相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。課税価格の合計額がこの基礎控除額以下であれば、原則として相続税は課税されず、基礎控除を超える部分が課税遺産総額となるためです。このページでは、相続税の基礎控除を中心に、法定相続人の数、相続放棄、養子、相続時精算課税との関係を整理します。
指定過去問は平成19年問27・正解1で、住宅取得等資金についての相続時精算課税の特例が出題されています。指定資料では、通常の相続時精算課税と住宅取得等資金の特例、住宅の取得先、床面積、居住部分、取得期限などが整理されています。 相続税の基礎控除の記事では、この過去問を相続時精算課税財産が最終的に相続税計算へつながる関連問題として扱います。
現在の相続税では、被相続人から相続・遺贈等で取得した財産や、一定の相続時精算課税適用財産などを基に課税価格を求めます。その課税価格の合計額から基礎控除額を差し引き、残った課税遺産総額を法定相続分に応じて仮に取得したものとして相続税の総額を計算します。したがって、基礎控除は相続人個人ごとに3,000万円を控除する制度ではありません。
問題文を読んだら最初に何を見るか
相続税の基礎控除では、最初に課税価格の合計額と法定相続人の数を確認します。3,000万円と600万円という数字だけを覚えても、600万円へ掛ける人数を間違えると正解できないからです。この章では、問題文のどこへ線を引けばよいかを固定します。
次に、問題文に相続放棄・養子・代襲相続・相続時精算課税という語句がないかを確認します。これらは単純な「実際に相続した人数」と「基礎控除で使う法定相続人の数」をずらす原因になるためです。特に相続放棄があった場合、放棄がなかったものとして法定相続人の数を計算する点がひっかけになります。
平成19年問27のように相続時精算課税が出た場合は、贈与税だけで終わる問題と考えないでください。相続時精算課税適用財産は、贈与者の相続開始時に一定の金額を相続税の課税価格へ算入する仕組みがあるため、最終的には相続税計算へつながります。指定資料でも、贈与時と相続時を分け、相続時には贈与財産と相続財産を基に相続税額を計算すると整理されています。
問題文で注目する語句を整理します。この表を見る目的は、どの数字を使うかより先に「何を数える問題か」を確定することです。相続税の基礎控除に直接関係する語句だけを掲載します。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| 相続税 | 贈与税ではなく相続開始時の税か |
| 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人か |
| 法定相続人 | 実際の取得者数と同じか |
| 相続放棄 | 放棄がなかったものとして数えるか |
| 養子 | 法定相続人の数への算入制限があるか |
| 代襲相続 | 誰が法定相続人となるか |
| 課税価格の合計額 | 基礎控除と比較する金額か |
| 課税遺産総額 | 基礎控除控除後の金額か |
| 相続時精算課税 | 相続税の課税価格への算入を確認するか |
| 3,000万円 | 基礎控除の定額部分か |
| 600万円 | 法定相続人1人当たりの加算額か |
| 10か月 | 相続税の申告・納付期限か |
この表では、相続人の人数=遺産を実際に取得した人数と決め付けないでください。基礎控除の人数は相続税法上の「法定相続人の数」で判断し、相続放棄や養子では特別な数え方があります。最初に人数を確定してから計算へ進みます。
本試験では、次の順番で判断します。相続税は数字問題に見えますが、計算そのものより「誰を法定相続人として数えるか」の方がひっかけになりやすい分野です。計算式を書き始める前に人物関係を整理してください。
・相続税についての問題か確認する
・課税価格の合計額を確認する
・被相続人との家族関係を確認する
・法定相続人を確定する
・相続放棄がないか確認する
・養子がいる場合は算入制限を確認する
・法定相続人の数を確定する
・3,000万円+600万円×人数を計算する
・課税価格の合計額と比較する
・相続時精算課税財産等の加算対象を確認する
この順番なら、問題文に4,800万円、5,400万円など具体的な遺産額が出ても、すぐ引き算を始めずに済みます。👉 法定相続人を決める→基礎控除を計算→課税価格と比較という三段階が基本です。人物関係を確定する前に600万円を掛けないでください。
宅建試験ではここが狙われやすい
相続税の基礎控除では、「相続人」と「法定相続人の数」を同じ意味にするひっかけが最も基本です。遺産分割によって財産を取得しなかった人がいる、相続放棄をした人がいる、養子がいるなどの事情を入れることで、実際の取得人数と基礎控除で使う人数をずらしてきます。計算式より先に人物関係へ線を引いてください。
また、3,000万円と600万円を交換したり、「3,000万円×人数+600万円」のように式の構造を入れ替える誤肢にも注意します。正しい式は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。3,000万円は相続1件についての定額部分、600万円は法定相続人の人数に応じて増える部分として区別します。
