宅建業法35条では、契約前に説明する事項が取引の種類によって変わります。特に売買・貸借、宅地・建物、区分所有建物の違いを無視すると、同じ説明事項をすべての契約へ適用してしまいます。本記事では令和2年12月問42を中心に、35条の説明内容を過去問で判断する方法に絞って整理します。
重要事項説明では、説明事項を一列に暗記するだけでは十分ではありません。「この事項は売買だけか」「建物貸借にも必要か」「区分所有建物では追加されるか」という対象範囲まで確認する必要があります。問題文では、取引物件→契約類型→説明事項の順番で判断します。
問題文を読んだら最初に何を見るか
35条の説明内容では、最初に何を取引しているのか、売買か貸借かを確認します。同じ法令上の制限や建物情報でも、売買と貸借では説明義務の有無が異なる場合があるからです。この章では、物件、契約類型、説明事項という順番で問題を処理します。
令和2年12月問42では、第1肢が法令に基づく制限、第2肢が既存建物に関する書類の保存状況、第3肢が区分所有建物の維持修繕、第4肢が建物貸借の設備状況です。四肢とも35条の説明事項ですが、対象となる契約や建物の種類が異なります。最初に論点を分類してから○×を判断してください。
特に第1肢では、「歴史的風致形成建造物に関する制限」が問題になっています。法令上の制限だから常に説明すると判断するのではなく、建物貸借では説明不要となる制限があることまで確認します。法令名そのものより、借主がその規制対象行為をできる立場かを見ることがポイントです。
問題文で注目する語句を次の表に整理します。表を見る目的は、選択肢を読んだ段階でどの説明事項へ分類するかを決めることです。契約類型と物件の種類を先に固定してください。
| 問題文の語句 | 判断ポイント |
|---|---|
| 宅地の売買 | 宅地売買で必要な説明事項か |
| 建物の売買 | 建物特有の事項を確認 |
| 宅地の貸借 | 貸借特有の事項を確認 |
| 建物の貸借 | 売買との差が多い |
| 法令に基づく制限 | 建物貸借では例外を確認 |
| 歴史的風致形成建造物 | 法令制限の対象 |
| 建築確認済証 | 書類の保存状況を説明 |
| 既存建物 | 建物状況・書類保存を確認 |
| 区分所有建物 | 追加説明事項を確認 |
| 維持修繕 | 記録の有無・内容を確認 |
| 台所・浴室・便所 | 建物貸借の設備状況 |
| 管理委託先 | 貸借・区分所有で確認 |
| 規約 | 区分所有建物の追加事項 |
| 貸借 | 売買と同じとは限らない |
この表では、説明事項の名称だけではなく対象となる契約まで確認してください。「法令上の制限」「書類の保存」「維持修繕」「設備状況」はすべて35条に関係しますが、適用される取引が異なります。説明事項と対象をセットで覚えることが必要です。
本試験では次の順番で選択肢を処理します。最初に物件と契約類型を確定し、その後に説明事項の種類を確認して適用対象へ当てはめます。最後に「記録があるとき」「保存の状況」など条件付きの説明事項かを確認します。
・① 宅地か建物か確認する
・② 売買・交換か貸借か確認する
・③ 区分所有建物か確認する
・④ 既存建物か新築建物か確認する
・⑤ 問われている説明事項を分類する
・⑥ その契約類型で説明が必要か確認する
・⑦ 「記録があるとき」など条件を確認する
・⑧ 内容そのものか保存状況なのかを確認する
この手順を使うと、「35条の説明事項だからすべての取引で説明する」という誤った考え方を防げます。35条では、同じ建物情報でも売買だけに必要な事項と貸借でも必要な事項があります。契約類型を先に見ることが最も重要です。
宅建試験ではここが狙われやすい
35条の説明内容では、売買と貸借の対象範囲を入れ替える誤肢が頻出します。正しい説明事項を使いながら、本来は売買だけの事項を貸借にも必要としたり、貸借で必要な事項を不要としたりするだけで誤肢を作れます。説明事項の名称だけを覚えている受験生ほど迷いやすい部分です。
また、「内容を説明する」のか「保存されているかどうかを説明する」のかという違いも狙われます。既存住宅の書類では、書類が存在しないこと自体が直ちに違反になるのではなく、保存の状況がどうなっているかを説明します。👉 物件→売買・貸借→説明事項→条件という順番を固定してください。
35条の説明内容|まず共通事項を確認する
35条には、売買・貸借の双方で説明が必要となる事項があります。登記された権利、一定の法令上の制限、供給・排水施設などは、取引物件を判断する基本情報になるからです。この章では、指定過去問に関係する共通事項を中心に整理します。
