宅地建物取引士証の提示では、いつ・誰から求められたときに提示するのかを正確に判断する必要があります。取引関係者から請求された場合と重要事項説明をするときでは、提示義務が発生する条件が異なるからです。本記事では平成29年問37を中心に、宅建士証の提示、登録の移転、資格登録、従業者証明書との違いを整理します。
宅建試験では、「以前に宅建士証を見せたから、重要事項説明時には不要」とする誤肢に注意が必要です。二つの提示義務は別々に存在するため、過去に一度提示していても35条の重要事項説明時には改めて提示します。問題文では請求・重要事項説明・宅建士証・従業者証明書のどれが問われているかを最初に確認します。
問題文を読んだら最初に何を見るか
宅建士証の提示問題では、最初にどの場面で提示が問題になっているのかを確認します。取引関係者から請求された場面と重要事項説明では、請求の有無に関する判断が異なるからです。この章では、相手方、提示場面、宅建士証、他の証明書という順番で判断します。
平成29年問37では、第1肢が宅建士証の提示、第2肢が登録の移転、第3肢が資格登録、第4肢が従業者証明書との関係を扱っています。同じ宅建士というテーマでも、各肢で使用する制度は異なります。最初に「提示・登録移転・資格登録・証明書」と分類してください。
第1肢では、買受けの申込みの前後という時点が加えられています。しかし取引関係者から請求があれば、買受けの申込み前か後かによって提示義務が消えるわけではありません。さらに重要事項説明をする際には、請求がなくても改めて宅建士証を提示します。
問題文で確認したい語句を整理します。次の表では、平成29年問37で正誤判断につながる表現と判断ポイントを対応させています。表を見たら、提示義務なのか別の宅建士制度なのかを最初に切り分けてください。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| 宅建士証 | 提示義務の場面を確認 |
| 取引関係者 | 請求があるか確認 |
| 請求があった | 宅建士証を提示 |
| 買受けの申込み前 | 提示義務は否定されない |
| 買受けの申込み後 | 同様に提示義務あり |
| 重要事項説明 | 請求がなくても提示 |
| 以前に提示した | 35条説明時は再度提示 |
| 登録の移転 | 任意の手続 |
| 他県の事務所 | 登録移転を申請できる |
| 住所変更 | 登録移転の要件と混同しない |
| 実務経験2年以上 | 資格登録の要件 |
| 登録実務講習 | 実務経験不足を補う |
| 従業者証明書 | 宅建士証とは別の証明書 |
| 従業者から請求 | 従業者証明書も提示 |
この表では、宅建士証の提示を一つの場面だけで覚えないことが重要です。取引関係者から請求されたときと重要事項説明時という二つの入口があります。重要事項説明では、請求の有無を判断材料にしません。
本試験では次の順番で処理します。最初に誰が何を求めているのかを確認し、提示義務なのか登録関係なのかを分類します。その後に請求の有無、重要事項説明、別証明書の必要性を確認してください。
・① 宅建士本人の行為か確認する
・② 宅建士証の提示問題か確認する
・③ 取引関係者から請求があるか確認する
・④ 重要事項説明の場面か確認する
・⑤ 以前の提示で代用できないか確認する
・⑥ 登録移転なら義務か任意か確認する
・⑦ 従業者証明書との代用関係を確認する
この順番なら、「一度提示したから再度提示不要」という誤肢を切れます。また、宅建士証と従業者証明書を同じ身分証明書として処理するミスも防げます。宅建業法では、似た証明書であっても義務はそれぞれ別に判断してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
宅建士証の提示では、二つの提示義務を一つの義務として扱わせるひっかけが狙われます。取引関係者から請求された際に一度提示していても、その後に重要事項説明をするときは改めて宅建士証を提示します。「以前に提示済み」という事情は35条の提示義務を消しません。
また、「申込み前なら不要」「申込み後だけ必要」など、取引の時点を利用した誤肢にも注意します。資料では、取引関係者から請求があった場合の提示義務は、買受けの申込み前後で区別されていません。👉 請求時の提示と35条説明時の提示を別々に判断することが本問攻略の基本です。
宅建士証の提示義務|二つの場面を分ける
宅建士証の提示義務は、取引関係者から請求された場合と重要事項説明をする場合に分けて判断します。前者は請求が条件ですが、後者は相手方から請求されなくても提示しなければなりません。この章では、二つの提示義務を比較し、過去問での切り分け方を整理します。