相続税の基礎控除|3,000万円+600万円×法定相続人
相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。課税価格の合計額が基礎控除額を超えなければ、原則として相続税はかからず、基礎控除を超えた部分が課税遺産総額になります。この式を数字だけでなく計算対象まで含めて理解することが必要です。
例えば法定相続人が1人なら基礎控除は3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円です。4人なら5,400万円となり、人数が1人増えるごとに600万円ずつ基礎控除が増えます。3,000万円部分が人数によって増えるわけではありません。
課税価格の合計額が5,000万円で、法定相続人が3人なら基礎控除は4,800万円です。この場合、5,000万円全部に相続税率を掛けるのではなく、基礎控除を差し引いた200万円が課税遺産総額の出発点になります。相続税は「遺産総額×税率」という単純計算ではありません。
人数別に整理します。この表を見る目的は、600万円部分だけが法定相続人の人数に連動することを確認することです。計算問題では式を毎回書いてから数字を代入してください。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
| 5人 | 6,000万円 |
この表では、5人だから3,000万円×5人と考えないでください。定額3,000万円に、600万円×人数を加える構造です。問題文の人数だけを変えた計算問題にも同じ式を使います。
例題1
法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除額は4,800万円である。
解答・判断ポイント
正解:○
3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
数字だけでなく「法定相続人3人についての基礎控除」と確認します。
例題2
法定相続人が3人の場合、相続税の基礎控除額は3,000万円×3人+600万円=9,600万円である。
解答・判断ポイント
正解:×
人数を掛けるのは600万円部分です。
誤肢分析
誤っている語句
「3,000万円×3人+600万円」
正しい修正
「3,000万円+600万円×3人」
式の定額部分と人数部分を交換した誤肢です。
例題3
課税価格の合計額が4,500万円、法定相続人が3人なら、基礎控除額4,800万円を超えないため原則として相続税は課税されない。
解答・判断ポイント
正解:○
課税価格の合計額と基礎控除を比較します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
基礎控除を相続人1人ごとに控除するのではありません。
例題4
相続税の基礎控除3,000万円は、法定相続人1人につき3,000万円ずつ認められる。
解答・判断ポイント
正解:×
3,000万円は人数とは無関係な定額部分です。
誤肢分析
誤っている語句
「1人につき3,000万円ずつ」
正しい修正
「相続1件について3,000万円に600万円×法定相続人の数を加える」
人数加算部分を取り違えた誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
基礎控除の計算では、3,000万円と600万円の役割交換が最も単純なひっかけです。両方とも正しい数字なので、「3,000万円×人数」「600万円+3,000万円×人数」と並べられても数字だけでは違和感がありません。必ず「固定3,000万円、人数連動600万円」と意味を付けてください。
さらに、「遺産額が基礎控除以下なら必ずどのような場合も申告不要」と広げすぎないことも必要です。国税庁は、小規模宅地等の特例など一定の申告を要する特例を適用した結果、課税価格が基礎控除以下となる場合には申告が必要になることがあると案内しています。宅建ではまず基礎控除の基本を押さえつつ、「基礎控除以下=あらゆるケースで手続不要」とは覚えないでください。
法定相続人の数|実際に財産をもらった人数ではない
基礎控除で使う人数は、実際に財産を取得した人数ではなく法定相続人の数です。遺言や遺産分割によって1人だけが財産を取得した場合でも、基礎控除の人数が直ちに1人になるわけではありません。この章では、人数問題を判断する基本形を整理します。
例えば被相続人に配偶者と子2人がいれば、原則として法定相続人は3人です。遺言によって長男だけが全財産を取得したとしても、法定相続人の数を求める場面では配偶者と子2人という家族関係を基礎に判断します。基礎控除額は原則4,800万円となります。
反対に、遺産分割に参加した人数が多いから法定相続人も増えるとは限りません。相続人以外の者が遺贈を受けても、それだけで基礎控除の600万円を計算する法定相続人の数へ追加されるわけではありません。財産取得者と法定相続人を分けることが必要です。