例えば登記された権利の種類や内容、登記名義人などは、宅地・建物の取引で基本的な確認事項になります。水道・電気・ガスなどの供給施設や排水施設の整備状況も、購入・賃借の判断に影響します。物件そのものの状態や権利関係を見る事項は、比較的広い契約類型で説明されます。
ただし、「共通事項」と考えた後でも例外確認は必要です。特に法令に基づく制限は、規制内容によって建物貸借では説明不要になる場合があります。令和2年12月問42第1肢が、この例外判断を問う問題です。
主要な共通事項を比較します。表を見る目的は、宅地・建物、売買・貸借のどこまで共通しているかを確認することです。すべて同じではない点に注意してください。
| 説明事項 | 売買 | 貸借 | 判断ポイント |
| 登記された権利関係 | 必要 | 必要 | 権利内容を確認 |
| 法令に基づく制限 | 必要 | 原則確認 | 建物貸借の例外あり |
| 供給・排水施設 | 必要 | 必要 | 整備状況 |
| 災害警戒区域等 | 必要 | 必要 | 指定の有無 |
| 石綿調査結果 | 建物で必要 | 建物で必要 | 記録がある場合 |
この表では、「原則として広く説明される事項」と「契約類型により除外される事項」を分けます。法令制限だから必ず説明と決めるのではなく、規制される行為を借主ができるのかまで確認します。例外がある事項ほど本試験で狙われます。
例題1
宅地または建物に登記された権利の種類・内容は、35条の重要事項として確認する。
解答・判断ポイント
正解:○
取引物件の権利関係は契約判断の基本となるため、重要事項として説明します。売買・貸借の双方で確認する事項として整理します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
共通事項の基本問題です。
例題2
35条に定められた説明事項は、売買・貸借の区別なくすべて同じ内容を説明する。
解答・判断ポイント
正解:×
売買と貸借では必要となる説明事項が異なります。建物貸借では不要となる法令制限や、貸借で追加される事項があります。
誤肢分析
誤っている語句
「すべて同じ内容」
正しい修正
「契約類型に応じて説明事項が異なる」
対象範囲を一律にした誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
共通事項の問題では、原則を例外のある場面まで広げる方法が使われます。「法令上の制限は重要事項」という知識自体は正しいため、建物貸借にも常に同じように適用すると誤答します。正しい大原則を知っている受験生ほど例外確認を忘れやすくなります。
逆に、貸借だから物件情報はあまり説明しないと考えるのも危険です。権利関係や設備、災害区域など、貸借でも重要事項となるものは多数あります。👉 共通事項か→貸借の例外があるかという二段階で確認してください。
法令に基づく制限|建物貸借の例外
法令に基づく制限の概要は、35条の重要事項として頻繁に出題されます。しかし、建物貸借では借主が行えない行為に関する規制まで説明対象としない場合があるため、契約類型の確認が必要です。この章では、令和2年12月問42第1肢を中心に整理します。
指定過去問では、歴史的風致形成建造物の増築などに市町村長への届出が必要という制限が問題になっています。このような増築・改築などは、建物の所有者側が行う性質の行為です。通常の建物借主はそのような行為を自由に行う立場ではありません。
そのため、資料では歴史的風致形成建造物に関する制限について、建物貸借の場合は重要事項としての説明が不要と整理されています。建蔽率や容積率のような建築制限と同じ考え方です。法令名を暗記するより、借主が規制対象行為を行えるかを考えてください。
法令制限の判断を表で整理します。表を見る目的は、売買・宅地貸借と建物貸借を区別することです。法令制限だからすべて○とは判断しません。
| 契約 | 法令制限 | 判断ポイント |
| 宅地売買 | 説明対象 | 土地利用へ影響 |
| 建物売買 | 説明対象 | 所有者の行為へ影響 |
| 宅地貸借 | 説明対象となるものあり | 土地利用を確認 |
| 建物貸借 | 一部不要 | 借主が規制行為をしない場合 |
この表では、建物貸借だけを機械的にすべて除外するわけではありません。法令上の制限の内容を見て、借主の利用に関係する規制なのかを確認する必要があります。本試験では「建物貸借」という語句が出たら例外確認へ進んでください。
例題3