取引関係者から宅建士証を見せるよう請求された場合、宅建士は提示義務を負います。この場面では、取引がどの段階まで進んでいるかを理由に提示を拒むことはできません。買受けの申込みの前後を問わず、請求があったかを確認します。
重要事項説明では、さらに強い提示義務があります。相手方が宅建士証の提示を求めていなくても、説明を行う宅建士から提示しなければなりません。請求を待ってから見せる制度ではない点が最大の違いです。
二つの提示義務を比較します。表を見る目的は、「請求」という条件が必要なのはどちらかを固定することです。平成29年問37第1肢では、この二つを別々の義務として理解しているかが問われています。
| 提示場面 | 請求 | 宅建士証の提示 |
| 取引関係者から請求 | 必要 | 提示する |
| 重要事項説明 | 不要 | 必ず提示 |
| 以前に一度提示済み | 関係なし | 35条時は再提示 |
| 申込みの前後 | 原則関係なし | 請求があれば提示 |
この表では、重要事項説明時の提示を通常の請求時提示の延長として考えないことがポイントです。二つは独立した義務なので、一方を履行したことだけで他方がなくなるわけではありません。問題文に「既に提示していた」とあっても35条の場面を確認してください。
以前に見せていても重要事項説明では再度提示する
重要事項説明をするときは、以前に宅建士証を提示したことがあっても再度提示します。取引関係者からの請求に応じた提示と、35条の説明時に必要となる提示は別々の義務だからです。この章では、提示済みという事情を利用した誤肢を確認します。
例えば物件案内時に買主から宅建士証を見せてほしいと請求され、宅建士が提示したとします。その後に重要事項説明を行う場合、「先ほど見せました」として宅建士証の提示を省略することはできません。重要事項説明の開始時に改めて提示する必要があります。
本試験では、この二つを一回の提示で済ませられるように書くと誤肢になります。「既に」「以前」「申込み時に提示済み」という語句が出たら注意してください。いつ提示したかではなく、現在35条説明を行う場面かを確認します。
例題1
宅建士は、取引関係者から宅建士証の提示を請求された場合、宅建士証を提示しなければならない。
解答・判断ポイント
正解:○
取引関係者から請求があった場合は提示義務があります。買受けの申込み前後によって結論は変わりません。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
請求時の提示義務を確認する基本問題です。
例題2
重要事項説明では、相手方から宅建士証の提示を求められた場合に限り提示すればよい。
解答・判断ポイント
正解:×
重要事項説明では請求がなくても提示します。「請求された場合に限る」という限定が誤りです。
誤肢分析
誤っている語句
「提示を求められた場合に限り」
正しい修正
「相手方の請求の有無にかかわらず」
通常の請求時提示と重要事項説明時の提示を混同させています。
例題3
宅建士が取引の初期段階で宅建士証を提示していれば、後の重要事項説明時には再度提示する必要はない。
解答・判断ポイント
正解:×
二つの提示義務は別々です。重要事項説明をするときには改めて宅建士証を提示します。
誤肢分析
誤っている語句
「再度提示する必要はない」
正しい修正
「重要事項説明時に改めて提示する」
平成29年問37第1肢で狙われる判断方法です。
宅建試験ではここが狙われやすい
宅建士証の提示では、請求という条件を35条へ移す誤肢が典型です。「提示を求められたときは提示する」という知識は正しいため、その条件を重要事項説明にも使ってしまうと誤答します。35条説明時は請求不要という例外的な強い義務を確認してください。
もう一つは、一度の提示で二つの義務を満たしたように見せる方法です。資料では、以前に宅建士証を提示していても重要事項説明時には改めて提示すると整理されています。👉 請求時と説明時を二つのチェックボックスとして処理すると、提示済みという言葉に惑わされにくくなります。
登録の移転|義務ではなく任意
宅建士の登録の移転は、要件を満たせば申請できる任意の手続です。他都道府県の宅建業者の事務所で業務に従事する場合でも、必ず登録移転しなければならないわけではありません。この章では、平成29年問37第2肢で狙われた義務と任意の違いを整理します。
甲県知事の登録を受けている宅建士が、乙県に事務所を置く宅建業者で専任宅建士として従事する場合を考えます。この場合は乙県への登録移転を申請できる条件に該当します。しかし、「できる」のであって「しなければならない」わけではありません。