比較します。この表を見る目的は、問題文の「誰が財産をもらったか」と「誰が法定相続人か」を別々に読むことです。人数問題では財産額より先に家族関係を確認してください。
| 問題文の人物 | 基礎控除での基本判断 |
|---|---|
| 配偶者 | 法定相続人となる |
| 子 | 法定相続人となる |
| 一定の場合の直系尊属 | 子等がいなければ相続順位を確認 |
| 一定の場合の兄弟姉妹 | 上位順位がいなければ確認 |
| 遺贈を受けた第三者 | それだけで法定相続人にはならない |
| 財産を取得しなかった相続人 | 取得ゼロだけで人数から外れない |
この表では、「相続税を払う人」と「法定相続人」も同じとは限らない点に注意します。基礎控除は法定相続人の人数で算定し、実際の税額負担は財産取得状況等に応じて別に計算します。人数と税額負担者を同時に処理しないでください。
例題5
被相続人に配偶者と子2人がいるが、遺言により子1人だけが全財産を取得した場合、基礎控除は法定相続人1人として計算する。
解答・判断ポイント
正解:×
実際の取得者1人ではなく、法定相続人の数を確認します。
誤肢分析
誤っている語句
「法定相続人1人として」
正しい修正
「配偶者と子2人の法定相続人3人として」
財産取得者数と法定相続人数を交換した誤肢です。
例題6
法定相続人が4人なら、実際にはそのうち2人しか財産を取得しなくても基礎控除は5,400万円となる。
解答・判断ポイント
正解:○
3,000万円+600万円×4人=5,400万円です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
実際の取得人数ではなく法定相続人を使います。
宅建試験ではここが狙われやすい
人物問題では、遺産を取得した人数・申告する人数・法定相続人の数を入れ替えるひっかけが狙われます。問題文に「長男が全財産を取得した」と書かれても、基礎控除の人数を1人へ変更してはいけません。まず民法上・相続税法上の法定相続人を確認します。
宅建試験では複雑な家系図を深追いするより、誰を600万円の人数へ含めるのかを正確に判断することが中心です。👉 取得者数ではなく法定相続人数という一文を固定し、その後に相続放棄や養子の特殊ルールへ進んでください。
相続放棄と基礎控除|放棄がなかったものとして数える
相続税の基礎控除では、相続放棄があった場合でも、放棄がなかったものとして法定相続人の数を計算します。民法上は相続放棄をした者が初めから相続人でなかったものと扱われる場面がありますが、相続税の基礎控除計算では別の数え方をするためです。この違いが典型的なひっかけになります。
例えば配偶者と子3人が法定相続人で、そのうち子2人と配偶者が相続放棄した場合でも、国税庁の通達例では基礎控除の法定相続人の数は4人として扱います。つまり、実際に相続する者が子1人になったからといって、600万円×1人へ減らすわけではありません。基礎控除は5,400万円です。
ここでは「放棄した人にも相続税が必ず課税される」という意味ではありません。あくまで基礎控除額を計算する人数について、放棄がなかったものとして扱うというルールです。税額負担者と基礎控除の人数を混同しないでください。
例題7
配偶者と子2人が法定相続人で、配偶者が相続放棄した場合、基礎控除は子2人だけを数えて4,200万円となる。
解答・判断ポイント
正解:×
相続放棄がなかったものとして3人を数えます。
誤肢分析
誤っている語句
「子2人だけを数えて4,200万円」
正しい修正
「配偶者と子2人の3人として4,800万円」
民法上の放棄の効果を基礎控除計算へそのまま持ち込んだ誤肢です。
例題8
相続税の基礎控除における法定相続人の数は、相続放棄があった場合でも放棄がなかったものとして計算する。
解答・判断ポイント
正解:○
基礎控除の人数についての特別な数え方です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
宅建試験ではここが狙われやすい
相続放棄では、民法の知識をそのまま税法へ当てはめることで誤答させる構造が使われます。「放棄したのだから相続人ではない」という一般的な理解から600万円部分を減らしたくなりますが、基礎控除の人数では放棄がなかったものとして扱います。問題文に「放棄」があれば計算を止めて人数ルールを確認してください。
また、「放棄した人を人数に含める」ことを「放棄した人にも必ず財産を取得したものとして税額計算する」と広げないことが必要です。ここでのルールは基礎控除を算定する法定相続人の数についての話です。対象となる計算段階を限定して理解してください。
養子と基礎控除|法定相続人へ含める人数には制限がある
養子がいる場合、基礎控除で使う法定相続人の数には相続税法上の算入制限があります。養子を増やせば600万円部分が無制限に増えるとすると、基礎控除を人為的に増やせてしまうためです。この章では、実子の有無による基本的な人数制限を確認します。