歴史的風致形成建造物について増築時に市町村長への届出が必要となる制限は、建物貸借でも必ず重要事項として説明する。
解答・判断ポイント
正解:×
資料では、このような増築等の制限は建物貸借では説明不要と整理されています。借主が規制される行為をする権限を持たないためです。
誤肢分析
誤っている語句
「建物貸借でも必ず」
正しい修正
「建物貸借では説明不要となる」
令和2年12月問42第1肢の中心となるひっかけです。
例題4
法令に基づく制限の問題では、規制内容だけでなく売買・貸借のどちらかを確認する。
解答・判断ポイント
正解:○
契約類型によって説明義務の有無が異なる場合があります。法令名だけで判断しないことが必要です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
応用できる判断方法を確認する問題です。
宅建試験ではここが狙われやすい
法令制限では、「法令に基づく制限=35条」という正しい知識を過度に一般化させる誤肢が作られます。指定過去問では、歴史的風致形成建造物の増築等に関する制限自体は実在するため、その部分だけを読めば○に見えます。誤りは建物貸借まで説明対象に広げている部分です。
宅建試験では、正しい制度名より適用対象の入れ替えが狙われます。法令制限の名称が難しくても、借主がその増築・改築を行う立場かを考えれば判断できます。👉 **難しい法令名より「誰が規制されるか」**を見ることが得点につながります。
既存建物|書類がないことより保存状況を説明する
既存建物の売買では、一定の設計図書や点検記録などの保存状況が重要事項となります。ここで説明するのは、書類が必ず存在していることではなく、保存されているかどうかという状況だからです。この章では令和2年12月問42第2肢を中心に判断します。
例えば建築確認済証が見つからない場合でも、「確認済証がないから取引できない」と判断する問題ではありません。35条では、一定の書類について保存の状況を説明することが求められます。したがって「保存の状況=無」と説明することができます。
本試験では、「書類が保存されていなければ35条違反」とする誤肢に注意してください。重要事項説明義務と、書類そのものを保存している義務を混同しています。問題文の「保存の状況」という表現を正確に読みます。
既存建物に関する説明事項を整理します。表を見る目的は、「書類の中身」と「保存の状況」を分けることです。何を説明する規定なのかを確認してください。
| 問題文の状態 | 35条での判断 |
| 書類が保存されている | 保存ありと説明 |
| 一部書類がない | 保存状況を説明 |
| 建築確認済証がない | 「無」と説明可能 |
| 書類がないから説明不要 | 誤り |
| 書類がないから取引禁止 | 35条の結論ではない |
この表では、資料の存在そのものと説明義務を切り離すことが重要です。35条は買主が契約判断できるよう、どの資料が残っているのかを伝える制度です。「ない」という情報も重要事項になり得ます。
例題5
既存建物の売買では、一定の設計図書等について保存の状況を説明する。
解答・判断ポイント
正解:○
保存されている書類の有無を相手方へ伝えます。書類がない場合でも、その保存状況を説明します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
令和2年12月問42第2肢に関係する基本知識です。
例題6
既存建物の建築確認済証が保存されていない場合、35条の重要事項説明をすることができない。
解答・判断ポイント
正解:×
保存されていないこと自体を保存状況として説明できます。書類がないことと説明できないことを混同しています。
誤肢分析
誤っている語句
「説明をすることができない」
正しい修正
「保存されていない旨を説明する」
存在義務と説明義務を混同した誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
既存建物では、書類の「内容」と「保存状況」の入れ替えが狙われます。書類がない場合に説明義務がなくなるのではなく、「保存されていない」という事実を説明します。問題文で「保存されている場合に限り説明」と限定されていないか確認してください。
また、既存建物に関する35条では、建物状況調査や書類保存など似た言葉が複数登場します。何について「有無」を説明するのか、何について「結果の概要」を説明するのかを分ける必要があります。👉 資料があるかではなく、何を説明する規定かを確認してください。
区分所有建物|売買と貸借で追加事項が違う