さらに、他都道府県へ住所を変更しただけの場合と混同しないことも必要です。登録移転で問題となるのは、登録地以外の都道府県にある宅建業者の事務所で業務に従事する場合です。住所変更だけを登録移転の要件として扱わないでください。
登録移転の判断を比較します。表を見る目的は、「できる」と「しなければならない」を明確に区別することです。平成29年問37第2肢では、この法律効果の変更が誤りとなります。
| 場面 | 登録移転 | 判断ポイント |
| 他県の宅建業者の事務所で従事 | 申請できる | 任意 |
| 他県で専任宅建士に就任 | 申請できる | 義務ではない |
| 他県へ住所変更だけ | 別判断 | 勤務先と区別 |
| 「移転しなければならない」 | 誤り | 任意を義務化 |
この表では、要件部分が正しくても結論が「義務」とされていないかを確認します。宅建試験では、前半をすべて正しくして最後の法律効果だけを入れ替える誤肢が頻出です。文章を最後まで読んで○×を決めてください。
例題4
登録地以外の都道府県にある宅建業者の事務所で業務に従事する場合、登録の移転を申請することができる。
解答・判断ポイント
正解:○
登録移転は申請できる制度です。任意の手続として整理します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
登録移転の基本問題です。
例題5
甲県登録の宅建士が乙県の宅建業者で専任宅建士に就任する場合、乙県へ登録を移転しなければならない。
解答・判断ポイント
正解:×
登録移転は任意です。要件を満たしていても必ず移転する義務はありません。
誤肢分析
誤っている語句
「移転しなければならない」
正しい修正
「登録の移転を申請することができる」
平成29年問37第2肢と同じひっかけです。
宅建試験ではここが狙われやすい
登録移転では、任意を義務へ変える一語のひっかけが狙われます。勤務先が他県に変わるという事実関係は正しくても、「申請できる」を「申請しなければならない」とすれば選択肢全体は誤りです。宅建業法では義務と任意の違いを最後まで確認してください。
また、勤務先所在地と住所地を入れ替える問題にも注意します。資料では、登録地以外の都道府県に所在する宅建業者の事務所で従事する場合と、単に他県へ住所変更した場合を明確に区別しています。👉 勤務先→申請可能→任意という三段階で処理してください。
宅建士の資格登録|試験合格だけでは足りない
宅建士の登録を受けるには、宅建士試験合格に加えて実務経験等の要件を満たす必要があります。資料では、2年以上の実務経験があるか、国土交通大臣指定の登録実務講習を受講していることが要求されています。この章では、平成29年問37第3肢の正解理由を整理します。
さらに、欠格要件に該当しないことも登録の条件になります。したがって、試験へ合格したという事実だけで直ちに宅建士登録を受けられるとは判断しません。「試験合格+実務要件+欠格要件」という複数条件を確認します。
資料では、宅建士登録を受け、さらに宅建士証の交付を受けることで宅建士になる流れも示されています。資格登録と宅建士証交付は別の段階なので、登録実務講習と法定講習を混同しないことが必要です。講習という共通語だけで同じ制度と判断しないでください。
登録に必要な条件を整理します。表を見る目的は、試験合格だけで足りないことを確認することです。平成29年問37第3肢では、この登録要件が正しく述べられています。
| 登録要件 | 内容 | 判断ポイント |
| 宅建士試験 | 合格 | 最初の条件 |
| 実務経験 | 2年以上 | 登録要件 |
| 登録実務講習 | 実務経験の代替 | 登録段階 |
| 欠格要件 | 該当しない | 登録可否を確認 |
| 宅建士証 | 登録後に交付 | 登録とは別段階 |
この表では、資格登録と宅建士証交付を分けることがポイントです。登録実務講習は資格登録に関係し、宅建士証交付時には別の法定講習が問題となります。数字や講習名を使う前に現在の手続段階を確認してください。
例題6
宅建士登録には、試験合格だけでなく、2年以上の実務経験または登録実務講習などの要件を確認する。
解答・判断ポイント
正解:○
試験合格だけでは登録要件をすべて満たしたとは判断しません。実務経験等も確認します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
平成29年問37第3肢に関係する基本知識です。
例題7
宅建士試験に合格すれば、実務経験の有無にかかわらず直ちに宅建士登録を受けられる。
解答・判断ポイント
正解:×
登録には実務経験等の要件があります。試験合格だけで直ちに登録できるとは限りません。
誤肢分析
誤っている語句
「実務経験の有無にかかわらず直ちに」
