般化することです。「時効消滅したら常に不可」「双方の弁済期が必要」「不法行為債権は一切不可」「差押え後でも自由に相殺」といった文章は、正しいルールから時点や主体の条件を落としています。短い結論ではなく、条件付きの完全な文章として知識を保存してください。
過去問分析
この問題は、相殺について消滅時効、弁済期、不法行為、差押えという四つの重要論点を横断して判断させる総合問題です。正解2だけを記憶するのではなく、各肢で自働債権と受働債権が何か、どの時点が問題なのかを判定する必要があります。肢ごとに論点分類してから正誤を判断してください。
最初に確認する語句は、時効消滅、相殺適状、自働債権、受働債権、弁済期、悪意による不法行為、被害者、差押え、その後に取得です。肢1は時効、肢2は弁済期、肢3は不法行為、肢4は差押えとの関係に分類します。相殺する側と時間軸を最初に整理することが共通する判断ポイントです。
平成7年(1995年)問8
AがBに対して 100万円の金銭債権、BがAに対して 100万円の同種の債権を有する場合の相殺(AB間に特約はないものとする。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aの債権が時効によって消滅した後でも、時効完成前にBの債権と相殺適状にあれば、Aは、Bに対して相殺をすることができる。
- Aの債権について弁済期の定めがなく、Aから履行の請求がないときは、Bは、Bの債権の弁済期が到来しても、相殺をすることができない。
- Aの債権が、Bの悪意による不法行為によって発生したものであるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。
- CがAの債権を差し押えた後、BがAに対する債権を取得したときは、Bは、相殺をもって債権者Cに対抗することはできない。
正解:2
解説
正解は肢2です。肢1は時効消滅前に相殺適状だったため相殺可能、肢3は悪意による不法行為債権を受働債権にした加害者側からの相殺が禁止され、肢4は差押え後に取得した債権による相殺を差押債権者へ対抗できないため正しい内容です。肢2だけが、自働債権の弁済期が到来しているにもかかわらず、受働債権の弁済期未到来を理由に相殺を否定するため誤りとなります。
各肢の正誤理由
各肢では「相殺できるか」という同じ結論を問っていますが、その判断理由は異なります。したがって、相殺の一般要件だけを確認して四肢をまとめて判断しないことが必要です。肢1から肢4まで順番に整理します。
肢1:正しい
指定資料では、時効消滅した債権でも、その消滅以前に相殺適状となっていれば自働債権として相殺することができます。本肢ではAの代金債権が時効消滅する前に、弁済期の到来している賃料債務との間で相殺適状となっていました。そのためAは時効消滅後でも相殺することができます。
肢2:誤り
自働債権であるBのAに対する債権について弁済期が到来していれば、指定資料では受働債権であるAのBに対する債権の弁済期が未到来でも相殺できます。したがって、受働債権の弁済期が来ていないことを理由に相殺を否定する内容は誤りです。自働債権と受働債権の弁済期を同じ扱いにしている点がひっかけです。
肢3:正しい
悪意による不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権として、加害者側から相殺することはできません。本肢ではBが悪意による不法行為の加害者であるため、Aの損害賠償債権を受働債権として相殺することは許されません。一方、資料では被害者側が不法行為債権を自働債権として相殺することは許されるとされています。
肢4:正しい
支払の差止めを受けた第三債務者は、その後に取得した債権による相殺を差押債権者へ対抗することができません。本肢ではBが支払差止めを受けた後にAへの債権を取得しているため、その債権を自働債権とする相殺をCに主張することはできません。差押えと債権取得の時期が判断ポイントです。
問題作成者のひっかけポイント
肢1では「時効消滅」という強い言葉を使い、消滅した債権は何にも使えないと思わせています。しかし問題文の重要部分は「時効消滅以前に相殺適状だった」という時系列です。最後の状態だけを見て判断する受験者を狙った誤肢パターンです。