区分所有建物では、通常の建物に加えて管理・規約・修繕に関する追加の重要事項があります。マンションでは専有部分だけでなく、共用部分や管理組合のルールが取引判断へ影響するからです。この章では令和2年12月問42第3肢を中心に整理します。
指定過去問では、維持修繕の実施状況が記録されている場合、その内容を説明することが問われました。この事項は区分所有建物の売買で重要事項となります。一方、区分所有建物の貸借では売買と同じすべての事項が説明対象になるわけではありません。
本試験では、マンションに関する事項だから売買・貸借の両方に必要と考えないでください。修繕積立金や通常の管理費、専用使用権などは、所有者としての負担や権利に関係するため売買中心の事項があります。賃借人に関係する規約や管理委託先とは区別します。
主な区分所有建物の追加事項を比較します。表を見る目的は、売買と貸借の差を確認することです。すべてを暗記するより、所有者向けの事項か利用者向けの事項かを考えてください。
| 説明事項 | 売買 | 貸借 |
| 専有部分の用途制限 | 必要 | 必要 |
| 管理委託先 | 必要 | 必要 |
| 修繕積立金 | 必要 | 原則不要 |
| 通常の管理費 | 必要 | 原則不要 |
| 維持修繕の実施記録 | 必要 | 原則不要 |
| 専用使用権 | 必要 | 原則不要 |
この表では、賃借人の利用に直接関係する規約や管理体制と、所有者の負担に関係する事項を分けると整理しやすくなります。修繕積立金や所有者負担は、賃借人より購入者の契約判断に強く関係します。所有か利用かという視点を使ってください。
例題7
区分所有建物の売買では、維持修繕の実施状況が記録されている場合、その内容が重要事項となる。
解答・判断ポイント
正解:○
維持修繕の実施状況は区分所有建物の売買で確認する追加事項です。記録がある場合にその内容を説明します。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
令和2年12月問42第3肢に対応する知識です。
例題8
区分所有建物の貸借でも、修繕積立金の額や滞納額を必ず重要事項として説明する。
解答・判断ポイント
正解:×
修繕積立金は所有者側の負担に関係するため、売買と貸借を同じにしません。契約類型を確認する必要があります。
誤肢分析
誤っている語句
「貸借でも」「必ず」
正しい修正
「区分所有建物の売買で確認する」
売買の追加事項を貸借へ移した誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
区分所有建物では、売買用の追加事項を貸借へ移す誤肢が頻出します。マンションに関する情報だから借主にもすべて必要と思いやすいですが、所有者の負担や権利に関する事項は売買中心です。誰の契約判断に必要な情報なのかを考えてください。
また、「記録されているとき」「規約があるとき」など条件付きの説明事項も狙われます。記録がない場合に架空の内容を説明するわけではなく、規定された条件を満たす場合に説明します。👉 区分所有→売買か貸借か→所有者向けか利用者向けか→条件の有無で処理してください。
建物貸借|設備の整備状況は重要事項
建物の貸借では、台所・浴室・便所など設備の整備状況が重要事項となります。借主にとって日常的に利用する設備の状態は、賃貸借契約を結ぶかどうかの判断に直接影響するからです。この章では令和2年12月問42第4肢を中心に整理します。
建物貸借では、売買と異なる追加事項が複数あります。契約期間や更新、用途制限、敷金等の精算、管理委託先なども貸借特有の判断事項です。建物売買の説明事項だけを覚えていると、賃貸借問題へ対応できません。
指定過去問では、「台所、浴室、便所その他の設備の整備状況」が説明事項とされています。この内容は建物貸借で必要な説明事項なので、第4肢は正しいと判断します。設備名を細かく覚えるより「賃借人が日常利用する設備」と整理してください。
貸借特有の主な説明事項を比較します。表を見る目的は、建物貸借で特に確認する事項をまとめることです。宅地貸借との違いにも注意してください。
| 貸借の説明事項 | 宅地 | 建物 |
| 契約期間・更新 | 必要 | 必要 |
| 用途・利用制限 | 必要 | 必要 |
| 敷金等の精算 | 必要 | 必要 |
| 管理委託先 | 必要 | 必要 |
| 台所・浴室・便所等 | ― | 必要 |
| 建物取壊しに関する事項 | 必要な場合あり | ― |