国税庁は、基礎控除などで法定相続人の数に含める養子について、原則として実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までという制限を示しています。したがって、養子が3人いるから600万円×3人をそのまま追加できるとは限りません。この数字は「養子になれる人数」そのものを制限する規定ではなく、相続税計算上の人数算入の制限です。
例えば配偶者、実子1人、養子3人という家族関係なら、通常は配偶者1人、実子1人、算入できる養子1人という人数を基礎に検討します。実子がいるため、相続税法上の法定相続人数へ算入できる養子は原則1人までです。養子3人全員を機械的に600万円加算の人数へ含めないでください。
比較します。この表を見る目的は、民法上の親子関係と相続税上の人数算定を分けることです。養子が出た時点で人数をそのまま足さず、実子の有無を確認します。
| 状況 | 法定相続人の数へ算入する養子の基本上限 |
|---|---|
| 実子がいる | 1人 |
| 実子がいない | 2人 |
この表の数字は、相続税の基礎控除等で人数を算定するための基本的な制限です。養子縁組そのものの有効性や民法上の相続権を否定する数字として扱わないでください。何についての1人・2人かを明確にします。
例題9
実子がいる被相続人に養子が3人いる場合、相続税の基礎控除では必ず養子3人全員を法定相続人の数に含める。
解答・判断ポイント
正解:×
実子がいる場合、相続税計算上算入する養子には原則1人までの制限があります。
誤肢分析
誤っている語句
「養子3人全員」
正しい修正
「実子がいる場合は原則1人まで」
民法上の養子人数と相続税上の算入人数を混同した誤肢です。
例題10
実子がいない場合、相続税の基礎控除等で法定相続人の数に算入できる養子は原則2人までである。
解答・判断ポイント
正解:○
養子の人数制限についての基本です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
宅建試験ではここが狙われやすい
養子問題では、1人と2人の交換が典型です。実子がいる場合1人、実子がいない場合2人という数字を逆にすれば、それ以外の文章がすべて正しくても誤肢になります。数字を見る前に「実子あり・なし」を確認してください。
また、この人数制限を「養子縁組できる人数の上限」とする文章も誤りです。ここで扱っているのは、相続税の基礎控除等を計算する際に法定相続人の数へ算入する養子の人数です。制度・対象・数字の三つを一組にして判断してください。
相続時精算課税と相続税の基礎控除
相続時精算課税は贈与税の制度ですが、贈与者の相続時に相続税計算へ接続するため、相続税の基礎控除と無関係ではありません。平成19年問27では住宅取得等資金についての相続時精算課税の特例が問われており、贈与時だけを見て終わらないことが必要です。この章では、指定過去問と相続税基礎控除のつながりを整理します。
指定資料では、相続時精算課税を「贈与税と相続税を一体的に計算」する方式として整理しています。贈与時には一定の控除や税率による贈与税計算を行い、相続時には贈与財産と相続財産を基礎として相続税額を計算し、既に支払った贈与税額を精算する構造です。
現行制度では、令和6年1月1日以後の相続時精算課税適用財産について、各年の贈与財産価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を相続税の課税価格へ算入します。ここで相続税の課税価格を求めた後、相続税の3,000万円+600万円×法定相続人という基礎控除を適用するという別段階へ進みます。贈与税の110万円基礎控除と相続税の基礎控除を混同しないでください。
二つの基礎控除を比較します。この表を見る目的は、現在は相続時精算課税にも「基礎控除」という名称があるため、110万円と相続税の3,000万円+600万円を交換しないことです。何の税金についての控除かを先に確認します。
| 基礎控除 | 金額・計算 | 対象 |
|---|---|---|
| 相続時精算課税の基礎控除 | 年110万円 | 贈与税計算 |
| 相続税の基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人 | 相続税計算 |
この表では、「相続時精算課税」という名称に相続が入っているから3,000万円+600万円を使う、とは判断しないでください。相続時精算課税の贈与時には110万円、相続税の課税遺産総額を求める段階では相続税の基礎控除を使います。税目と計算段階を分けます。
例題11
令和6年以後の相続時精算課税における年110万円の基礎控除と、相続税の3,000万円+600万円×法定相続人の基礎控除は同じ制度である。
解答・判断ポイント
正解:×
贈与税と相続税で別の基礎控除です。
誤肢分析
誤っている語句
「同じ制度」
正しい修正
「別の税・別の計算段階で適用する基礎控除」
同じ名称を利用した制度混同型です。
例題12
相続時精算課税適用財産が相続税の課税価格へ算入される場合には、その後の相続税計算で遺産に係る基礎控除を確認する。
解答・判断ポイント
正解:○
相続税の課税価格の合計額と基礎控除を比較します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