肢2では、自働債権と受働債権の双方について弁済期到来が必要だと思わせています。二つの債権が対立しているため条件も同じだと感じやすいものの、指定資料では自働債権について弁済期が到来していれば足ります。自働・受働を正確に区別できるかが問われています。
肢3では「不法行為債権は相殺禁止」という短縮暗記を狙っています。実際には加害者側から不法行為債権を受働債権として相殺する場面と、被害者側から自働債権として相殺する場面を区別します。誰が相殺するのかを見落とさないでください。
肢4では、AとBの二者関係だけなら相殺できそうな場面へ差押債権者Cを追加しています。さらに「差押え後に取得」という時間条件を加えることで、第三者との対抗関係を問っています。相殺できるかという問題と、差押債権者に対抗できるかという問題を分ける必要があります。
受験生が迷う理由
相殺は、自働債権と受働債権という用語が似ているため、最初の方向付けで混乱しやすい論点です。特に問題文でAとBの双方が複数の債権を持っていると、誰がどの債権を使って相殺するのかを見失いやすくなります。相殺を主張する人物を先に確定してください。
また、平成7年問8では四肢の判断軸がすべて異なります。時効では過去の相殺適状、弁済期では自働債権、不法行為では加害者・被害者、差押えでは第三者と時間軸を確認する必要があります。「相殺の要件」という一つの暗記表だけでは対応しにくい点が迷う理由です。
正しい判断手順
本試験では、まず誰が相殺を主張しているかを確認します。その人が持つ債権を自働債権、相手方の債権を受働債権として固定し、その後に時効・弁済期・不法行為・差押えの特則を確認してください。次の順番で処理すると安定します。
・① 相殺を主張する人物を確認する
・② 自働債権を特定する
・③ 受働債権を特定する
・④ 自働債権の弁済期を確認する
・⑤ 時効消滅していれば相殺適状成立時を確認する
・⑥ 不法行為債権なら加害者・被害者を確認する
・⑦ 不法行為債権が自働・受働のどちらか確認する
・⑧ 差押えがあれば差押え時点を確認する
・⑨ 自働債権を取得した時点を確認する
・⑩ 第三者へ相殺を対抗できるか確認する
この順番なら、肢1は⑤、肢2は②④、肢3は⑥⑦、肢4は⑧⑨⑩が決定的になります。問題文に複数の条件が並んでいても、相殺の方向を固定してから個別論点へ進めば混乱を減らせます。最後に各肢を独立して○×判定してください。
類似問題で使える知識
時効の類似問題では、相殺適状になった時点を時効完成の前後で変更するだけで結論を迷わせることができます。その場合も「時効消滅前に相殺適状だったか」を確認する方法を使います。現在の債権状態だけを見ないことが重要です。
弁済期については、AとBを入れ替えて自働債権・受働債権を逆にする問題へ応用できます。不法行為では加害者からの相殺か被害者からの相殺か、差押えでは債権取得が差押え前か後かを変更した問題へ対応できます。どの論点でも主体または時間条件を正確に読むことが共通の解法です。
宅建試験ではここが狙われやすい
この過去問から最も優先して身につけたいのは、相殺を「できる・できない」の暗記で処理せず、方向と時点を確認する習慣です。肢1・4は時点を一つ変更するだけで結論が変わり、肢2・3は自働債権と受働債権を入れ替えるだけで誤肢になります。出題者がどの条件を変更しているかを探してください。
平成7年問8を復習するときは、肢1=時効前の相殺適状、肢2=自働債権の弁済期、肢3=不法行為債権の方向、肢4=差押え後の債権取得という四分類を再現できれば十分です。この四つを「いつ」「どちらの債権」「誰が」「第三者に対抗できるか」という質問へ変換すると、表現を変えた過去問にも対応しやすくなります。正解2という番号ではなく判断順を記憶してください。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
相殺では、自働債権と受働債権の方向、弁済期、時効完成との前後関係、不法行為、差押えを変更した誤肢が作られます。ここでは平成7年問8の判断基準を組み替え、本試験レベルの文章で正誤を確認します。誤りの場合には、どの語句を修正すれば正しい文章になるかまで確認してください。
問題1