この表では、土地だけの貸借では建物設備という概念がないことを確認します。建物貸借特有の設備状況は、物件の使用可能性を判断する情報です。宅地貸借と建物貸借も一括して覚えないでください。
例題9
建物の貸借では、台所・浴室・便所などの設備の整備状況を重要事項として説明する。
解答・判断ポイント
正解:○
建物を利用する借主にとって設備状況は重要な判断材料です。令和2年12月問42第4肢の中心知識です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
建物貸借特有の説明事項です。
例題10
建物貸借では、契約期間や設備状況について35条で説明する必要はない。
解答・判断ポイント
正解:×
契約期間や設備状況は建物貸借で重要事項となります。貸借だから説明内容が少ないと一括判断してはいけません。
誤肢分析
誤っている語句
「説明する必要はない」
正しい修正
「重要事項として説明する」
貸借特有事項を削除した誤肢です。
宅建試験ではここが狙われやすい
貸借では、売買で説明しない事項が貸借で追加されるケースが狙われます。35条を売買中心に勉強していると、契約期間・更新・設備状況などの貸借特有事項を落としやすくなります。貸借問題では「借りた後にどのように使うか」という情報へ視点を切り替えてください。
一方、売買で必要な所有者向け情報を貸借へそのまま移す誤肢もあります。所有権に関する負担と、実際の利用条件を区別することが必要です。👉 貸借=利用条件を重視、売買=所有に関する情報も重視という比較が判断を助けます。
35条の説明事項|売買と貸借を比較
35条の説明内容は、共通事項・売買特有事項・貸借特有事項に分けて整理すると判断しやすくなります。全部を一列に暗記すると、対象となる契約類型を入れ替えられたときに対応できないからです。この章では指定過去問で使える範囲に絞って比較します。
売買では、購入後に所有者として負担する権利・規制・修繕などの情報が重視されます。貸借では、契約期間、更新、設備、用途制限、敷金精算など実際に利用するための条件が追加されます。区分所有建物では、この違いがさらに明確になります。
35条を覚えるときは「事項名→対象契約」の順番ではなく、「契約類型→必要事項」の方向でも確認してください。問題文では最初に売買や貸借が示され、その後に説明事項が正しいかを問われることが多いからです。入口を契約類型にすると処理が速くなります。
比較表で全体像を整理します。表を見る目的は、指定過去問で出た四肢を一つの判断軸で処理することです。細かな事項をすべて網羅する表ではありません。
| 論点 | 売買 | 貸借 | 試験での判断 |
| 法令制限 | 原則必要 | 一部例外 | 建物貸借注意 |
| 既存建物書類 | 建物売買で確認 | 同一ではない | 保存状況 |
| 区分所有修繕 | 売買で確認 | 原則不要 | 所有者向け |
| 設備整備状況 | 貸借とは別 | 建物貸借で必要 | 利用者向け |
| 契約期間・更新 | 中心論点でない | 必要 | 貸借特有 |
この表では、売買と貸借の違いを「所有」と「利用」で整理すると判断しやすくなります。所有者として長期的に影響する修繕・規約・権利は売買で重視され、日常利用や契約期間は貸借で重視されます。完全な暗記ができないときの判断補助として使ってください。
例題11
区分所有建物の修繕積立金と、建物貸借の台所等の設備状況は、どちらも同じ契約類型で説明する事項である。
解答・判断ポイント
正解:×
修繕積立金は所有者側の売買で問題となり、設備状況は建物貸借で問題となります。対象契約が異なります。
誤肢分析
誤っている語句
「同じ契約類型」
正しい修正
「売買と貸借で対象が異なる」
説明事項だけを並べて対象を消した誤肢です。
例題12
35条の説明事項を判断するときは、事項名を見る前に売買・貸借のどちらかを確認するとよい。
解答・判断ポイント
正解:○
対象となる契約によって説明義務の有無が変わります。契約類型を最初に確認する方法が有効です。
誤肢分析
誤っている語句
なし
正しい修正
なし
本試験での判断順序を確認する問題です。
宅建試験ではここが狙われやすい
比較問題では、正しい説明事項を別の契約類型へ移す方法が最も作りやすい誤肢です。説明事項そのものは実在するため、「聞いたことがある」という理由だけで○を付けると誤ります。必ず「何の契約で必要か」をセットで確認してください。
さらに、「記録されているとき」「保存の状況」「規約があるとき」のような条件も入れ替えられます。説明事項の名称が正しくても、条件を「必ず」に変えれば誤肢になる場合があります。👉 契約類型と条件語句の二重チェックを行ってください。