宅建試験ではここが狙われやすい
現在は「基礎控除」という名称が複数制度へ登場するため、110万円と3,000万円+600万円×人数の交換に注意が必要です。110万円は相続時精算課税の贈与税計算で使う年基礎控除、3,000万円+600万円×法定相続人は相続税の遺産に係る基礎控除です。同じ「相続」という言葉が出ていても計算段階が違います。
平成19年問27は相続時精算課税の住宅特例を扱っていますが、その制度を理解するには「贈与時で終わらず相続時に精算する」という流れを押さえる必要があります。そこから相続税の課税価格を求め、相続税の基礎控除へ進むという二段階の基礎控除を区別できれば、制度改正後の類似問題にも対応できます。
平成19年問27|住宅取得等資金の特例を過去問分析
平成19年問27では、相続時精算課税の住宅取得等資金特例について取得相手・費用要件・居住部分・期限が問われています。指定資料では第1肢が正しく、第2肢から第4肢は制度にない要件の追加、居住部分の割合、期限の変更によって誤肢が作られています。したがって、指定資料上の正解は1です。
この過去問は相続税基礎控除そのものの計算問題ではありません。しかし、相続時精算課税適用財産が最終的に相続税計算へつながる制度であるため、相続税分野の関連論点として整理する価値があります。過去問ではまず住宅特例の正誤を解き、その後に相続時の精算構造へ接続してください。
指定資料は出題当時の住宅要件を掲載しているため、現在の制度へ数字を機械的に転用してはいけません。現行制度については国税庁の最新情報を基準とし、過去問の正誤分析では指定資料の条件を基準にします。この二つを意識的に分けます。
最初に確認する語句
問題文では、住宅取得等資金、取得相手、取得費用、居住部分、翌年3月15日を最初に確認します。
平成19年(2007年)問27
特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(60歳未満の親又は祖父母からの贈与についても相続時精算課税の選択を可能とする措置)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 自己の配偶者から住宅用の家屋を取得した場合には、この特例の適用を受けることはできない。
- 住宅用の家屋の新築又は取得に要した費用の額が2,500万円以上でなければ、この特例の適用を受けることはできない。
- 床面積の3分の1を店舗として使用し、残りの部分は資金の贈与を受けた者の住宅として使用する家屋を新築した場合には、この特例の適用を受けることはできない。
- 住宅取得のための資金の贈与を受けた年の12月31日までに住宅用の家屋を新築若しくは取得又は増改築等をしなければ、この特例の適用を受けることはできない。
正解:1
解説
指定資料では、住宅取得等資金についての相続時精算課税の特例は、一定の住宅を取得等するための資金贈与を対象として整理されています。贈与者の年齢について通常制度とは異なる特例があり、さらに取得住宅について一定の要件を満たす必要があります。
各肢の正誤理由
1 正しい
指定資料では、この特例が「親・祖父母」から住宅取得等資金の贈与を受けた場合に問題となり、自己の配偶者から家屋を取得するケースは対象にならないと説明しています。したがって、第1肢は特例の適用を否定する内容として正しい肢です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
第1肢は、誰から資金を受け、誰から住宅を取得したのかを区別する問題です。
2 誤り
指定資料では、取得に要した費用について第2肢が付けたような金額要件は定められていないと説明されています。したがって、実際には存在しない取得費用要件を追加した点が誤りです。
誤っている語句
指定肢に追加された「取得費用についての一定額要件」
正しい修正
「指定資料上、そのような取得費用要件はない」
第2肢は存在しない条件の追加型です。
3 誤り
指定資料では、床面積のうち2分の1以上が居住用であれば特例対象になると整理されています。本肢では店舗部分が3分の1で、住宅部分が3分の2なので、居住用部分は2分の1以上という条件を満たします。したがって、店舗部分があることを理由に適用を否定した第3肢は誤りです。
誤っている語句
「店舗部分が3分の1あるため適用できない」とする趣旨
正しい修正
「居住用部分が2分の1以上なら指定資料上の要件を満たす」
第3肢は割合の判断を逆転した誤肢です。
4 誤り
指定資料では、住宅の新築・取得・増改築等について確認する期限を贈与の翌年3月15日までとしています。第4肢はこれを贈与年の12月31日までとすることで、期限を早めています。したがって、正しい期限を別の日付へ交換した点が誤りです。
誤っている語句
「贈与を受けた年の12月31日まで」
正しい修正
「贈与を受けた年の翌年3月15日まで」
第4肢は典型的な期限の入れ替えです。
問題作成者のひっかけポイント
第1肢では「配偶者」「家屋」「住宅取得等資金」という関係者と対象物を混ぜています。住宅特例だから誰から住宅を買ってもよいと考えるのではなく、資金の贈与者と住宅の取得相手を別々に確認する必要があります。人物関係を一つの「家族」という括りで処理しないでください。