正しい修正
「2年以上の実務経験または登録実務講習等の要件を確認する」
試験合格と資格登録を同一視させる誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
資格登録では、試験合格・資格登録・宅建士証交付を一つの手続として扱わせる問題が狙われます。宅建試験に合格しただけで直ちに宅建士として活動できるように書かれていれば、登録や宅建士証の段階が抜けていないか確認してください。手続の順序が正誤判断につながります。
さらに、登録実務講習と宅建士証交付時の法定講習も混同しやすい部分です。資料でも両者は別の講習として整理されています。👉 試験合格→登録要件→資格登録→宅建士証交付という流れを固定すると、各講習を使う場面も見分けやすくなります。
宅建士証と従業者証明書|両方必要になる場合がある
宅建士証と従業者証明書は、それぞれ別の義務に基づく証明書です。宅建士が重要事項説明で宅建士証を提示したとしても、従業者証明書の提示を求められれば別途提示する必要があります。この章では、平成29年問37第4肢を中心に二つの証明書を比較します。
宅建士証は、宅建士として重要事項説明などを行う際に関係する証明書です。一方、宅建業者の従業者は、取引関係者から請求があった場合に従業者証明書を提示します。宅建士である従業者には、両方の立場が存在します。
したがって、重要事項説明を行う宅建士について従業者証明書の提示まで求められた場合、宅建士証だけを提示して終えることはできません。宅建士証の提示に加えて、従業者証明書も提示します。一方の証明書が他方を代替するわけではありません。
二つの証明書を比較します。表を見る目的は、何を証明する書類なのかを分けることです。平成29年問37第4肢では、二つの提示義務を一つにまとめられるかがポイントになります。
| 証明書 | 提示場面 | 判断ポイント |
| 宅建士証 | 重要事項説明など | 宅建士として提示 |
| 従業者証明書 | 取引関係者から請求 | 従業者として提示 |
| 両方の請求・義務あり | 両方提示 | 一方で代用不可 |
| 宅建士証を提示済み | 従業者証明書不要にはならない | 別義務 |
この表では、同じ人物が二つの立場を持つことを意識してください。宅建士であり、かつ宅建業者の従業者であるなら、それぞれの制度上の義務を別に確認します。「強い証明書一枚で足りる」という考え方は使わないでください。
例題8
宅建業者の従業者は、取引関係者から請求された場合には従業者証明書を提示しなければならない。
解答・判断ポイント
正解:○
従業者としての提示義務です。宅建士であるかどうかとは別に判断します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
従業者証明書の基本問題です。
例題9
重要事項説明時に宅建士証を提示した宅建士は、従業者証明書の提示を求められても改めて提示する必要はない。
解答・判断ポイント
正解:×
宅建士証と従業者証明書は別の義務です。従業者証明書の提示を求められれば、宅建士証とは別に提示します。
誤肢分析
誤っている語句
「改めて提示する必要はない」
正しい修正
「宅建士証に加えて従業者証明書も提示する」
平成29年問37第4肢で使う判断方法です。
例題10
宅建士証は、宅建業者の従業者であることを証明するための従業者証明書を当然に兼ねる。
解答・判断ポイント
正解:×
二つは別の証明書です。宅建士証を従業者証明書として当然に代用することはできません。
誤肢分析
誤っている語句
「当然に兼ねる」
正しい修正
「それぞれ別の提示義務として判断する」
資格と勤務関係を混同させる誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
宅建士証と従業者証明書では、一方を提示すれば他方まで省略できるようにする誤肢が狙われます。どちらも本人確認に使われそうな書類なので代用できるように見えますが、資料では別々の義務として整理されています。何の立場を証明する書類なのかを確認してください。
特に重要事項説明では宅建士証を提示するため、「もう身分は確認できている」と考えやすくなります。しかし従業者証明書の請求があれば、宅建業者の従業者として別途提示する必要があります。👉 宅建士としての義務と従業者としての義務を別々に処理することが得点につながります。
過去問分析
この過去問では、宅建士について宅建士証の提示、登録の移転、資格登録、従業者証明書を横断して判断します。各肢で使う制度が異なるため、一つの宅建士ルールだけで四肢を処理してはいけません。この章では、平成29年問37だけを対象として各肢を簡潔に分析します。