過去問分析
この過去問では、35条の説明内容について法令制限、既存建物、区分所有建物、建物貸借を横断して判断します。四肢とも実際に35条で使われる事項なので、説明事項の名称だけでは正解できません。この章では、指定された令和2年12月問42だけを分析します。
資料では、第1肢が誤りで、第2肢・第3肢・第4肢が正しい内容とされています。第1肢では建物貸借における法令制限の例外、第2肢では書類の保存状況、第3肢では区分所有建物の維持修繕、第4肢では設備状況が判断ポイントです。したがって正解は1です。
本問は、35条の説明事項を丸暗記しているだけでは対応しにくい構成です。各肢で「何の取引か」「何の建物か」「条件付きの事項か」を確認すると正誤が見えてきます。説明事項と対象範囲をセットで判断してください。
最初に確認する語句
問題文では、建物貸借、法令に基づく制限、既存建物、書類の保存状況、区分所有建物、維持修繕、設備の整備状況を最初に確認します。
令和2年(2020年)12月 問42
宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、説明の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。
- 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第12条第1項により指定された歴史的風致形成建造物である建物の売買の媒介を行う場合、その増築をするときは市町村長への届出が必要である旨を説明しなくてもよい。
- 既存の建物の売買の媒介を行う場合、当該建物の建築確認済証がなくなっているときは、その旨を説明すればよい。
- 区分所有建物の売買の媒介を行う場合、一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容を説明しなければならない。
- 建物の貸借の媒介を行う場合、台所、浴室、便所その他の当該建物の設備の整備の状況について、説明しなければならない。
正解:1
解説
本問は35条の説明内容について誤っているものを選ぶ問題です。第1肢が誤りで、第2肢・第3肢・第4肢は正しい内容となります。契約類型と説明事項の対応を確認すれば判断できます。
各肢の正誤理由
◆1(誤り)
歴史的風致形成建造物の増築等に関する届出制限は法令上の制限です。ただし資料では、建物貸借についてはこの制限を重要事項として説明する必要はないと整理されています。
◆2(正しい)
既存建物の売買では、一定の設計図書などについて保存の状況を説明します。建築確認済証がない場合でも、保存状況が「無」であることを説明すればよいと整理されています。
◆3(正しい)
区分所有建物の売買では、維持修繕の実施状況が記録されている場合、その内容が重要事項となります。記録がある場合という条件まで確認します。
◆4(正しい)
建物の貸借では、台所・浴室・便所など設備の整備状況が重要事項です。借主が物件を使用するための情報として説明します。
問題作成者のひっかけポイント
第1肢では、「法令に基づく制限は重要事項」という正しい知識を利用しています。歴史的風致形成建造物に関する届出規制も実在するため、制限の存在だけを確認すると○に見えます。誤りは建物貸借まで説明対象に広げている部分です。
第2肢では、「書類がない」という事実から説明できないと思わせる可能性があります。しかし35条で問われるのは保存の状況なので、書類がないという状態も説明できます。内容と保存状況の違いがポイントです。
第3肢では「記録されているとき」という条件、第4肢では建物貸借という契約類型が決め手です。いずれも説明事項名だけを暗記するのでは足りません。本問全体を通じて対象と条件を読む力が試されています。
受験生が迷う理由
35条には非常に多くの説明事項があるため、事項名だけを覚えてしまいがちです。その結果、「法令制限は説明」「修繕は説明」「設備は説明」という断片知識になり、売買と貸借を区別できなくなります。対象契約まで一緒に整理する必要があります。
特に区分所有建物は、通常の建物に追加事項が多数あるため混乱しやすくなります。売買だけに必要な事項と貸借でも必要な事項が混在するからです。所有者向け情報か、利用者向け情報かという視点を使ってください。
既存建物についても、「保存されていない=不備」と考えやすい点が迷う理由です。35条の問題では不備そのものを評価するのではなく、相手方へ何を説明する義務があるかを確認します。制度目的へ戻ると判断できます。