時効消滅した債権は、その消滅前に相殺適状となっていた場合であっても、自働債権として相殺に利用することはできない。
正解:×
指定資料では、時効消滅前に相殺適状となっていれば、時効消滅後であっても自働債権として相殺できます。
誤っている語句
「相殺に利用することはできない」
正しい修正
「時効消滅前に相殺適状なら相殺することができる」
問題2
時効消滅した債権による相殺では、現在その債権が時効消滅しているかだけを確認すればよく、過去の相殺適状を確認する必要はない。
正解:×
指定過去問では、時効消滅以前に相殺適状となっていたかが重要です。
誤っている語句
「過去の相殺適状を確認する必要はない」
正しい修正
「時効消滅以前に相殺適状だったか確認する」
問題3
相殺を主張する者が有する自働債権について弁済期が到来していても、受働債権の弁済期が未到来なら相殺できない。
正解:×
平成7年問8では、自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の弁済期が未到来でも相殺できます。
誤っている語句
「受働債権の弁済期が未到来なら相殺できない」
正しい修正
「自働債権の弁済期到来を確認する」
問題4
Bが相殺を主張する場合、原則としてBのAに対する債権が自働債権となる。
正解:○
自働債権は、相殺を主張する側が相殺に用いる債権として整理します。
問題5
悪意による不法行為に基づく損害賠償債権は、誰が相殺を主張する場合でも自働債権にも受働債権にもできない。
正解:×
指定資料では、加害者側から受働債権として相殺することは禁止されますが、被害者側から自働債権として相殺することは許されています。
誤っている語句
「誰が相殺を主張する場合でも」
正しい修正
「加害者側から不法行為債権を受働債権として相殺できない」
問題6
悪意による不法行為の被害者が、その損害賠償債権を自働債権として加害者の債権と相殺することは許される。
正解:○
平成7年問8の資料で示されている被害者側からの相殺の扱いです。
問題7
支払の差止めを受けた第三債務者は、その差押え後に取得した債権を自働債権とする相殺を、当然に差押債権者へ対抗できる。
正解:×
指定資料では、差押え後に取得した債権による相殺を差押債権者へ対抗することはできません。
誤っている語句
「当然に差押債権者へ対抗できる」
正しい修正
「差押債権者へ対抗することはできない」
問題8
差押えと相殺が組み合わされた問題では、自働債権を取得した時点と差押えの時点の前後関係を確認する。
正解:○
平成7年問8肢4を判断するための基本的な処理です。
問題9
相殺問題では、自働債権と受働債権は債権の種類によって固定されるため、誰が相殺を主張しても変わらない。
正解:×
自働債権と受働債権は、誰が相殺を主張するかによって方向が変わります。
誤っている語句
「誰が相殺を主張しても変わらない」
正しい修正
「相殺を主張する側に応じて自働債権・受働債権を特定する」
問題10
平成7年問8を解く場合、時効では時間軸、弁済期では自働債権、不法行為では相殺する側、差押えでは第三者への対抗を確認する。
正解:○
四肢を別々の論点として分類することで、相殺という共通語に惑わされにくくなります。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答で整理すると、相殺の誤肢は「条件の削除」と「方向の逆転」に大きく分けられます。「時効消滅前に相殺適状」という時点条件を削る、自働債権と受働債権の弁済期を同一にする、加害者と被害者の方向を無視する、差押え前後を無視するという加工です。○×だけでなく、欠けている条件を言えるようにしてください。
特に自働債権と受働債権は、相殺の複数論点に共通する土台です。弁済期だけでなく不法行為でも、自働・受働のどちらに損害賠償債権が入っているかによって結論が変わります。問題文を読み始めたら、相殺を主張する側の債権へ「自」と書き込む方法が有効です。
FAQ
相殺では、自働債権・受働債権という用語だけを覚えるより、問題文からその方向を判断できることが重要です。FAQでは本文の結論を単純に繰り返すのではなく、本試験で迷った場合の確認順序を整理します。特に相殺を主張する人物と時系列へ戻ってください。
Q1.自働債権と受働債権が分からなくなったらどうしますか?