提供された模範解答では、第1肢・第2肢・第4肢が誤りで、第3肢が正しい内容です。第1肢では提示義務、第2肢では登録移転の任意性、第3肢では資格登録、第4肢では証明書の違いがポイントになります。したがって正解は3です。
本問の特徴は、どの肢も宅建士に関する正しい用語を使用している点です。そのため、制度名だけを見ても正誤を判断できず、「義務か任意か」「別々の義務か」という法律効果まで確認する必要があります。文章の最後まで読んで結論を確定してください。
最初に確認する語句
問題文では、宅建士証の提示、取引関係者、重要事項説明、登録の移転、2年以上の実務経験、登録実務講習、従業者証明書を最初に確認します。
平成29年(2017年)問37
次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
- 宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは、物件の買受けの申込みの前であっても宅地建物取引士証を提示しなければならないが、このときに提示した場合、後日、法第35条に規定する重要事項の説明をする際は、宅地建物取引士証を提示しなくてもよい。
- 甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士Aは、乙県に主たる事務所を置く宅地建物取引業者Bの専任の宅地建物取引士となる場合、乙県知事に登録を移転しなければならない。
- 宅地建物取引士の登録を受けるには、宅地建物取引士資格試験に合格した者で、2年以上の実務の経験を有するもの又は国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものであり、法で定める事由に該当しないことが必要である。
- 宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があったときは、従業者証明書を提示しなければならないが、法第35条に規定する重要事項の説明をする際は、宅地建物取引士証の提示が義務付けられているため、宅地建物取引士証の提示をもって、従業者証明書の提示に代えることができる。
正解:3
解説
本問は宅建士に関する複数の制度を問う問題です。第1肢・第2肢・第4肢が誤りで、第3肢が正しい内容となります。各肢を提示・移転・登録・証明書へ分類すると判断しやすくなります。
各肢の正誤理由
◆1(誤り)
取引関係者から請求があれば、申込みの前後を問わず宅建士証を提示します。重要事項説明時には以前提示していても改めて提示が必要です。
◆2(誤り)
他県の宅建業者の事務所で従事する場合、登録移転を申請できます。ただし登録移転は任意であり、必ず移転しなければならないわけではありません。
◆3(正しい)
宅建士登録には、宅建士試験合格に加えて2年以上の実務経験または登録実務講習などの要件を確認します。欠格要件に該当しないことも必要です。
◆4(誤り)
宅建士証と従業者証明書は別の証明書です。両方の提示義務が生じる場合は、一方だけで他方を省略できません。
問題作成者のひっかけポイント
第1肢では、宅建士証の提示義務を一回だけの義務のように扱わせています。既に提示したという事情を入れることで、重要事項説明時の再提示まで不要だと思わせる構成です。二つの提示義務を独立して理解しているかが問われています。
第2肢では、登録移転できる正しい事実関係を示したうえで、最後を「移転しなければならない」と義務化しています。要件部分が正しいため、最後まで読まないと誤答しやすい形です。宅建業法では任意と義務の入れ替えが頻繁に使われます。
第4肢では宅建士証と従業者証明書を同じ身分証明として扱わせています。実際には宅建士としての立場と宅建業者の従業者としての立場は別なので、提示義務もそれぞれ確認します。第3肢だけが資格登録の要件を正しく述べています。
受験生が迷う理由
宅建士証については、一度本人確認ができれば何度も提示する必要はないと考えやすくなります。しかし重要事項説明時の提示は別の法律上の義務なので、過去の提示では代用できません。日常感覚ではなく制度ごとの義務を確認します。
登録移転についても、勤務先が他県へ変われば登録も当然に変更しなければならないように感じます。しかし資料では任意的移転と整理されており、必須手続ではありません。住所変更との違いも混同しやすい部分です。
従業者証明書については、宅建士証の方が資格証明として強く見えるため代用できそうに感じます。しかし証明する立場が異なるため、一方で他方を省略できません。人ではなく義務単位で分けて考えてください。
正しい判断手順