正しい判断手順
第1肢では、①建物貸借、②法令上の制限、③増築等の届出規制という順番で確認します。建物借主がこの行為を行う権限を持たないため、資料の整理では説明不要となります。したがって第1肢は×です。
第2肢では「既存建物」「書類の保存状況」を確認し、書類がなくても保存状況を説明できるため○です。第3肢では「区分所有建物の売買」「維持修繕の記録」を確認し、記録がある場合に内容を説明するので○となります。条件語句を削らずに読みます。
第4肢では「建物貸借」「設備の整備状況」という組合せを確認します。これは貸借特有の重要事項なので○です。最後に1×・2○・3○・4○として正解1を確定します。
類似問題で使える知識
法令制限が出た場合は、まず売買・貸借を確認します。特に建物貸借では、借主がその規制される行為を行える立場なのかを見る方法が有効です。難しい法令名でも判断できる場合があります。
既存建物では、「結果の概要」「実施の有無」「書類の保存状況」を区別します。区分所有建物では、売買と貸借で追加説明事項が異なることを確認します。似た言葉でも説明対象が違います。
貸借では、契約期間、更新、用途制限、敷金等の精算、管理委託、設備状況など利用条件を確認します。売買中心の知識だけで処理しないことが必要です。同じ判断方法を35条の他の説明内容問題にも使えます。
宅建試験ではここが狙われやすい
令和2年12月問42では、正しい説明事項の対象範囲を変更する方法が中心です。第1肢では実在する法令制限を建物貸借へ広げて誤肢にし、第2肢では書類がない場合でも保存状況を説明できるかを確認しています。知識の有無より適用対象を正確に読む問題です。
👉 復習では、1=建物貸借では法令制限の例外、2=書類は保存状況、3=区分所有売買の修繕記録、4=建物貸借の設備と圧縮してください。説明事項を覚えるときは、事項名の横に「売買」「貸借」「建物」「区分所有」と対象を書き添える方法が有効です。対象者・契約類型の入れ替えに対応できます。
一問一答|過去問の肢レベルで確認
ここでは、35条の説明内容を本試験レベルの肢で確認します。売買・貸借、既存建物、区分所有建物、法令制限を組み合わせています。正誤だけでなく、誤っている語句を修正できるかまで確認してください。
問題1
35条の説明事項は、売買と貸借で常に同じである。
正解:×
契約類型によって説明事項は異なります。
誤っている語句
「常に同じ」
正しい修正
「売買・貸借によって異なる事項がある」
問題2
法令に基づく制限は、契約類型に関係なくすべての建物貸借で必ず説明する。
正解:×
建物貸借では説明不要となる制限があります。
誤っている語句
「すべて」「必ず」
正しい修正
「規制内容と契約類型を確認する」
問題3
建物借主が行う権限を持たない増築等に関する法令制限は、建物貸借で説明不要となる場合がある。
正解:○
借主が規制対象行為を行う立場かを確認します。
問題4
既存建物の一定の書類が保存されていない場合は、その保存状況を説明すればよい。
正解:○
存在しない場合も保存状況として説明します。
問題5
既存建物の建築確認済証がない場合は、重要事項説明を行うことができない。
正解:×
書類がない旨を保存状況として説明できます。
誤っている語句
「説明を行うことができない」
正しい修正
「保存されていない旨を説明する」
問題6
区分所有建物の売買では、維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容を説明する。
正解:○
修繕記録の内容は売買で確認する追加事項です。
問題7
区分所有建物の貸借でも、維持修繕の実施記録を売買と同じように必ず説明する。
正解:×
売買と貸借では追加事項が異なります。
誤っている語句
「貸借でも」「必ず」
正しい修正
「区分所有建物の売買で確認する」
問題8
建物貸借では、台所・浴室・便所など設備の整備状況を重要事項として説明する。
正解:○
建物を利用する借主の契約判断に関係します。
問題9
宅地貸借でも、台所や浴室など建物設備の整備状況を必ず説明する。
正解:×
建物設備の整備状況は建物貸借の事項です。
誤っている語句
「宅地貸借でも」
正しい修正
「建物貸借では」
問題10
区分所有建物の管理委託先は、売買だけでなく貸借でも確認する事項となる。
正解:○
管理を誰が行うかは利用者にも関係するため確認します。
問題11
区分所有建物に関する重要事項は、所有者向けの情報か利用者向けの情報かを考えると整理しやすい。
正解:○
売買・貸借の対象範囲を判断する補助になります。