第2肢では、住宅特例には床面積や期限など複数の要件があるため、存在しない金額条件を追加してももっともらしく見えます。税制特例では「要件が多いから、この条件もありそう」という感覚判断が危険です。本当に規定された要件かを確認します。
第4肢では、12月31日と翌年3月15日という税分野で頻出する日付を交換しています。どちらも税法では見慣れた日付なので、日付自体に違和感がありません。何についての期限かまで一組にしてください。
受験生が迷う理由
住宅取得等資金の税制には、相続時精算課税、非課税特例など複数の制度が存在します。制度ごとに年齢、所得、床面積、取得期限などの条件が異なるため、「住宅特例」という一つの箱で暗記すると別制度の条件を持ち込みやすくなります。制度名を最後まで確認する必要があります。
また、古い過去問では現在とは数字や適用期限が異なる可能性があります。指定資料の平成19年問27は出題当時の正誤分析として使い、現在の本試験対策では国税庁の現行制度を確認してください。古い数字を現在の要件として断定しないことが重要です。
正しい判断手順
第1肢では贈与者と住宅の取得相手を確認し、配偶者からの住宅取得という条件から○と判断します。第2肢では問題文が付けた取得費用要件が本当に存在するか確認して×、第3肢では居住用割合を計算して2分の1以上なので×です。第4肢では期限を確認し、指定資料の翌年3月15日と違うため×となります。
本問全体では、👉 **1=配偶者からの取得なので○、2=費用要件なしで×、3=居住用2分の1以上なので×、4=期限は翌年3月15日なので×**と整理できます。したがって、正解は1です。
類似問題で使える知識
第1肢型では、贈与者と住宅売主を交換する問題に対応できます。誰から資金をもらったのか、誰から住宅を取得したのかを別々に確認してください。
第3肢型では、店舗併用住宅、事務所併用住宅など居住用割合を変えた問題へ対応できます。指定資料型なら「居住用部分が2分の1以上か」を確認します。
第4肢型では、12月31日、翌年3月15日、相続税申告の10か月など別制度の日付を交換した問題へ対応できます。日付+何についての期限かをセットで判断してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
平成19年問27は、数字問題というより条件の所属先を確認する問題です。配偶者という人物関係、住宅取得費用、居住割合、3月15日という時期がそれぞれ別の判断軸として置かれており、一つの知識だけで四肢を処理できません。肢ごとに「人物・金額・割合・期限」のどれを問うか分類してください。
相続税基礎控除の記事としては、この過去問を贈与税だけで終わらせないことも重要です。相続時精算課税を使った財産は一定のルールで相続税の課税価格へ反映され、その後に相続税の基礎控除を確認します。住宅特例→相続時精算課税→相続税課税価格→相続税基礎控除という流れまでつなげて理解してください。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
一問一答では、相続税基礎控除の式だけでなく、法定相続人、相続放棄、養子、相続時精算課税との関係を組み合わせます。単純な「基礎控除はいくらか」という問題だけでは、本試験の人数入れ替えや制度混同へ対応できないからです。問題文の数字と対象を一緒に確認してください。
問題1
相続税の遺産に係る基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算する。
正解:○
現在の基礎控除の基本式です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題2
法定相続人が2人の場合、相続税の基礎控除は7,200万円である。
正解:×
3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。
誤っている語句
「7,200万円」
正しい修正
「4,200万円」
問題3
法定相続人が4人なら、相続税の基礎控除額は5,400万円である。
正解:○
3,000万円+2,400万円=5,400万円です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題4
基礎控除の600万円は、実際に遺産を取得した者1人につき加算する。
正解:×
実際の取得者ではなく法定相続人の数を使います。
誤っている語句
「実際に遺産を取得した者」
正しい修正
「法定相続人」
問題5
相続放棄をした者は、相続税の基礎控除を計算する法定相続人の数から必ず除外する。
正解:×
基礎控除では放棄がなかったものとして人数を計算します。
誤っている語句
「必ず除外する」
正しい修正
「放棄がなかったものとして法定相続人の数を計算する」
問題6
配偶者と子3人が法定相続人で、子2人が相続放棄をしても、基礎控除の人数は原則4人として計算する。
正解:○