第1肢では、最初に宅建士証の提示問題と分類します。取引関係者から請求された場合の提示と重要事項説明時の提示を別々に確認し、一度提示しただけでは足りないと判断します。これで第1肢を×にできます。
第2肢では登録移転の要件を確認した後、「しなければならない」という語句を確認します。登録移転は任意なので×です。第3肢では試験合格、実務経験等、欠格要件という登録条件を確認して○とします。
第4肢では宅建士証と従業者証明書を別制度として処理します。一方の提示で他方を代用できないため×です。最後に1×・2×・3○・4×として正解3を確定します。
類似問題で使える知識
宅建士証の提示問題では、請求時と重要事項説明時を二つに分ける方法が使えます。重要事項説明時は請求不要なので、「相手が求めなかった」「以前に提示済み」といった事情を削って判断してください。同じ方法で提示義務の多くの誤肢を切れます。
登録移転では、他県勤務という要件と任意性をセットで使えます。「できる」を「しなければならない」に変えた文章へ対応できます。住所変更との入れ替えにも同じ判断方法が有効です。
資格登録では、試験合格だけでなく実務経験等を確認します。従業者証明書では、資格と勤務関係という立場を分けます。一つの宅建士問題でも、まず論点を分類することが重要です。
宅建試験ではここが狙われやすい
平成29年問37では、正しい知識の一部分だけを変更する誤肢が多く使われています。第1肢では提示の回数、第2肢では任意を義務へ、第4肢では別々の証明書を代用可能へ変更しています。どの肢も用語自体は正しいため、法律効果まで確認しなければなりません。
👉 復習では、1=提示義務は二つ、2=登録移転は任意、3=登録には実務要件、4=証明書は別々と圧縮してください。全文を暗記するより、誤肢のどこが変更されているかを説明できることが重要です。この読み方なら、表現を変えられた類似問題にも対応できます。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
ここでは、宅建士証の提示を中心に平成29年問37の関連論点を本試験レベルで確認します。請求の有無、重要事項説明、登録移転、資格登録、従業者証明書を組み合わせています。誤りの場合は、どの語句を直せば正しい文章になるかまで確認してください。
問題1
宅建士は、取引関係者から宅建士証の提示を請求された場合には、宅建士証を提示しなければならない。
正解:○
取引関係者から請求があれば提示義務があります。
問題2
買受けの申込み前であれば、取引関係者から請求されても宅建士証を提示する必要はない。
正解:×
申込みの前後によって提示義務は消えません。
誤っている語句
「申込み前であれば提示する必要はない」
正しい修正
「申込み前でも請求があれば提示する」
問題3
重要事項説明をするときは、相手方から請求がなくても宅建士証を提示する。
正解:○
35条の重要事項説明では請求の有無にかかわらず提示します。
問題4
以前に取引関係者から請求されて宅建士証を提示していれば、重要事項説明時の提示は省略できる。
正解:×
二つの提示義務は別々です。
誤っている語句
「提示は省略できる」
正しい修正
「重要事項説明時に改めて提示する」
問題5
重要事項説明時の宅建士証提示は、相手方が提示を希望した場合だけ必要である。
正解:×
重要事項説明では請求不要です。
誤っている語句
「希望した場合だけ」
正しい修正
「請求の有無にかかわらず」
問題6
登録地以外の都道府県にある宅建業者の事務所で従事する場合、登録移転を申請することができる。
正解:○
登録移転は任意の申請制度です。
問題7
他県の宅建業者で専任宅建士に就任した場合、必ずその都道府県へ登録を移転しなければならない。
正解:×
登録移転は義務ではありません。
誤っている語句
「移転しなければならない」
正しい修正
「登録の移転を申請することができる」
問題8
宅建士の資格登録には、試験合格だけでなく2年以上の実務経験または登録実務講習等を確認する。
正解:○
試験合格だけで登録要件をすべて満たすわけではありません。
問題9
宅建士試験に合格すれば、実務経験がなくても当然に宅建士登録を受けられる。
正解:×
実務経験等の登録要件を確認します。
誤っている語句
「当然に宅建士登録を受けられる」
正しい修正
「実務経験等の要件を満たす必要がある」
問題10
宅建業者の従業者は、取引関係者から請求された場合には従業者証明書を提示する。
正解:○
従業者としての提示義務です。
問題11
重要事項説明時に宅建士証を提示すれば、従業者証明書の提示を求められても提示する必要はない。
正解:×
宅建士証と従業者証明書は別の義務です。
誤っている語句
「提示する必要はない」
正しい修正
「宅建士証に加えて従業者証明書も提示する」