相殺を主張している人物を最初に探してください。その人物が相手方に対して持っている債権を、自働債権として整理します。
Q2.双方の債権の支払期限が来ていないと相殺できませんか?
指定過去問では、自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の弁済期が未到来でも相殺できるとされています。二つの弁済期を同じ条件として扱わないでください。
Q3.時効で消滅した債権は絶対に相殺に使えませんか?
平成7年問8では、時効消滅以前に相殺適状となっていれば、その後に時効消滅しても自働債権として相殺できるとされています。相殺適状と時効消滅の順番を確認してください。
Q4.不法行為の損害賠償債権はすべて相殺禁止ですか?
指定資料ではそのようには整理されていません。加害者側から損害賠償債権を受働債権として相殺する場合と、被害者側から自働債権として相殺する場合を区別します。
Q5.差押えが出てきたら何を最初に確認しますか?
差押えの時点と、自働債権を取得した時点を並べてください。平成7年問8では、支払差止めを受けた後に取得した債権による相殺を差押債権者へ対抗できないとされています。
宅建試験ではここが狙われやすい
相殺で迷った場合、条文番号を思い出そうとするより「誰が相殺するのか」「何を自働債権にするのか」という基本へ戻る方が有効です。その後に、時効なら相殺適状の時点、不法行為なら加害者・被害者、差押えなら債権取得時点という個別条件へ進んでください。最初の方向付けが正しければ、複雑な文章でも判断材料を絞れます。
また、相殺では一つの選択肢に「時効」「弁済期」「差押え」など印象の強い法律用語が置かれます。しかし、その用語自体が答えを決めるのではなく、「いつ」「誰が」「どちらの債権として」という条件が結論を決めます。強いキーワードへ反射的に○×を付けず、その周囲にある時点と主語を確認してください。
まとめ
相殺の問題では、最初に誰が相殺を主張するかを確認し、その人物の債権を自働債権として整理することが基本です。その後、自働債権の弁済期、時効消滅前の相殺適状、不法行為債権の方向、差押えとの前後関係を順番に確認します。平成7年問8は、この四つの判断を一問で確認できる過去問です。
最初に見るポイントは、自働債権、受働債権、弁済期、相殺適状、時効消滅、悪意による不法行為、加害者、被害者、差押え、債権取得時点です。肢1は時効消滅前に相殺適状だったため正しく、肢2は受働債権の弁済期まで必要としたため誤り、肢3は加害者側からの相殺禁止、肢4は差押え後取得債権による相殺の対抗不可として正しい内容です。その結果、誤っている肢は2となります。
判断順序は、①相殺する人物、②自働債権、③受働債権、④弁済期、⑤相殺適状の時期、⑥不法行為なら加害者・被害者、⑦差押えなら時間軸、⑧第三者への対抗という流れに固定してください。ひっかけ注意点は、「時効消滅したら常に不可」「双方の弁済期が必要」「不法行為債権は一切相殺不可」「差押え後取得でも対抗可能」という条件の削除や一般化です。正解番号ではなく、問題文のどこを見るかを固定することが相殺攻略の中心です。
宅建試験ではここが狙われやすい
相殺は、結論だけを覚えると特に失点しやすい論点です。「相殺できる」「相殺できない」という最終結果の前には、必ず自働・受働の方向、相殺適状になった時点、当事者の立場、第三者との関係という条件があります。出題者はその条件を一つ削除したり入れ替えたりして誤肢を作るため、完全な形でルールを確認してください。
平成7年問8を復習するときは、肢1=時効前の相殺適状、肢2=自働債権の弁済期、肢3=不法行為債権の方向、肢4=差押え後取得債権という四分類を再現できれば十分です。この四分類から「いつ・どちら・誰が・誰に対抗するか」を確認すれば、人物や債権の名称が変わった問題にも対応できます。相殺は暗記より、問題文の方向と時間軸を固定して読むことが得点につながります。