相続放棄前の法定相続人の数で考えます。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題7
実子がいる場合、相続税の基礎控除等で法定相続人の数に算入する養子は原則1人までである。
正解:○
養子の算入人数には制限があります。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題8
実子がいない場合、相続税の基礎控除で算入できる養子は原則1人までである。
正解:×
実子がいない場合は原則2人までです。
誤っている語句
「1人まで」
正しい修正
「2人まで」
問題9
相続税の基礎控除3,000万円は、法定相続人1人ごとに認められる定額控除である。
正解:×
人数に連動するのは600万円部分です。
誤っている語句
「法定相続人1人ごと」
正しい修正
「相続1件につき3,000万円の定額部分」
問題10
課税価格の合計額が4,700万円、法定相続人が3人なら、基礎控除4,800万円以下なので原則として課税遺産総額は生じない。
正解:○
4,700万円は基礎控除4,800万円を超えません。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題11
相続時精算課税の年110万円の基礎控除と、相続税の3,000万円+600万円×法定相続人の基礎控除は同じ控除である。
正解:×
別の税・別の計算段階で使います。
誤っている語句
「同じ控除」
正しい修正
「別の制度上の基礎控除」
問題12
令和6年1月1日以後の相続時精算課税適用財産については、一定の場合に基礎控除後の金額を相続税の課税価格へ算入する。
正解:○
現行制度の相続時精算課税との接続です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題13
相続税の基礎控除額を超える財産があれば、その財産総額全部が課税遺産総額になる。
正解:×
課税価格の合計額から基礎控除を差し引いた残額が課税遺産総額です。
誤っている語句
「財産総額全部」
正しい修正
「課税価格の合計額から基礎控除を控除した残額」
問題14
相続税の申告期限は、通常、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内である。
正解:○
国税庁が示す相続税の申告・納付期限です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
問題15
平成19年問27では、自己の配偶者から家屋を取得するケースが住宅取得等資金についての相続時精算課税特例の対象にならないとした第1肢が正しい。
正解:○
指定資料の正解は1です。
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
一問一答では、3,000万円・600万円・110万円・2,500万円を同じグループで暗記しないことが必要です。3,000万円+600万円は相続税の基礎控除、110万円と2,500万円は現在の相続時精算課税の贈与税計算に関係する数字です。数字を見たら税目と制度名まで確認してください。
人数問題では、取得者数より法定相続人を優先します。相続放棄があれば放棄前、養子がいれば人数制限という追加チェックを行います。👉 家族関係→特殊ルール→人数→計算式という順番を固定してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答では、正しい数字を別の制度へ移すひっかけが中心になります。110万円を相続税の基礎控除へ、600万円を相続時精算課税へ、3,000万円を法定相続人1人ごとの控除へ変更すれば、数字自体は実在しているため見落としやすくなります。数字の名称と対象を一緒に確認してください。
人数についても、「相続放棄した人数を引く」「養子を全員足す」「実際の取得者だけ数える」という自然に感じる処理が誤りになります。相続税の基礎控除では、一般感覚ではなく税法上の法定相続人の数を使います。この人数さえ確定できれば計算自体は簡単です。
FAQ
相続税の基礎控除では、相続放棄、遺言、養子、相続時精算課税などを組み合わせたときに迷いやすくなります。FAQでは本文の式を繰り返すのではなく、条件を少し変更した場合の境界を扱います。相続税基礎控除の判断方法に直接関係する範囲に絞ります。
Q1.法定相続人が0人なら、相続税の基礎控除も0円ですか?
いいえ。国税庁の通達では、相続人の数が0である場合でも遺産に係る基礎控除額は3,000万円とされています。
Q2.相続放棄した人は財産をもらわないので、600万円部分からも外しますか?
外しません。相続税の基礎控除で使う法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして算定します。
Q3.遺言で1人が全財産を相続した場合、法定相続人が4人いても基礎控除は3,600万円になりますか?
なりません。実際の取得者が1人でも、基礎控除は法定相続人の数を基礎に計算するため、4人なら5,400万円です。
Q4.養子が5人いれば、600万円×5人を必ず基礎控除へ追加できますか?