問題12
宅建士証と従業者証明書は、同じ人物が持っていてもそれぞれ別の役割を持つ。
正解:○
宅建士としての資格と従業者としての立場を分けて判断します。
一問一答では、宅建士証という言葉を見たら「請求時か35条説明時か」を先に確認してください。登録移転なら任意性、資格登録なら実務要件、従業者証明書なら別義務というように判断ルートを切り替えます。同じ宅建士の問題でも一つのルールだけで処理しないことがポイントです。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答で最も狙われるのは、請求あり・請求不要、任意・義務、一つの証明書・二つの証明書という対立です。どちら側が正しいかを曖昧に覚えていると、一語の変更だけで誤答します。特に「既に」「必ず」「だけでよい」という限定表現を確認してください。
また、宅建士資格に関する問題では、試験合格・登録・宅建士証交付という手続段階も入れ替えられます。👉 提示場面→義務の有無→別制度との代用可否を確認し、登録問題では手続段階へ判断を切り替えてください。問題文の主語と動詞を拾うことが得点につながります。
FAQ
宅建士証の提示では、「一度見せたのにもう一度必要なのか」「従業者証明書と兼用できないのか」という境界で迷いやすくなります。FAQでは本文の単純な言い換えではなく、本試験で条件が少し変わった場合の判断方法を確認します。迷ったら、現在どの義務が発生しているのかを一つずつ確認してください。
また、同じ宅建士が複数の立場を持つ場合でも義務をまとめないことが重要です。宅建士として宅建士証を提示し、従業者として従業者証明書を提示する場合があります。一人の人物だから証明書も一つでよいとは判断しません。
Q1.申込み前でも宅建士証の提示を請求できますか?
資料では、取引関係者から請求があれば買受けの申込み前でも後でも提示義務があると整理されています。申込みの時点で区別しません。
Q2.物件案内時に一度宅建士証を見せたら、35条説明時は省略できますか?
省略できません。取引関係者からの請求時と重要事項説明時は別々の提示義務です。
Q3.重要事項説明の相手方が宅建士証を見なくてよいと言った場合はどうしますか?
重要事項説明では相手方の請求の有無にかかわらず提示します。相手方の希望によって提示義務が消えるとは判断しません。
Q4.他県へ転勤した場合、登録移転しないと宅建士として働けませんか?
資料では登録移転は任意の手続として整理されています。要件を満たせば申請できますが、必須とはされていません。
Q5.住所だけ他県へ移した場合も登録移転できますか?
資料では、他県の宅建業者の事務所で業務に従事する場合と住所変更を区別しています。住所だけを登録移転の要件として扱いません。
Q6.宅建試験に合格すればすぐ宅建士として働けますか?
試験合格だけではなく資格登録の要件を確認します。さらに資料では、登録後に宅建士証の交付を受ける段階も示されています。
Q7.宅建士証があれば従業者証明書は不要ですか?
不要とはなりません。二つは別々の義務なので、従業者証明書の提示を求められれば別途提示します。
Q8.重要事項説明中に従業者証明書も請求されたらどちらを見せますか?
宅建士証だけでは足りません。宅建士証に加えて従業者証明書も提示します。
FAQで共通するのは、既に別の義務を果たしていることを理由に現在の義務を省略しないことです。宅建士証を以前見せていても35条の提示義務は残り、宅建士証を見せても従業者証明書の提示義務は別に残ります。各義務を一つずつ処理してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
境界問題では、「既に行った」「同じ人だから」「同じ証明目的だから」という理由で義務を省略する誤肢が狙われます。宅建業法では似た行為でも法律上の根拠が別なら、それぞれ独立した義務として判断する必要があります。宅建士証の提示はその典型です。
また、登録移転では任意性、資格登録では手続段階という別のひっかけが加わります。👉 現在どの制度について○×を判断しているかを最初に言葉にすることが有効です。提示問題なら請求・35条・別証明書の三点へ絞ってください。
まとめ
宅建士証の提示では、最初に取引関係者からの請求か、重要事項説明かを確認します。請求時の提示と35条説明時の提示は別々の義務であり、以前に見せていても重要事項説明では再度提示します。宅建士証と従業者証明書も別の義務として判断してください。
平成29年問37は1×・2×・3○・4×で正解3です。👉 請求時の提示→35条では請求不要→登録移転は任意→証明書は代用不可という順番で確認すれば、ひっかけを切りやすくなります。