問題12
35条の説明内容を判断するときは、最初に説明事項名を見て、その後に売買か貸借かを確認すればよい。
正解:×
本試験では契約類型を先に確認する方が安全です。
誤っている語句
「説明事項名を見て、その後に」
正しい修正
「売買・貸借を確認してから説明事項を当てはめる」
一問一答では、35条の説明事項を「知っているか」だけで判断しないでください。問題文に登場する事項が実在していても、対象契約が違えば誤りになります。契約類型と条件まで確認してください。
宅建試験ではここが狙われやすい
一問一答では、売買→貸借、建物→宅地、所有者→利用者という対象の入れ替えが中心になります。説明事項の名称そのものを変更しなくても、適用対象を一語変えるだけで誤肢を作れるからです。「その事項を聞いたことがある」という感覚だけで○を付けないでください。
また、「記録されているとき」を「必ず」、「保存の状況」を「書類の内容」へ変更する方法にも注意します。👉 対象・条件・説明する内容の三点を最後に確認してください。この三点が一致して初めて正しい35条の文章になります。
FAQ
35条の説明内容では、「法律で規制されているならすべて説明するのか」「書類がなければどうするのか」という境界で迷いやすくなります。FAQでは単純な定義ではなく、実際の選択肢で判断が止まりやすい場面を整理します。迷った場合は売買・貸借の区別へ戻ってください。
また、区分所有建物や既存住宅では条件付きの説明事項が多くなります。「記録があるとき」「書類の保存状況」など、説明事項が発生する前提まで読む必要があります。語句の一部分だけを切り取って判断しないことが重要です。
Q1.法令上の制限なら必ず35条で説明しますか?
必ずとは判断しません。特に建物貸借では、借主が規制対象行為を行えないため説明不要となる制限があります。
Q2.法令名を知らない場合はどう判断しますか?
その規制が誰のどの行為を制限しているかを確認します。建物所有者が行う増改築だけの規制なら、建物借主との関係を考えてください。
Q3.既存住宅の書類がなくても売買できますか?
この35条問題では、書類がないこと自体より保存の状況を説明する点を確認します。「保存なし」という情報も説明対象になります。
Q4.区分所有建物の事項は全部、貸借でも説明しますか?
全部ではありません。所有者の負担や権利に関する事項と、借主の利用に関係する事項を分けてください。
Q5.修繕積立金は借主にも必ず説明しますか?
売買と貸借を同じにしないことが必要です。修繕積立金は所有者側の負担として売買で確認する事項です。
Q6.設備状況は建物売買でも貸借でも同じ扱いですか?
指定過去問で問われた台所・浴室・便所などの設備整備状況は、建物貸借の追加事項として整理します。契約類型を確認してください。
Q7.説明事項を全部暗記しないと35条問題は解けませんか?
対象契約を見ることで絞れる問題があります。売買か貸借か、所有者向けか利用者向けかを考えると誤肢を切りやすくなります。
Q8.35条の説明内容で最初に見る場所はどこですか?
問題文の契約類型です。宅地・建物、売買・貸借、区分所有かどうかを確認してから説明事項へ進んでください。
FAQで共通するポイントは、35条の説明事項を単独で暗記しないことです。必ず「何の物件」「何の契約」「どの条件」という情報と結び付けます。この判断順序を固定すると細かな説明事項でも対応しやすくなります。
宅建試験ではここが狙われやすい
境界問題では、「すべて」「必ず」「一切不要」など強い限定表現に注意してください。35条は取引類型ごとに説明事項が細かく異なるため、一律に扱う文章は誤肢になりやすくなります。例外や条件付き規定がないかを確認します。
35条の説明内容は量が多いため、出題者は細かな条文暗記だけでなく分類力を狙えます。👉 契約類型→物件種類→説明事項→条件という順番を固定すると、知らない選択肢でも消去できる場合があります。全文暗記より問題文の見る場所を決めてください。
まとめ
35条の説明内容では、最初に宅地か建物か、売買か貸借かを確認します。その後に、法令制限・既存建物・区分所有建物・貸借特有事項のどれかへ分類してください。令和2年12月問42は1×・2○・3○・4○で正解1です。
👉 本試験では、契約類型→説明事項→対象範囲→条件の順番で処理します。法令制限は建物貸借の例外、既存建物は書類の保存状況、区分所有売買は修繕記録、建物貸借は設備状況という違いを押さえてください。説明事項の名称だけでなく、「誰にどの取引で説明するか」を見ることが得点につながります。