できません。法定相続人の数へ算入する養子には原則として、実子がいる場合1人、実子がいない場合2人までという制限があります。
Q5.課税価格が基礎控除を1円でも超えれば、遺産全部へ相続税率を掛けますか?
そのようには計算しません。課税価格の合計額から基礎控除を控除した課税遺産総額を基に、法定相続分で按分するなどの手順で相続税の総額を計算します。
Q6.相続時精算課税の110万円を使ったら、相続税の基礎控除は使えなくなりますか?
そのような関係ではありません。110万円は相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除で、相続税の課税価格を計算した後には別に相続税の基礎控除を確認します。
Q7.相続税の基礎控除以下なら、絶対に相続税申告は不要ですか?
通常は基礎控除以下なら申告不要ですが、一定の特例を適用して課税価格が基礎控除以下になる場合など、申告が必要なケースがあります。基礎控除の計算と特例の申告要件を分けてください。
Q8.法定相続人が3人なら、各人が1,600万円ずつ基礎控除を使うのですか?
違います。4,800万円という基礎控除額を相続全体の課税価格の合計額から控除する仕組みで、各相続人へ均等に1,600万円ずつ配る制度ではありません。
Q9.被相続人の死亡後10か月という数字は基礎控除の計算期間ですか?
違います。10か月は通常の相続税の申告・納付期限に関する数字で、基礎控除の金額を決める期間ではありません。
Q10.平成19年問27の住宅取得等資金特例で出た翌年3月15日は、相続税の申告期限ですか?
違います。指定資料では住宅の新築・取得等についての期限として翌年3月15日が使われ、相続税の申告期限とは別の数字です。
Q11.相続時精算課税で贈与された財産があれば、相続税の基礎控除はその財産だけに適用しますか?
いいえ。相続時精算課税適用財産のうち相続税の課税価格へ算入される金額などを含めて課税価格の合計額を求め、その全体と遺産に係る基礎控除額を比較します。
Q12.相続税の基礎控除を最短で判断する順番は何ですか?
法定相続人を確定→放棄・養子を確認→3,000万円+600万円×人数→課税価格の合計額と比較です。この順番なら人数のひっかけと計算式のひっかけを分けて処理できます。
FAQで共通するポイントは、数字を使う前に何の計算をしているかを確認することです。600万円は法定相続人の人数加算、110万円は相続時精算課税、10か月は申告期限、翌年3月15日は指定過去問の住宅特例に関係する期限です。数字だけを横並びで暗記すると所属先を交換されます。
また、相続税の基礎控除では「実際にどうなったか」より、税法上どの人数を使うかが重要な場面があります。相続放棄、遺産分割、養子などが出たら日常的な感覚で人数を増減せず、法定相続人の数を確定してください。計算はその後です。
宅建試験ではここが狙われやすい
FAQ型の応用では、基礎控除と申告要件、基礎控除と相続時精算課税、法定相続人と実際の取得者という別概念を一つにする誤肢が狙われます。「基礎控除以下だから何も手続不要」「贈与税で110万円控除したから相続税の基礎控除は使えない」など、制度間の因果関係を勝手に作らないでください。
本試験では、👉 税目→計算段階→対象者→数字の順で確認します。相続税なら法定相続人を確定して3,000万円+600万円、相続時精算課税なら贈与税側の基礎控除等、住宅特例なら住宅要件と期限というように、同じ「税・その他」の数字でも所属先を分離することが重要です。
まとめ
相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算します。最初に法定相続人を確定し、相続放棄があれば放棄前の人数、養子がいれば相続税上の算入制限を確認してから600万円を掛けます。課税価格の合計額がこの基礎控除を超えるかどうかが、相続税判断の最初の大きな分岐です。
ひっかけでは、実際の財産取得者を法定相続人の数にする、放棄者を人数から外す、養子を無制限に加える、3,000万円へ人数を掛けるという変更が狙われます。相続時精算課税が出た場合は、年110万円の基礎控除と相続税の基礎控除を区別し、贈与時と相続時の計算段階を分けてください。数字だけではなく「何についての数字か」を確認することが必要です。
平成19年問27では、相続時精算課税の住宅取得等資金特例について、第1肢が正しく、正解は1です。指定資料では、第2肢は存在しない費用要件、第3肢は居住部分の割合、第4肢は翌年3月15日という期限を変更したことが誤りとされています。 本試験では、法定相続人→基礎控除→相続時精算課税の有無→各特例の要件・期限の順で問題文を見ることが相続税の基礎控除攻略につながります。
